27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『ワクチン最貧国』を読んで

日経ビジネス表紙「ワクチン最貧国」

2021/4/26発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2021年4月26日発行分の日経ビジネス『ワクチン最貧国』を読んだ感想をまとめます。

コロナによる死者数は低いものの、ほかの国よりもワクチンの普及が遅れている日本。ワクチン接種が遅れている原因やほかのコロナへの対応策の問題点等をまとめました。

ぜひご覧ください!

 

目次:

 

Prologue:日本のワクチン接種現状

国・地域別の人口100人あたり累計接種回数(4/19更新)

国・地域別の人口100人あたり累計接種回数(4/19更新)

2021年4月12日から始まった八王子市でのワクチン接種。接種を終えた人は安堵の声を上げていますが、まだまだ未接種の高齢者が多く、65歳以上の高齢者3600万人に対し、4月末までに自治体に届くのは140万人分と、必要量の4%弱にとどまります。

上記グラフの国・地域別の人口100人あたり累計摂取回数においても、日本は1.5回とほかの国より大きく後れを取っています。2月17日に始まった医療従事者への摂取も当初のスケジュール通りに進んでいません。

日本でワクチン接種が世界よりも遅れている理由は、ワクチン確保のスピード感の欠如でした。アメリカやインド、フランスと比べ累計死者数が少ないことで、グローバル製薬企業にアクセスするスピードが他国より遅れました。

また、ワクチン認証においても海外製ワクチンを日本で小規模な治験を行った後に認証するといった慎重な姿勢を政府は取っています。その間ほかの国では自国優先でワクチンの供給確保を図っており、その結果日本への供給枠についても後ろ倒しが行われました。

高齢者向けのワクチン供給のスケジュール

高齢者向けのワクチン供給のスケジュール

一方で国と自治体の情報伝達の非効率さによる現場の混乱も発生しています。国からのワクチン供給情報が細かく変更されており、その対応に各自治体は追われました。3月下旬予定だったワクチン接種は1月下旬に「4月1日以降」に延期表明がなされ、ワクチン供給量についても大規模供給か少量供給かで会場の確保などの対応を変更する必要がありました。

政府コロナ関連システム

政府コロナ関連システム

さらにワクチン接種における管理システムの統一化が図られていない現状も存在します。いままでは「予防接種台帳」を各自治体で管理していました。そして厚労省がワクチンの流通状況を確認できるシステム「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」を昨年から構築してきました。しかし、予防接種台帳だとデータの反映に2~3か月かかり、ワクチン接種円滑化システムだと誰にいつ打ったかが管理できないという問題があり、内閣官房が1月から構築した「ワクチン接種記録システム(VRS)」が登場します。しかしシステムの数か月で現場にフィットしたシステムを立ち上げることは困難であり、対応の後手後手感もぬぐえません。

次章以降で現状の課題を詳しく見ていきましょう。

Part1:ワクチン接種遅延の原因

コロナウイルスワクチンを開発中の日本の主な製薬会社

コロナウイルスワクチンを開発中の日本の主な製薬会社


ワクチン接種遅延の問題は、ワクチン供給量の確保での出遅れです。各国ワクチンの確保に躍起になっており、グローバル製薬企業も母国優先で供給枠を確保していると指摘されています。現在のワクチン供給は超売り手市場となっており、日本はそのグローバル製薬企業に供給枠の確保をお願いするしかありません。

そしてその現状を引き起こしている原因が国内製ワクチンがないという現実です。実際に日本の製薬メーカーでは現在先行する米欧中ロメーカーに追い付こうと開発を進めています。しかし、現状ではまだ治験の初期・中期の段階です。そのうちに変異株が生まれた場合、一から開発を行うことになり、さらにコロナ影響は長引きます。加えて日本独自の変異株が発生した場合、他国の企業がワクチン開発を行ってくれる保証はなく、国民の安全保障の面でも自国でのワクチン開発は重要になります。

ではなぜ日本のワクチン開発は後塵を拝しているのでしょうか。それは国家のワクチンに対する姿勢に現れます。

中国やアメリカは国家プロジェクトとしてワクチン開発への予算を恒常的に確保してきました。それはワクチンは安全保障の柱であるという考えから来ています。海外派兵時などに感染症に備えるため、ワクチンは重要な戦略物資になっています。官民一体となって継続的に開発を行う基盤ができていたため、有事の際のスピード感も日本よりも早くなっています。

日本国内ワクチン市場の推移

日本国内ワクチン市場の推移

また、日本では安全性におけるハードルが高く、ワクチンへの警戒心が強いという一面があります。MMRと呼ばれるワクチンで接種後に健康障害が起きて提訴される問題があり、1990年代前半に集団接種が中止されるという出来事がありました。

そのため、日本国内のワクチン市場の推移は伸び悩んでおり、各メーカーともワクチン市場への投資は慎重にならざるを得なくなりました。

Part2:コロナ対応で見えた日本のIT課題

新型コロナウイルス関連の主な情報システム

新型コロナウイルス関連の主な情報システム

コロナ対応の中で現状把握の効率をアップさせるため、数々のシステムが政府主導で立ち上がりました。しかし、新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」で不具合が発生しました。さらに問題だったことがその不具合が約3か月放置されていました。

