27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『失敗が事業を育てる』を読んで

日経ビジネス表紙『失敗が事業を育てる』

2020/3/2発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年3月2日発行分の日経ビジネス『失敗が事業を育てる』を読んだ感想をまとめます。

本記事では下記のことがわかります!

  • 失敗した事業を成長事業にする方法
  • 失敗から生まれた身近な商品たち
  • 失敗を許容する風土形成方法

ぜひご覧ください!

 

目次:

PART1:あのヒット商品は失敗から

現在大人気の家電やお菓子、食品など、ヒット商品と呼ばれるものの中には、苦労してその地位まで登りつめたものも少なくありません。エジソンやアインシュタインといった過去の偉人たちが数多くの名言を残しているように、失敗には数多くの成功へのヒントが隠されています。

シャープ:ヘルシオ ホットクック

食材に含まれる水分を使い調理する電気無水鍋「ホットクック」。自動で食材をかき混ぜる機能があり、材料を入れてレシピを選ぶだけで料理ができる調理器具です。その便利さが受けて、20年には年間10万台の大ヒット商品となる見込みです。

そのヘルシオ ホットクックができる影の功労者が、ヘルシオ炊飯器でした。高級炊飯器市場のライバルたちの牙城を崩そうと、自動かき混ぜ機能を付けた炊飯器で、洗米と炊飯時に自動でかき混ぜることで栄養価が高く、おいしいお米が食べられることが売りでした。ですが「ある程度」しか売れず、14年の2号機以降新製品は続きませんでした。

しかし、代わりにバトンを継ぐことになったのが、ヘルシオ ホットクックです。ヘルシオ炊飯器の調理機能が13年の家電企画会議で話題に上がり、かき混ぜ機能付きの電気無水鍋の構想ができました。そしてかき混ぜ方などの改善を経て、現在のヒット商品が生まれました。

有楽製菓:ブラックサンダー

「おいしさイナズマ級!」のキャッチコピーで、老若男女に人気のチョコ菓子「ブラックサンダー」。今ではバレンタインデーの義理チョコ代表を務めるほどのヒット商品ですが、順風満帆な商品ライフではありませんでした。

ブラックサンダーの発売は1994年9月。価格は今と同じ30円で、駄菓子屋で売られている他のチョコ菓子と比べると高価なものでした。そのため、販売不振で翌95年には販売中止となりました。

そんなブラックサンダーの命を救ったのは消費者の声でした。「おいしいのに、なぜ販売中止になったのか」という顧客の声を、九州の営業担当者が経営陣に直談判。「包装資材分のみ作り、だめならあきらめる」という条件で再販が決まりました。

その後販路を大学生協に広げると、京都の大学で突如菓子部門の売上トップとなり、口コミで若い世代中心に人気が広がりました。そして体操金メダリストの内村航平選手も好物だと明かすと爆発的な大ヒットになりました。

PART2:失敗から復活する3原則

Part1で見た以外の実例をもとに失敗から復活する3原則はなにかを分析しました。

その結果下記の3原則が見えてきました。

  1. 市場を変える
  2. 時間軸を変える
  3. 座組を変える

①市場を変える

ヘルシオ ホットクックやブラックサンダーのように販売先や販路などの市場を変えることで復活する例を見てみましょう。

アーサムセラピューティクス(ART-648)

2018年7月設立の創薬スタートアップ、アーサムセラピューティクス。一般的に医薬品開発には9~17年かかるといわれている中、同社は2つ中期(フェーズ2)、1つ初期(フェーズ1)の臨床実験に入ろうとしている化合物があります。その異例のスピードで開発が進められている理由は、同社が武田薬品工業生まれのスタートアップだからです。

もともと武田薬品工業時代に開発を行っていた化合物でした。しかし、CEOのクリストフ・ウェーバー氏の事業の選択と集中の中で、16年に「オンコロジー(がん)」「消化器系疾患」「中枢神経系疾患」の3つを重点疾患領域と定めて、これに合わせて研究所の再編が加速しました。その中で当化合物の研究がストップすることを避けるため、武田の活用しない開発資産を切り出し、社員に起業を促すプログラムを利用してアーサムを立ち上げました。

そして立ち上げ後その化合物を別の用途で利用することを検討しました。「ドラッグリポジショニング」と呼ばれる手法です。それにより、もともと糖尿病薬として開発したART-648を、脂質代謝にも関与する特性を見つけ、別の疾患用に転用しました。

タニタ(健康プログラム)

