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今回は『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』の感想をまとめます。
日本の昔の住環境の変遷や建築と宗教、文化のつながりを知ることができる1冊です。
ぜひご覧ください!
目次:
本の概要
本書は建築のもつ2つの側面ーハード面である建築とソフト面である暮らしーの往来を意識してまとめられた1冊です。構成は下記5章構成となっています。
- 日本の建築は知らないことだらけ
- こんな目で見ると近・現代建築も面白い
- 寺社はこだわりの世界
- 城・庭が育んだ日本の美意識
- 建築を支えた縁の下の力持ち
ハード面の技術的な話に終始することなく、ソフト面の暮らしの話も盛り込むことでとっつきやすい内容となっています。本書の中で印象に残った3点を詳しく紹介します。
日本の住居の変遷
日本と欧米の住居の大きな違いは部屋の用途が固定されていない点です。欧米ではベッドルームやダイニングルームと別れていますが、日本はふとんを敷けば寝る場所に、ちゃぶ台をだせば食事場に変化します。日本の特徴として、たたんでコンパクトにし、運びやすく、簡単に収納する道具を多く開発していました。例を挙げると、和服や扇子、風呂敷や屏風、ちゃぶ台に布団などです。
住居の変遷としては平安時代の寝殿造りから武家の書院造へと変わります。現代の和室の原型は書院造です。明治時代には書院造に西洋風の洋館をセットにした住居が流行になりました。
また土間、板の間、畳の間で高さが違うことにも意味があります。昔の一般的な農家を見ると、土間があり、50センチほど高い板の間、さらに3センチ高い畳の間となっていました。それは目上と召したという身分差を示す役割がありました。土間は使用人が使い、板の間は家族、畳の間はおもに来客用でした。
現在の日本の家は洋風建築が増えてきましたが、昔の日本建築には文化風習と切っても切れない構造がありました。
神社仏閣と建築
神社仏閣の建築においても1つ1つに意味があります。
まずは仏閣の配置です。これは仏教の世界観を描いた須弥山図に模してあります。須弥山図には現世のはるか遠くの海上に須弥山という世界の中心にそびえる山があり、2匹の龍がふもとで邪気の侵入を防いでいます。山道を登って山頂につくと待っているのは帝釈天です。ここで前世の検査を受け、忉利天という広場に通されます。すると、展開から仏たちが迎えに来てくれるという流れです。仏閣の配置についても総門があり、仁王門があって、本堂があります。
また〇と□の組み合わせで宇宙を表しています。これは天円地方という古代中国の考え方に基づきます。仏塔の代表的な形式である多宝塔は、仏のいる内陣は円形、人が拝観する外陣は方形となっています。また相撲の土俵も丸の外に方形があるのは、この天円方形の考え方によるものです。
つづいて神社についてです。神社はまつる神様によって方角がある程度決まっています。最もポピュラーなものは本殿が南を向いているものです。参拝者は北に向かって参拝することになり、天空を動くことのない北極星が神々の座にふさわしいといえます。東を向く本殿は、よく太陽神が祭られます。朝一番の光が参道を抜けて本殿の鏡を照らすことで、太陽神が仮の姿として現れるというもので、古い神社に多くあります。西を向くのは住吉大社とその分社が該当します。住吉大社の祭神は、三韓遠征の神話にでてくる神功皇后と海の三神です。そのため、西の方角に位置する朝鮮半島を向いています。北を向く本殿は、妙見を祭る神社の特徴です。北の守護神である妙見が北極星を仰ぎ見るという配置になっています。
細部にまで意味やこだわりを見せる日本の心を感じることができる内容でした。
城や庭に見る日本の心
城や庭についても日本の心を感じることができます。
庭については、回遊式庭園というものがあります。これは庭の場所を回りながらそれぞれが表している景色に思いを馳せて楽しむ庭園です。砂利や石などを用いて富士山や三保の松原などを連想させる配置を行うことで、庭園全体のストーリーが分かります。
城については方位に気を使っていました。平城京や平安京などの都においては同じような地形の場所にあります。その理由は四神相応という占いが重視されたからです。東の方角に住む青龍は水を好みます。青龍に守ってもらうには、大きな川が必要でした。南の朱雀は沢のほとりにある湿地に生息し、西の白虎は大きな道、北の玄武は山に潜みます。そのため、東に川、南に湿地、西に街道、北に山が備わった地形が都にふさわしい吉祥の地でした。また城においては、鬼は角が好きという理由で、凶方軸である北東の隅を鬼門とし、角をとった入隅という形にしました。
感想
建築においてここまで密接に宗教や生活と関係があることを意識していなかったため、とても面白かったです。家を建てる際に方角は気にするかを聞かれましたが、この本を先に読んでいたら気にしていただろうと思います。笑
何気ない生活環境からその地域の文化や思想を想起できるように、これからもインプットを続けていきたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう。