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今回は2020年8月31日発行分の日経ビジネス『大廃業加速』を読んだ感想をまとめます。
Withコロナの中で、運転資金が枯渇し廃業する企業が増えてきました。安倍首相が打ち出した「開業率>廃業率」という文言も、コロナ禍で取り外されています。
大廃業による影響はどんなものがあるのか、その実態をまとめます。
ぜひご覧ください!
目次:
PART1:廃業の現状
コロナ禍において、休廃業および解散が2割増えています。
早稲田大学の齋藤有希子淳教授らの調査によると、倒産・被合併・休廃業・解散の企業数推移を調査し、その結果前年比で全体数が2割増加しています。その内訳では倒産が8%減少、被合併が6%減少したことに対し、休廃業・解散が23%増になっていました。倒産が減少している理由は、緊急事態宣言による倒産手続きの裁判の遅れや、政府のコロナ対策のための救済措置による延命ができた企業がいることと想定されます。休廃業・解散が多い理由は、中小企業の中には経営者が高齢かつ後継者のめどがない企業が、コロナによって休廃業の時期を前倒しにしたことが考えられます。
コロナの影響は40~60年の企業のみではなく、80年以上の老舗と呼ばれる企業でも休廃業の性向が出ています。また観光などのわかりやすい企業ではなく、製造業においても影響が大きいとの回答が目立ちます。町工場の経営者からは、発注元の企業が生産調整に入り、その影響を小さい企業ほど大きくこうむっている状況です。
またコロナ禍で会社の業績にマイナスであると答えた職種では建設が多く見受けられました。それは「一人親方」と呼ばれる人たちへの影響が大きいからと考えられます。まだまだコロナがいつ落ち着くかはわからない中、休廃業する中小企業は依然として多く見受けられるでしょう。
また地域別の影響を見てみましょう。
コロナ禍において、中小企業が打撃を受けるということは、その地域の経済に打撃がくることにつながります。休廃業・解散の確率が高い企業を日本地図にマッピングすると、1位秋田、2位青森の東北勢と、北陸の福井、富山も上位に来ます。全体の傾向として地方のほうが休廃業になる確率の高い企業が多く、それは地方の金融機関への打撃にもつながります。
PART2:廃業企業のケーススタディ
続いてコロナ禍で廃業を選択した企業の実例を見てみましょう。
CASE1:コロナで観光破壊(阿波踊り)
徳島県徳島市の8月。例年なら阿波踊りで盛り上がっているはずでしたが、コロナにおいて中止となりました。その影響は地域経済にとって非常に大きいものでした。
阿波おどりの中止によって、3割が廃業の可能性があると回答しています。また観光客もコロナが広がってからの2月以降に急激に低下しています。インバウンド需要で支えられていた観光業は、その需要がほぼ全滅となります。さらにホテルなどの不動産や、スタッフなどの固定費がのしかかり、廃業に向かわざるを得ない経営者が多くいます。
ホテルサンシャイン徳島の梯(かけはし)総支配人はGoToキャンペーンなどにより、8月末ごろからは需要が回復する見通しを当初持っていました。しかしながら現時点でコロナが終息するめどはたっていません。20年3月から12月までの運転資金を銀行から融資してもらっています。しかし、12月以降も借り入れを行ってしまうと、資産売却などでも賄いきれない借金になると話します。そのため12月までには廃業か存続かの決断を迫られます。
CASE2:老舗の事業転換及ばず
山形市の食品会社「丸八やたら漬」は、5月末に創業135年の歴史に幕を閉じました。
明治18年に創業し、漬物を手掛けてきた同社は、山形市の中心に向上と店舗があり、長く街のシンボルとなっていました。漬物需要が減少する中でも、飲食事業を立ち上げ、観光客を呼び込み、事業の柱を作っていきました。
事業自体は本店・工場の土地を担保にしたバブル期の借入金が重くのしかかっていましたが、なんとか資金繰りを行ってきました。そのなかでコロナエフェクトを受けることになりました。2月に観光客250人がキャンセルの連絡があり、「ただごとではない」と感じた新開社長は土地の売却など、廃業にむけての準備を行いました。
同社のようにコロナが最後のひと押しになった老舗企業も少なくはないでしょう。
CASE3:老いた「一人親方」
上記グラフはコロナの影響を踏まえた20年と21年の新築着工数の予測です。これによると2年間で20万戸の需要が失われると予測されています。
「町場」と呼ばれる戸建て住宅を施工する組織は、主に一人親方の大工が現場を支えています。一人親方は個人事業主であるため、仕事がなくなっても失業保険が適用されません。仕事がなくなったことと高齢を理由に一人親方の廃業が進む可能性が高いです。
腕のいい大工さんは、木材の寸法に合わせて印をつける「墨付け」、その部分を加工する「刻み」などの下準備に付加価値がありました。しかし東日本大震災のあと、住宅の主流として省エネとなる「高気密・高断熱」の家が出てきました。高気密高断熱の家では、家の木材が過乾燥になり、ひびわれを起こすリスクがあるため、従来の木材を使用することが避けられるようになりました。そして人工乾燥した固い木材が使われるようになり、大工の下準備の工程がなくなったことで、大工さんの身入りも減少しました。