ITツールをうまく活用できていない側面が目立つ日本。その原因を探っていきましょう。

まず1つ目が「多重請負構造」です。COCOAの開発は、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム「HER-SYS」の発注先であるパーソルプロセス&テクノロジーに委託されました。しかしパーソルはプロジェクト管理の一部を日本マイクロソフトに移管し、運用などをほかの2社に再委託しました。加えてそこから再々委託されてあ会社も2社ありました。それにより、計6社がかかわる多重請負構造が発生し、意思決定プロセスの非効率化が発生、今回のCOCOA不具合の対応のまずさにつながったと思われます。

2つ目が「民間任せの放任体制」です。発注者である厚労省が適切にチェックできておらず、結果として委託会社の怠慢への歯止めが効きませんでした。発注者側の厚労省にシステムに詳しい担当がいなかったことで、委託先の情報をうのみにする体制になっていました。

3つ目が「外部との連携不足」です。不具合については、外部のエンジニアから問題が指摘されていました。しかし、外部からの指摘に対する対応方法が事前に確率されていませんでした。その結果、問題への取り組みが遅れてしまったと厚労省は報告しています。

4つ目が「現場の理解がないシステム設計」です。感染者等情報把握・管理支援「HER-SYS」導入前は相談記録や行動記録は紙ベースで、記入も手作業でした。また保健所と医療機関の間のやりとりも紙ベースや電話ベース、さらに保健所間での情報共有もされておらず、別々の保健所から医療機関に同じ問い合わせが来ることもありました。

そのような非効率性を解消するためにHER-SYSを導入しましたが、うまくいかない面もありました。入力欄が120~130と多く、使いこなせないといった声や、そもそもPCを持っていないという意見も現場から届きました。コロナ以外の感染症については旧システムを利用しており、現場の煩雑性は解消されていません。

Part3:日本の医療体制の弱み

コロナ患者受け入れ病院の業績推移

コロナ患者受け入れ病院の業績推移

今回の世界的なパンデミックにおいて、各国で医療現場の崩壊が問題として取りざたされていました。日本においても医療体制の崩壊が危惧されています。

現在の日本の状況として、総病院数やベッド数などはほかの国よりも多い状況です。しかし、公立・公的病院数の割合は低く、2018年の数字で行くと公立病院2割、私立病院8割になっています。その結果、国家危機として対応しなくてはならない事態においては、医療体制に弱い部分があります。コロナ患者用に病院の一部を切り替えたり、コロナ患者を受け入れられる病床を増やすトップダウンの体制構築はできないようになっています。その結果、コロナ患者の受け入れ先がなかなか見つからず、救急連絡から3時間後にやっと搬送先の病院を確保できた例などが報告されています。実際に新型コロナ患者受け入れ可能病院の割合は、公立病院は約7割に対し、私立病院は約2割となっています。

日米欧の病院数比較

日米欧の病院数比較

国内病院数の推移

国内病院数の推移

私立病院が受け入れ可能病院が少ない理由は、経営体力が乏しいことも理由にあります。コロナ患者を受け入れることでクラスター発生リスクや、稼働率の低下リスクを請け負うことになります。現在民間病院の赤字率は35~40%前後で高止まりしています。日本の医療体制の有事に対する脆弱性は、公立病院の比率が低く、私立病院においても中小規模のところが多い体制が原因といえます。

政府は団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年に向けて、16年から医療提供体制の改革に取り組んできました。この先の医療需要を地域別にまとめ、病院の機能を変えたり再統合を促す「地域医療構想」と呼ぶ活動を行っています。この活動は現時点では遅々として進んでいませんが、この危機をチャンスに変えることで、医師や看護師などの人材の再配置やパンデミックへの対応力も上がることになるでしょう。

感想

コロナにおける後手後手の対応については、日本全体の低成長・現状維持の姿勢が招いた結果かなと思いました。

私個人もそうですが、問題が発生した際の解決については行動できます。しかし、問題が発生する前の課題を達成する、さらに良い方向に進める活動については後手になってしまっていると最近感じます。コロナにおいても、自分事として差し迫った問題としてとらえきれていません。かかっても治るならば、インフルエンザなどのほかの風邪と同様に極端に恐れることはないと考えてしまいます。

しかし、上記のように考えるのではなく、これから起こりえる最悪ケースを想定し、未来の課題をつぶしていく意識をもつことで一人一人の行動は変わると思います。

日本は物質的にもある程度豊かになっています。街もきれいで比較的安全です。頑張って改善する労力と得られる結果の天秤が労力のほうが高くなっていると感じるケースが増えてしまったのではないでしょうか。ワクチンの開発にしろ、IT化の推進にしろやったほうがよいことであるのは間違いありません。しかし、それをいかに危機として(問題として)捉えることができるのか。その力が私含め弱まっているのではないかと考えました。もしくは現状に満足するのではなく、現状をより良い方向に変えることを楽しいと思える力を持つことが大切であると感じました。そして現状を改善していくことを楽しいと思うために必要なことは、適切な報酬か使命感だと思います。適切な報酬は他者が決めることであり、自分のコントロール外のことなので、自分の中の使命感を持つことをこれからの生活で意識していこうと思います。

コロナ対策云々よりも、自分自身の物事に向かい合う姿勢のまずさを内省することができました。非常に良い機会になりました。

最後に:今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

  • 『お金の学校』
  • 『LIFE SCIENCE』
  • 『BAD BLOOD』

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。