27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『コロナエフェクト-ニューノーマル-』を読んで 2/2

日経ビジネス表紙『コロナエフェクト-ニューノーマル-』

2020/5/25発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年5月25日発行分の日経ビジネス『コロナエフェクト-ニューノーマル-』を読んだ感想をまとめます。

コロナウイルスの影響を受けてアメリカ、中国、ヨーロッパ、アジアはどうなっていくのか。今回は第2弾としてヨーロッパ、アジアの取り組みです。

第1弾は下記リンク先よりご確認ください。

www.jiujingrentang.com

それではどうぞ!

 

目次

 

PART3:ヨーロッパ編

イタリアで問題となった医療崩壊。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、欧州議会の総会でイタリアに対し、異例の謝罪を述べました。極右政党が勢力を伸ばしたり、ブレグジットが起きるなど、EUとしてのつながりに亀裂が入ってきています。そんなヨーロッパにおいてどのような変化がおきるか見てみましょう。

①南北分断の深刻化

EUを好ましくないと考える人の比率

EUを好ましくないと考える人の比率

コロナウイルスの影響によって、各国の経済がダメージを追っています。国際通貨基金(IMF)の予測によると、20年の世界経済の成長率は-3%に対し、ユーロ圏は-7.5%。その中でもイタリア-9.1%、スペイン-8%と、成長率の低い国で感染爆発が起こりました。その両国がEUに支援を求めています。

EUは4月の首脳会談で、経営難に陥る航空会社や製造業を支援するために、欧州復興基金の創設で合意しました。しかし、基金の規模や財源については合意に至りませんでした。イタリア、スペイン、フランスなどが財源としてユーロ共同債(コロナ債)を求めたのに対し、ドイツやオランダが拒否をしたからです。

このコロナ債とは国の信用で出す国債の、EU版です。つまり国としての信用度の低い南部の国においても、EUの信用を借りることで資金を得られます。一方で返済については、財政基盤が比較的しっかりしている北部側の国の負担が増えるため、ドイツとオランダは拒否をしました。

EUからの支援がない南部がリーマンショック後のように債務危機に陥れば、EUの経済はさらに停滞し、自国主義の風潮が加速するでしょう。

②募る中国不信

欧州への中国からの投資額推移

欧州への中国からの投資額推移

EUと中国の距離感についても見直しが図られる可能性があります。

2010年代になってから、中国がEUに投資する額は年々急増し、19年までに総額でおよそ1600億ユーロ(約18兆4000億円)に達しました。

しかしながらコロナウイルスの世界的蔓延をきっかけに中国に対し、不信感を抱きつつあります。4月以降フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相などが公然と中国の情報公開に対し苦言を呈しました。さらに中国からの医療支援品の中に不良品が混ざっており、民間人の間にも不信感が広がっています。

そんな中経済危機で企業価値が下落しているヨーロッパ企業が中国に買収されることに、EUの各国が危機感を抱いています。欧州委員会は各国に買収防衛を求め、ドイツではEU域外の企業がドイツ企業を買収しようとした場合、「ドイツの利益を阻害する恐れがある」と見なされれば、阻止できる法案を整備しました。イタリアにおいても、銀行やエネルギーなどの業種を対象に、国外企業が10%以上の株式を取得しようとした場合、政府が阻止できる規制を発表しました。

ただし、中国の投資マネーは欧州経済が立ち上がるためには必要です。その中で中国との関係をどうすればいいのか各国で頭を悩ませています。

③小国、自治体に存在感

欧州各国の大胆政策

欧州各国の大胆政策

ヨーロッパの中で比較的被害が少なく、経済の再開が早いのがドイツ。メルケル首相のリーダーシップや危機管理体制、感染症専門機関のロベルト・コッホ研究所によるイニシアチブ、迅速な検査体制の確立などが成功の要因として挙げられています。

そのなかでも参考になるのが、連邦制による権限を大きく持った地方自治体の存在です。今回のドイツでは各州政府がコロナウイルスへの対策を打ち出し、それを連邦政府が追認していく形を取りました。経済対策においてもバイエルン州が3月19日に100億ユーロの企業支援プログラムを発表し、翌日からは中小企業向けに支援金の振り込みを始めました。

コロナのような緊急事態においてはスピーディーな決断と実行が求められます。そして過去様々な経済危機に直面しては大胆な政策がヨーロッパでは導入される傾向があります。リーマンショック後には、イギリスが銀行業に関する規制を緩和し、ITと金融サービスが融合した「フィンテック」が勃興しました。

米国もコロナの影響を受け、力が弱まる中、国際社会を主導する国が不在となる「Gゼロ」の色彩が強まる可能性があります。その中で大胆な政策を実行する国や自治体の影響力が増えていくことが考えられます。

PART4:アジア編

新型コロナウイルスの封じ込めのため、厳しい封鎖をおこなったアジア各国。それにより徐々に経済活動が再開されています。そんなアジアのアフターコロナのニューノーマルはどうなるでしょうか。見てみましょう。

①独裁色の強い指導者が人気

ベトナム首都ハノイの整列状況

ベトナム首都ハノイの整列状況

タイのプラユット首相。新型コロナ対策の陣頭指揮を執る彼は、かつて陸軍司令官としてクーデターを主導し、軍事政権で独裁的地位につきました。その強権的な体制に反発がでていましたが、今回のコロナ対応によりその声はなくなりました。

