海堂尊さん著『チーム・バチスタの栄光』の感想をまとめます。感想にはネタバレに当たる内容が含まれる可能性があるため、ご注意ください。
■要旨:驚異的なバチスタ手術の成功率を誇る『チーム・バチスタ』。しかしある時期から術中死が発生し、その原因解明に内科医の田口公平が抜擢される。チーム・バチスタのメンバーに聞き取り調査をしながら原因を探るが、その原因がわからないまま再度術中死が発生。田口がさじを投げる中、厚生労働省の白鳥圭輔が派遣され、田口とともに犯人を突き止める。登場人物の個性が光り、最初から最後まで世界に引き込まれる名小説である。
■感想:
白鳥圭輔(通称:ロジカルモンスター)がでてきてから、彼の強烈な個性と情熱に引き込まれていきました。本著にでてくるパッシブ・フェーズ/アクティブ・フェーズという考え方が非常に心に残りました。
主人公の田口は容疑者と思われるチーム・バチスタのメンバーに丁寧に聞き取り調査を行っていきます。そして最後の質問として相手の名前の由来を尋ねます。そこには由来が知りたいわけではなく、その受け答えによってその人の思考を感じるようです。私も人の話をきき、その人の考えを知ることが好きなため、主人公の田口に共感するところがありました。
一方の相方となる白鳥は、アクティブ・フェーズと呼ばれる方法で人の本性をむき出しにしていきます。人の心をわざと動揺させることで、ふいに本当の自分を出させるやり方です。わざと弱みをつき、徹底的に攻撃したりする白鳥の方法は非常に高度かつ精神的に強いやり方だと思いました。
ビジネスにおいても、ただ相手の意見を聞き、互いの妥協点をさぐるようでは進歩がありません。時には攻めを使い、揺さぶることで自分のポジションを優位なものにする必要があることを考えさせられました。
また小説としての完成度も非常に高く、最初から最後まで楽しめる構成になっておりました。前半の部分で人物に対するイメージを作らせ、後半でイメージを変えながら、パズルのように帰着へ向かうストーリーは、大変美しく、寝ることを忘れて読み終えてしました。(実際に朝の3時半まで読んでいました)
医療現場の知識もサブとして身に付き、読後感もよい良質な読書体験でした。
皆さんもぜひ読んでみてください。