27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】『アメリカの高校生が学ぶ経済学』を読んで

アメリカの高校生が学ぶ経済学

アメリカの高校生が学ぶ経済学

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は『アメリカの高校生が学ぶ経済学』を読んだ感想をまとめます。

「アメリカの高校生が学んでいる~」シリーズとは別の本になりますが、経済学に対する全般の知識を知ることはもちろん、要所要所に挟み込まれる経済学者の豆知識が知的好奇心をくすぐる良書でした。

ぜひご覧ください!

 目次:

本の概要 

本書はアメリカの高校生が使っている経済学のテキストをもとに作成されています。原書は600ページもあるため、アメリカ固有の制度などに関する記述は省き、330ページほどにまとめました。内容は下記5部立てになっています。

  1. 経済の基本概念(経済学とはなにか・企業組織)
  2. ミクロ経済学(需要・供給・価格と意思決定・市場構造)
  3. マクロ経済学:制度(政府歳入源・政府歳出・貨幣と銀行・金融市場)
  4. マクロ経済学:政策(経済的パフォーマンス・経済的不安定性・経済的安定の達成)
  5. 国際経済学(国際貿易・世界経済の挑戦)

少し読みづらい内容もありますが、具体的な事例を挙げて丁寧に解説されています。またアダムスミスの解説やマルサスの人口論についてのコラムもあり、要所要所で豆知識を知ることができました。

次章以降で私が特に参考になった内容をまとめます。

景気循環の要因

現代にいたるまで、経済は好景気と不景気を繰り返しながら発展してきました。その景気の一連の波のことを景気循環といいます。景気循環に影響を与える要素は下記5つです。

  1. 資本的支出
  2. 在庫調整
  3. 技術革新と模倣
  4. 通貨要因
  5. 外部ショック

資本的支出とは、生産設備などの資本財へ投資することです。好況の場合、売上増加に対応するため、生産設備への投資が活発になります。しかし経済の拡大が一服すると、生産設備への投資がなくなり、生産設備を製造販売する会社の売上が減少し、そこから不況が派生していきます。

在庫調整とは、好況になるタイミングで在庫を積み増し、在庫がだぶついたところで不況になるということです。経済の拡大のタイミングでは、販売機会の損失を避けるため、多くの在庫を積み増すことになります。一方で経済の拡大が落ち着くと在庫が滞留することになり、企業の生産も落とすことになります。その結果不況につながります。

技術革新と模倣とは、新しい技術によって新たな投資ニーズが高まることで好況になることです。現在の5G投資はこれに当たると思われます。優位性に直結する新しい技術がでることで、経済の拡大につながります。そして他者はその技術革新を模倣すべく投資を行います。その結果、経済が好況になります。

通貨要因とは、中央銀行などの金融緩和策のことです。低金利にして、お金を使う機会を増やすことによって経済活動が刺激され、好況につながります。しかし、ローンなどの需要が増えるとその分金利の上昇を招くため、経済活動は低下します。

外部ショックとは、オイルショックや戦争、パンデミックの流行などによる外的要因です。外部ショックの内容により、経済活動を低下させるものもあれば、経済活動を刺激することもあり得ます。

価値とお金

昔の経済学においては、「価値の逆説」という問題がありました。その内容は、必要性と価値の間の矛盾のことを指しています。例えば水は必要性が高いにもかかわらず、貨幣価値をあまり持ちません。一方でダイヤモンドは必需品ではありませんが、貨幣価値は高くなっています。

その逆説を説明するための切り口が希少性と効用でした。価値を持つためには希少性が必要です。水においては希少性が低いため、貨幣価値も低くなっていました。しかし、ダイヤモンドは希少性のみでは貨幣価値が高い理由を十分に説明できません。そこで、効用=有用な満足感を提供する作用があるかどうかが大切であると定義することができました。ダイヤモンドは希少性が高くかつ効用をもっているため、貨幣価値が高くなります。

つづいて貨幣の特徴についてまとめます。貨幣についても効用があるため、世間一般に広く普及するようになりました。その貨幣の特徴は下記4点です。

  1. 携帯性
  2. 耐久性
  3. 可分性
  4. 利用可能性の制限

携帯性については、貨幣は商品との交換を用意にする手段です。そのため、持ち運びしやすいことが大切でした。耐久性についても同様の考えです。価値の貯蔵のため、貨幣が腐ってなくなるようなことはあってはなりません。可分性については、取引に必要な分だけを利用できる性質のことです。可分性があるからこそ、どんな時も等価で取引ができます。利用可能性の制限については、供給が限られていなければならないということです。現在お金の発券は各国の中央銀行に制限されています。そうでなければ貨幣としての価値が下がってしまうためです。

感想

高校生のタイミングで経済学の知識を身に着けることは教育にとっても有用だと思いました。そうすることによって、大学生活をただのモラトリアムとして過ごすのではなく、資本主義社会に生きる準備期間として有意義に過ごせる確率があがるのではないかと感じました。

また株式投資を行っている身としては、景気循環の傾向について理解することができて良かったです。どの会社を買うかも大切ですが、どのタイミングで買うかも重要です。その判断の参考として世の中の資本的支出・在庫状況・技術革新・金融緩和の状況を常に意識しておきます。

お金の価値についての内容では、仮想通貨が各国の通貨に変わるかどうかを検討するいい判断基準だと思いました。携帯性と可分性は問題ないと思います。しかし耐久性については、安全性とも読み替えることができると考え、ハッキングで無くなることなどを加味すると課題はあります。また利用可能性の制限についても、ビットコイン自体は発行数の上限があります。しかし、ほかの仮想通貨が好き勝手乱立する状況では、利用可能性の制限についても、疑問があります。

兎にも角にも、現在の経済活動を見直す機会を得ることができたよい本でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。