保険がきかない&収入も昔ほど見込めないといった状況にプラスして、コロナによる新設住宅着工件数減少。これらが一人親方の廃業を生み出しています。
CASE4:後継者が早期断念
後継者が見つからなくて廃業するケース以外に、コロナ禍では後継者に変わった直後に廃業を決める企業も出てきました。
札幌市にある札幌第一ホテルは68年の歴史に終止符を打ちました。取引先や従業員に迷惑をかけないうちにやめたほうがよいと判断した結果です。2007年に42歳で経営を引き継いだ米沢佳晃社長。先代のころからホテル需要だけではなく、レストランなどの飲食部門中心に変化しており、法事需要などをいち早く取り込んでいきました。2018年には売上高が過去最高の8億5000万円になりましたが、コロナによって売り上げは半減。再建プランを多数検討しましたが、結論として廃業することに決めました。
従業員や取引先に対しても、銀行から借り入れを行い、清算。借入金はホテルや土地などの売却金で返済予定です。
PART3:廃業以外の出口戦
コロナ禍でも廃業以外の選択肢を選んだ企業もあります。
兵庫県姫路市で鶴谷洋菓子店を営んでいた、鶴谷哲也さん。2016年に開業し、似顔絵やキャラクターをあしらった特注ケーキが話題を呼び、ECサイトで兵庫県人気ナンバーワンを獲得しました。しかしコロナによって順風満帆だった商売も逆転。月180万円かかる固定費を賄えなくなりました。
日本政策金融公庫や信用保証協会のコロナ融資にも駆け込みましたが、融資の日程が間に合いません。そんな中、アルバム大手メーカーのナカバヤシが支援をしてくれました。同社の新規事業部に配属する形で鶴谷さんを雇い、洋菓子店を再開することになりました。M&Aの変則型のような形ですが、これにより鶴谷さんの洋菓子店は存続することになりました。
上記は企業別の労働生産性です。これによると廃業する企業は存続企業に比べ、生産性が低いことが分かります。鶴谷さんのように救済される地力をもった企業はまれと言えます。
上記グラフは中小企業と大企業の生産性を表したグラフです。これによると製造業や不動産業などで2倍以上の差があることが分かります。
日本の従業者の約7割が中小企業で働いているだけに、雇用への影響も懸念されます。しかし、デービット・アトキンソン氏は「コロナ禍で倒産・廃業に追い込まれているのは日本の企業数の8割以上を占める小規模事業者がほとんどだ。小規模事業者の1社あたりの平均社員数は3.4人。規模の小さい会社が廃業したり倒産したりしても、雇用に与えるダメージは軽微だ」と述べます。規模が大きくなれば生産性を向上させるような設備投資も行うことができるため、大企業のほうが効率は高くなる傾向があります。そのため、中小企業は大企業に淘汰されていくべきであるというのが、彼の持論です。
中小企業は政府からの税制面などの手厚い保護がありました。その結果、過度な成長を阻害し、現状維持を志向する企業が増えてしまったのではないでしょうか。良い技術、ノウハウは残し、間違った経営は淘汰する。その姿勢が10年、20年後の企業の姿を形作る基礎となるでしょう。
感想
自分の身の回りでは廃業に迫られている人やコロナで職業のあおりを受けている人がいなかったため、視野の広がる内容でした。
コロナによる経済的インパクトが自分自身はリアルに感じられていないと思います。会社の稼働率も多少下がっていますが、リストラなどの大規模な人員整理などは聞いていません。
しかしながら、旅行関係やお客様との対面商売が主だった業界、そしてWithコロナに対応できる資金力がなかった中小企業は淘汰されているということが数値で分かりました。従業員の方の生活に責任を負っている経営者の方などは、運転資金繰りに頭を悩ませているのでしょう。
ただ、私としてはコロナという劇薬で、細かい企業が一つの大企業に吸収されていくことは望ましいことだと思います。人口が減る日本において、企業の数だけがどんどんと増えていくことは無駄が多いと感じます。なにか数字を調べて根拠があるわけではないので、多分に誤っているかもしれませんが、生活を行うという意味での仕事であれば大企業に統合したほうがセーフティネットとしての役割を担うことができるのではないでしょうか。
環境の変化点と捉え、一回廃業し、新しい形態の事業を行うほうが健康的かもしれません。もちろん人々の生活を担保することが最優先ではありますが、創業当時の野心や世の中への価値提供などが弱まっているのであれば、社会的責任という意味でも一つ勇気ある決断ができればと思いました。
そして自分自身に置き換えた時、私も生活のためだけに現状維持を選ぶのではなく、本当に必要なことなのか、自分のやりたいことや社会へ還元できる価値を届けられているのかを自問して決断したいと思います。
最後に:今週の本紹介
日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。
気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!
皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう。