27歳からのどっこいしょブログ

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【読書感想】『こんなに違う!アジアの算数・数学教育』を読んで

こんなに違う!アジアの算数・数学教育

こんなに違う!アジアの算数・数学教育

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は田中義隆さん著『こんなに違う!アジアの算数・数学教育』の感想をまとめます。アジアの中でも文化や宗教が異なる日本、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、ネパールの5カ国の比較です。日本で当たり前のように受けてきた教育内容を客観的にとらえ直すことができました。

ぜひご覧ください!

 目次:

本の概要

本書はまず各国の教育制度の違いを説明し、その後各章ごとにテーマを決めて各国の算数教育の教科書内容を比較していきます。章立ては下記のとおりです。

  1. 各国の教育制度・教育課程と教科書
  2. 加法と減法
  3. 乗法
  4. 除法
  5. 0の学習
  6. 分数
  7. 小数
  8. 概数
  9. 長さ、重さ、かさの単位(度量衡)の学習

2章以降の算数の内容については、若干学術的記述が多くなります。また各章ともに「論理的かどうか」「意味理解重視か、計算力重視か」といった切り口で著者がチェックしていきます。

個人的に最も印象に残った内容が、第一章の各国の教育制度だったため、そのことについて詳しく説明します。

教育制度の違い

各国の教育制度について、教育の期間と教科書の選び方の2点の切り口で整理します。

まず日本についてです。日本は6・3・3・4の教育期間に分かれています。小学校と中学校の合計9年間が義務教育になっています。2018年に小学校学習指導要領が改定され、小学校高学年から外国語の授業が始まり、道徳が全学年で導入されました。教科書は教科書検定制度が採用されています。つまり民間で著作・編集された図書を文部科学大臣が審査し、教科書として使用することを許可する制度です。

つづいて、ベトナムです。ベトナムは5・4・3・4の教育機関です。また日本よりも開始年齢が早く、6歳から小学校教育が行われます。義務教育は9年間です。教育内容は社会主義国家ならではの特色もあります。「2000年カリキュラム」において、①社会主義を維持するための公民教育・道徳教育の必要性②世界に対応した外国語教育・情報化教育の拡大がテーマとして挙げられました。また、学校現場の教師に自由裁量を与え、地域特有のバリエーションを出すことも可能となっています。教科書は国定教科書でどの学校でも統一した教科書を使用しています。

次にインドネシアです。インドネシアは日本同様6・3・3・4です。特徴はイスラム系の学校と普通学校とが併存していることです。これは教育文化省管轄の普通学校と、宗教省管轄の「マサドラ」とよばれるイスラム学校があるためです。2013年カリキュラムでは、過去必須だった英語・情報技術などをなくし、理解や社会の勉強開始時期も高学年からになっています。このようにカリキュラムをゆるい方向に変えた理由は、勉強に追われるようになった子供たちが暴力を振るうようになり、社会問題化したからだそうです。教科書は2001年以降検定制になりました。

つづいてミャンマーです。ミャンマーは5・4・2・3という比較的短い教育期間となっています。義務教育も5~9歳までの5年のみです。ミャンマーは2013年以降教育の無償化を進めています。2013年までは農村部で住民の戸籍や登録が不十分であり、児童数を把握することが困難だったためです。教育内容の特徴は教科の中に農業やライフスキルといった科目があることです。現在新課程に移行中でその際には農業はなくなっていますが、まだミャンマーの教育制度は過渡期と言えるでしょう。教科書については、中央集権制が強く、国定教科書となります。

最後にネパールです。ネパールの教育期間は5・3・2・2・3となっていました。高校と大学のあいだに「テンプラスツゥ」と呼ばれる大学進学者のための期間が設けられておりました。しかし最新の教育期間は8・4・3です。8年間の義務教育で基礎教育を学びます。スタートも5歳からとなっています。尚、8年間の義務教育の教育課程を提供できる教員が確保できず、現在でも最新の期間へ移行は進んでいません。教育内容は変わったものはありませんが、英語教育が初等教育から始まります。教科書については、CDCと呼ばれる機関が開発している教科書を使用しています。

感想

各国の教育制度を見ると、英語教育の開始時期が遅いことが気になりました。外国では小さいころから2つの言語をしゃべることに慣れているため、喋りに関しては日本人よりも積極的なのではないかと思いました。

また算数の違いにおいて、本書の説明の中で各国の算数の教え方に「論理的ではない説明の導入である」という指摘が多くありました。もちろん日本の教科書に対しても著者は平等にツッコミを入れています。そう考えると、とくに疑問も持たずに数字や計算を呑み込めたことが不思議に思えてきました。まだ子どもはいませんが、将来的にゼロの概念や小数点などを論理的に説明しろと子どもに迫られた場合、対応できないなと感じました。笑

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。