ほかのアジア各国でも厳しい措置が取られます。ベトナムでは、感染地域のシュウ語句住宅が有無を言わさず閉鎖。ミャンマーでは禁止されている集会に参加した国民が逮捕され、フィリピンではドゥテルテ大統領が「指示に従わない国民は射殺する」と脅しています。今回のコロナを通して権利と自由を制限できない民主主義の代表である欧米諸国でコロナが大流行し、その結果強権的な国家を容認する考えが広がっています。

そんなアジア圏においても、他国との関係は重視しなくてはいけません。なぜならば経済発展のためには一国の市場規模が小さく、内需のみならずほかの市場にも輸出する必要があるからです。そんな中で一番の太客は中国でした。中国も一党独裁体制の強い権限を持った政治体制です。その中国に歩調をあわせる形でアジアは成長をしていきましたが、これからは中国と対等に付き合えるような適切な距離感をつかむことが重要になるでしょう。

②部品供給網の脆弱さ露呈

アジア圏の感染者数

アジア圏の感染者数

アジアを生産拠点として構えるメーカーの工場を打撃を受けています。製造ラインをストップさせることにより、部品供給メーカーも悲鳴を上げています。

そんな中メーカーのサプライチェーンは国内完結志向が高まるかもしれません。流通・貿易網が発達し、アジア全体で最適なサプライチェーンを作りだし、コストを抑えることを善としてきました。しかし今回のような国の経済活動がストップする事態を考えた場合、グローバルから調達するのではなく、製造国内で完結できるような部品供給網を準備することが大切になります。

③IT産業「カエル飛び」

タイ バンコクの配車アプリのドライバーたち

タイ バンコクの配車アプリのドライバーたち

経済全体が試練を迎える中で、むしろコロナ危機を経て市場拡大が加速するとみられる分野がIT産業です。タイでは、ライドシェア・配車サービス大手グラブなどが手掛けるレストラン料理のデリバリーサービスが多くの飲食店や消費者に重宝されました。

インドネシアでは新型コロナを機に、個人商店の電子発注が急速に普及しています。「ワルン」と呼ばれる伝統的な家族経営の小売店のオーナーがこぞってスマホを活用した発注システムを利用し始めています。

インドにおいても同様の動きがあります。「キナラ」と呼ばれる伝統的で規模が小さい小売店が1000万店あるといわれています。ここにオンライン発注システムを提供しているスタートアップが、新しいサービスを始めました。加盟するキラナの在庫情報を消費者が調べ、発注できる仕組みです。そして商品は配達してもらうことも、受け取りに行くことも可能です。都市封鎖下の不便さが新サービスを生み出したといってよいでしょう。

EPILOGUE:コロナ後の世界経済

新型コロナ感染拡大がもたらす影響

新型コロナ感染拡大がもたらす影響

今後のコロナウイルスの感染拡大に見舞われた国が共通して起こる現象があります。それは経済対策のための財政出動がかつてない規模に膨らむことです。IMFによると、世界各国の財政出動は総額800兆ドル(約850兆円)規模と言われています。

まず市場が不景気となるため、モノの価格が下がるデフレが進行します。また新しい生活様式である在宅勤務やソーシャルディスタンスも消費行動を減らす一因となっているでしょう。そうなれば人々の需要は上がらないまま、コロナ終息後に供給能力だけ戻り、供給過多となってデフレになることが懸念されます。

反対にインフラになることを予測している人もいます。外出自粛でせき止められていた消費の欲望が一気に解放。それにより供給能力が戻る前に需要が上がり、インフレ期待が高まるという動きです。政府と中銀のコロナ対策で市場にカネ余り(過剰流動性)が生まれています。そしてそのカネ余りによって投資マネーに回され、資産バブルにつながる可能性まで孕んでいます。健全な経済成長を実現するため、コロナ後のニューノーマルを前提とした企業・ビジネスモデルが出現し、経済をけん引することが必要でしょう。

私の感想

ヨーロッパの分裂は大いにあり得るシナリオだと感じました。

ブレグジットやEU圏内での極右政党の勃興などを鑑みるに、コロナによる経済的ダメージが引き金となり分裂する可能性は大いにあります。またEUが1993年に発足したこと、企業の寿命がだいたい30年と言われている中で、EUも組織として限界まで来ているのではないかと感覚的に思いました。コロナによる世界情勢の変化はおそらく歴史的な転換点になる気がします。

中国の大躍進、各国での強権的な指導者の登場、先進国の自国主義(ブロック経済)など、1930年代の世界大戦前の世界恐慌に合致していると見えなくもありません。当時は経済発展のため植民地を増やす帝国主義全盛でした。それにより各国が他国を侵略する戦争が行われました。今の時代は場所はサイバー空間に移るでしょうか。中国は5Gなどのネットワーク網を牛耳っています。それにより意図的にどこかの国を困らせ、自国のサービスを売り込み、奴隷化する。あまりに現実的ではない話かもしれませんが、自国第一主義に世界が向かうようであれば、注意が必要だなと思いました。

私個人としては、最新のテクノロジーの知識を身につけ、いつの間にかサービスを享受するだけの隷属的な人間になってしまわないように、勉強を続けたいと思いました。

 

本日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

また次回もお会いしましょう。