27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『クルマ創世記』を読んで

日経ビジネス表紙「クルマ創世記」

2020/2/24発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年2月24日発行分の日経ビジネス『クルマ創世記』の感想をまとめます。

本記事を読むことで下記3点が分かります!

  1. 日本の電気自動車への取り組み
  2. アメリカの電気自動車への取り組み
  3. 欧州メガサプライヤの電気自動車への取り組み

ぜひご覧ください!

 

目次

 

PART1:ソニーEV参戦

ソニーがスポーツモデルEVを企画から2年で完成させました。スマホでの覇権争いにはappleやsamsungに敗れましたが、EV市場でその雪辱を果たします。なぜ電機メーカーだったソニーがEV市場に参加できたのか、そのポイントをお伝えします。

①aiboチームが開発

人間とコミュニケーションできる犬型ロボットのaibo。外観には数多のセンサーが実装されており、そこから受けた電気信号をAIで分析し、コミュニケーションに活かしています。EVで自動運転が実現された場合、社内の空間は楽しむためのものになります。ウォークマンのように移動中の楽しみを提供できるようになれば、ソニーのブランド価値は一気に高まるでしょう。

②VISION-Sでの参画した企業の力

SonyのEV『VISION-S』の参画メーカーリスト

Sony VISION-Sでの参画メーカーリスト

電機メーカーのSonyがEVを2年ほどで開発できた大きな理由は、強力な部品供給メーカーでした。車体や半導体など名だたる企業が部品や設計開発において参画しました。車体の設計は完成車の受託生産で実績のあるマグナ・シュタイヤー。ほかにも自動車メーカーからの転籍者などのSony内部人材の活躍もあり、短期間での立ち上げが可能になりました。

③EVになることでの参入障壁の差(キーパーツの変化)

「エンジン車ではできなかった」と電動車両プロジェクトを担当した江里口氏が語ります。エンジン車と違い、キーパーツが電池とモーター、センサーなどに変化したことで電機メーカーでも参入できるようになりました。それによりエレクトロニクスやITのメーカーがEV開発に乗り出す企業も多く、SONYのように自動車の知見が乏しい企業が相次いで参入の動きを見せています。

PART2:アメリカのEV市場の新興勢力

EVの先頭を走るといっても過言ではない、テスラモーターズ。しかしアメリカはテスラだけではありません。アメリカEV市場の進行勢力を見てみましょう。

①ルーシッド・モーターズ

ポスト・テスラの有力候補の一つがカリフォルニア州に本社を構えるルーシッド・モーターズです。2007年にEV向けバッテリー技術開発の会社として設立された同社は16年、「EVの完成車を生産する」と宣言し、業界をざわつかせました。

特徴は何といっても経験豊富な経営陣です。

ルーシッド・モーター 経営陣とその経歴

ルーシッド・モーター 経営陣と経歴

CEOのピーター・ローリンソン氏はジャガーのチーフエンジニアを経て、2009年イーロンマスク氏からのラブコールにより「モデルS」のチーフエンジニアを務めた人物です。ほかの経営陣もテスラやアウディなど名だたる車メーカー出身者で固められています。ルーシッド・モーターのローリンソン氏は「テスラとは競合しない。モデルSよりもラグジュアリーなクラスを狙う」と発言しました。

②リヴィアン

アマゾンから7億ドルの出資を受けた、有力候補のリヴィアン。創業者のRJ・スカリンジ氏は米マサチューセッツ工科大学で博士課程を修了した技術者です。

リヴィアンの車両の特徴は「スケートボード」と呼ぶシャシーにあります。バッテリーや車輪ごとについた4つのモーターなどを搭載した薄型の車台で、配送バンやSUVなどモデルに応じて「上物」のデザインを柔軟に変えることができます。20年にはイリノイ州にある三菱自動車が閉鎖した工場で量産開始予定です。

