今回はマンガでわかる文楽編集部・編『マンガでわかる文楽』の感想をまとめます。
■要旨:
人形浄瑠璃として知られている文楽。その歴史は江戸時代にできたとされ、歌舞伎をもしのぐ大衆娯楽となっていた。「曽根崎心中」や「仮名手本忠臣蔵」などの有名作品のあらすじや登場してくるキャラの立った人形など、見所をわかりやすく解説する。また太夫、三味線、人形遣いの若手の方々にインタビューをし、その仕事のやりがいや難しさをまとめている。文楽への第一歩として非常にわかりやすい良書。
■感想:
日経ビジネスでおすすめの一冊として紹介されていたため、図書館で借りて読んだ本でした。しかし読んでみると、いままで日本史の授業でしか聞いたことのない文楽(人形浄瑠璃)がどのように文化として根付いたか、そして江戸の人々、ひいては人間の興味がどういうものにあるのかを考えさせてくれるきっかけになりました。
まず、文楽の成り立ちについてです。もともと琵琶法師などが音楽にのせながら物語を聞かせるものを「浄瑠璃」と呼んでいました。その浄瑠璃に独特の節をつけながら語り、ヒットしたのが江戸時代の大阪で活躍していた竹本義太夫の「義太夫節」でした。その義太夫節と当時からはやっていた人形劇を合わせたものが文楽(人形浄瑠璃)でした。
今まで耳で楽しむしかなかった浄瑠璃を、目でも楽しめるようにした文楽は江戸時代に大ヒットしました。楽しめる感覚を増やすという考えで非常に画期的だったと思います。その後は映画やテレビなどの娯楽にその座を奪われてしまいますが、浄瑠璃と人形を掛け合わせる発想は素晴らしいなと感心しました。
また、文楽で取り扱われる内容は大きく分けて3つです。①江戸時代より前の武家社会の物語の「時代物」②江戸時代のホットなニュースを物語にする「世話物」③音楽と舞踊的な要素が大きい「景事」です。時代物は今でも時代小説などで胸を打たれるような忠臣蔵の話や源義経の話です。世話物は曽根崎心中などの色恋沙汰が多いです。
いつの時代も恋愛ドラマは需要があることをここでも感じました。また定番の設定として、男が妻ではなく遊女に入れ込み、その遊女と心中するというストーリーです。どちらかというと妻もしくは遊女に感情移入し、悲痛な恋愛に思いをはせるような楽しみ方なのかなと思いました。現代ではあまり心中した事件などは聞きませんが、昔は一種の自己表現として心中をする文化だったのか興味がわきました。(作家の太宰治も女性と心中未遂をしています)
いつの世も人の色恋沙汰は好きだということ、そして心中にまつわる本を今度読んでみたいという気付きをもらえた、面白い本でした。
マンガでわかる文楽 あらすじから見どころ、歌舞伎との違いまで全部わかる [ マンガでわかる文楽編集部 ]
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