③市場の環境変化

アメリカでEVの新興勢力が勃興している背景として、テスラがEV市場の将来性を証明したことにあります。19年、テスラの年間生産台数は35万台を超えました。ディーラー網を持たず、先行予約で顧客を確保して新たな市場を切り開く独特の事業モデルにより、後発メーカーでも戦えることを示しました。

また、大手自動車メーカーやテスラにいた人材の流動性も高まっています。資金の集まる有力なスタートアップに、カネだけでなくヒトも集まってきました。

さらに気候変動対策への意識が企業の間で急速に高まっていることも大きいです。ESG(環境・社会・企業統治)の波が新たな市場を切り開く追い風になっています。

④既存車メーカーとIT企業の協業

既存の大手車メーカーも指をくわえて見ているだけではありません。GMは閉鎖が決まっていたミシガン州デトロイト近郊の工場に22億ドルを投資し、電気自動車用の専用工場とすることを発表しました。

また既存車メーカーとIT企業との協業も起きています。グーグル系の自動運転開発会社ウェイモは19年、デトロイトで一般車両を自動運転車に改造する工場の稼働を始めました。ベース車両はフィアット・クライスラーやジャガーから調達し、AIやセンサーなどを組み込みます。

⑤街をあげてのバックアップ

「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる米中西部。その代表的な街だったデトロイトが、今EVの工場復活などで活性化されています。

 

ラストベルトといわれていたデトロイト。その工場復活で街を活性化につなげるため、地元の公的機関も協力的。

中西部には優れた大学もあり、スタートアップを育む土壌はできている

COLUMN

EV化により新たな価値を生み出し、市場が盛り上がるテーマは何かをチェックしましょう。

①半導体

EV化することでSoCの活用方針は水平分業型が進む用途と、垂直統合型が進む用途に分かれます。情報系のSoCは水平分業型が進み専業メーカーが供給することになるでしょう。一方駆動系のSoCは垂直統合型で、各自動車メーカーがハードからサービスまで一貫して作り込むことが予想されます。

②金融

カーシェアリングが普及することで25年以内に個人向け自動車保険の市場は4割ほど縮小すると予想されています。そこでカーシェアリング時代の新しい保険の形として、サイバーセキュリティー向けの商品や車の故障サポートなどの商品が始まるでしょう。そしてソフトの更新やアプリが広がる場合、決済分野においてもビジネスが生まれる可能性があります。

③素材

EVが普及する上で避けて通れないのが燃費の向上です。燃費を上げるためにはボディーの軽量化が有効であり、その解決策の1つとして炭素繊維が挙げられます。すでにプリウスに使用されていますが、今後炭素繊維のリサイクルが進むことで、炭素繊維の価格が抑えられることが期待されています。

PART3:欧州メガサプライヤの動き

欧州のメガサプライヤは新興勢力が勃興するEV市場において、したたかな戦略を取っています。大手メーカーが覇権をとっても、新興勢力が伸びてきてもメガサプライヤとしての地位を盤石なものにする布石はすでに打たれています。

コンチネンタル

コンチネンタルの提携先

コンチネンタル 提携先

1871年創業の老舗タイヤメーカーとして知られる独コンチネンタル。1990年ごろから自動車部品関連企業を100社以上買収してきました。トレンドを予測し、新技術をもつ企業を買収するなかで、今では自動車メーカーが頼るメガサプライヤーに成長しました。

その買収した技術を欧州車メーカーだけではなく、日系メーカーや電機メーカーへも供給します。また先を見越し、パワートレイン部門を19年に独立させ、30年までに世界の工場を閉鎖するとともに2万人を配置転換する方針を掲げました。

ボッシュ

ボッシュは16年に電動スクーターのライドシェアサービスを開始。MaaS対応をいち早く進めており、ハードとソフトの両面でプラットフォーマーの座を狙っています。

ボッシュが開発したのはパワートレインと一体のシャシー。それを車メーカーが買うことによって上のボディ部分のみの製造で完成します。ソフト面でも17年にクラウドサービスを開始し、故障の予防診断やパーソナルアシストができます。さらにミヒャエル・ボレCEOは「今後2年間で、AIに精通した従業員を約2万人にする」と宣言しました。

PART4:王者トヨタの戦略

日本が誇る世界のトヨタ。100年に1度の大変革期に向けてトヨタならではの打ち手をだしました。

それは静岡県裾野市に「未来のコネクテッドシティ『Woven City』」を21年に着工すると発表しました。そこはトヨタの私有地であり、人が住み、生活しながら、未来の都市の在り方を実証する街を作る計画です。居住人口は2000人ほどで、水素や再生可能エネルギーをフル活用し、自動配送網を地下に設ける構想もあります。

さらにトヨタは日本の自動車メーカーとして唯一SoC開発に進出します。基幹デバイスは独自開発を行いますが、デンソーと出資しあい、あらたな会社を設立しました。トヨタ系列のグループ再編を行い、総合力のアップを図ります。 

PART5:「自動車産業」の最終章

GAFAと国内自動車大手の研究開発費

GAFAと国内自動車大手の研究開発費

かつて「和製テスラ」と呼ばれた企業が京都にあるGLMです。しかしながら国内では資金調達ができず、現在は香港資本のもの会社が存続しています。ほかのスタートアップにおいても日本の規制に阻まれ、実証実験ができずに開発が中止となったものもあります。さらにGAFAと日本国内車メーカーの研究開発費を比較すると1/3ほどしかありません。

「100年に1度の変革期」というように、CASEによって自動車産業という枠組みが消え、新しい産業が生まれるかもしれません。ニュースター不在の日本において、そのまま世界のトップ企業に飲み込まれないために、動き続けるしかありません。

私の感想

SONYの矜持に感動

トヨタの豊田章男社長が「100年に1度の大変革期」と話している理由が理解できました。EVにより、今まで気づいてきた自動車メーカーとしての地位が脅かされる可能性をPart1よりわかりました。SONYがEVを開発する際に、「スマホに乗ったらどうなるか?」という発想を元に、外の映像と社内モニターを合わせエンターテインメントのあるEVを作ったところに、SONYの企業文化を感じ、感動しました。

電機メーカーがただEVをつくるだけでなく、そこにさらに一捻りする。なかなかこの最後の工夫ができていないメーカーがほとんどだと思います。私もメーカーに勤める身として、自分の企業らしさを考え、仕事や製品の付加価値としてどうするかを意識して業務に向かいたいと思いました。

アメリカと日本の差に愕然

また、アメリカと日本の経済的盛り上がりの差を感じました。

アメリカはテスラが出てくるだけでも十分すごいことにも関わらず、すぐにポスト・テスラとして複数の有力候補が出てきています。日本も以前有力な新興EVメーカーがでたとのことですが、結局規制により頓挫してしまいました。

また日本でEVを引っ張るのはSONYやトヨタ、ホンダなどの大企業ばかりです。私の勉強不足かもしれませんが、日本ではスタートアップが台頭する元気さがありません。というか自由に実験をする環境、風土がないのかもしれません。その中ではトヨタの打つ手は理にかなっており、流石トヨタと唸りました。

研究開発費にしてもGAFAの規模には勝てないと知り、投入する資源で勝てないためまだアメリカの覇権は続くだろうと感じます。しかし、残る中国がEVの開発はどうなっているのか気になりました。また本や雑誌などで情報収集をしたいと思います。

欧州の戦略性の高さを感じる

コンチネンタルやボッシュがEV市場の勃興にむけて、すでに新興メーカーへも部品供給していることを知り、合理性のある透明な経営だと感じました。日本ではトヨタ系や日産系というように、部品メーカーにも所属がなんとなく存在します。その所属する完成体メーカーに忖度し、合理的な取引ができるのか私は疑問に思いました。

またシーメンスの「未来の絵」(10年後の将来を描いた絵)を使って長期戦略を描くことを思い出し、欧州の企業は長期的な戦略を作成し、実行していくことに長けていると感じました。

EV市場について自分の思考を整理できたため、大変有意義な特集でした。

最後に:日経ビジネス 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。