体組成計、歩数計などの計測器メーカーのタニタ。同社はハードだけでなく、健康をサポートする「健康プログラム」というソフトも提供しています。

「健康プログラム」は一般消費者をターゲットに2007年に販売を開始しました。しかし販売価格が10万円前後と高額なうえ、電池の持ちが悪いなど使い勝手も悪く赤字事業になりました。社長の判断のもと事業継続を決めましたが、使い勝手を解消しない限り、赤字は解決されることはありません。そこでタニタ社員全員に機器を利用させ、使い勝手向上の具申を募りました。その結果機器は改善されましたが、副次的に社員の歩数が増加し平均体重が減少するなどの健康改善効果も見られました。

その結果会社の医療費の負担額も下がることを自社内で実証できたタニタ。そのデータをもとに販売元をBtoBに変えたところ、事業は黒字に反転することができました。

②時間軸を変える

続いて短期で見切りをつけるのではなく、時間軸を変えて長期で復活を果たした例を見てみましょう。

宇部興産(ヘリオトロピン)

牛乳のような香りが特徴の香料原料「ヘリオトロピン」。石鹸から食品まで幅広い用途に使用されます。もともとはクスノキ科のある樹木の根から抽出する油を原料に作られていましたが、宇部興産は別の化学品から合成できる技術を確立し、現在のヘリオトロピン市場で約5割のシェアを握ります。

宇部興産が合成ヘリオトロピンの研究に着手したのは1980年代。そして最初に事業化を目指したのは2000年でした。当時原木の過剰伐採など環境問題が表面化しており、合成品の需要があると見込んで数トン規模の試作品をつくりました。

しかし結果は失敗。理由は量産技術が確立できておらず、品質にばらつきがあったからでした。ただ、その事業化の中でヘリオトロピンから香水の原料を作っていたことがわかりました。そしてヘリオトロピンを使わずに香水原料を合成する手法を編み出し、特許を取得。現在ではファインケミカル部門の主力商品の1つとなり、世界シェア8割を誇っています。

これだけでも十分成功ですが、さらに07年まで合成ヘリオトロピンの研究を細々と続け、ついに高品質の合成ヘリオトロピンを完成させました。さらに外部環境も追い風になります。人口増加でヘリオトロピンの需要が増加したうえ、森林伐採が国際問題化していました。そして2008年から事業化を再検討し、14年に量産技術を確立。ついに事業化につながりました。

Panasonic(宅配ボックス)

パナソニックの戸建て住宅用宅配ボックス。現在では日本の新築戸建ての1割には採用されていますが、立ち上げからの道は平坦ではありませんでした。

1992年、お中元・お歳暮文化もあり共働きも徐々に増えていたころに第1弾が開発されました。セキュリティを考え、一度しか印鑑が押せないように工夫した宅配ボックスは18万円で売り出しました。しかし結果はさんざん。月数千台の見込みが、わずか20台ほどしか売れませんでした。

あきらめずに95年に第2弾を投入。価格を10万円まで抑えたものの、月100台程度。さらにコストを抑えた第3弾を2008年に投入するも、月250台程度でした。それでもその将来性をトップが認めており、さらになんとか黒字だったことがあり徹底は免れていました。

転機は2016年。第3弾の開発担当者だった小林主務が、事業部長に自販機の前で直談判。そこでは答えはもらえませんでしたが、戦略チームを組みなおし、共働き世帯が最も多い福井県で実験を開始。再配達が約5割ほどだったところ、8%まで軽減することが分かり、そのデータをもとに顧客に訴求していきました。

③座組を変える

復活のカギを握る3つ目のポイントは提携先や組織体制などの「座組」を変えることです。座組を変えて復活した例を見てみましょう。

NEC・フィンクテクノロジーズ(A-RROWG)

NECとフィンクが開発したA-RROWG

NEC/FiNC開発 A-RROWG

NECが開発した「A-RROWG」。センシング機能を駆使して、適正な歩行姿勢へ導くインソールです。裏側部分に加速度とジャイロセンサー、無線機能、制御半導体などを一体化したセンサーモジュールを内蔵。センサーから得た情報から歩幅や歩く速度などを割り出し、専用アプリで「歩容」のためのアドバイスを提供します。

その商品の開発の立役者になったのがFiNC Technologiesです。もともとNECのみで医療用途で開発を進めていました。しかしコストの壁があり、専用靴では数百万円したり、医療用の法的な壁もありました。そんな中17年8月にNECがフィンクに出資し、技術交流会を行った際に歩行データのセンシング技術にフィンクが興味を持ちます。そこで意気投合しヘルスケア領域で共同開発をスタートしました。

フィンクからの要望に応える形で、コストを下げるため汎用性を考えたインソールでの提供が決まりました。さらに長寿命な電池の小型化が要求されました。そこで活躍したのがNECの旧携帯電話の開発部隊でした。そしてフィンクの要望通りのインソールが開発されると販売価格1万7000円のインソールに応募が殺到し、目標販売高100万円を優に超える、910万円の売上となりました。

quantum

新たな「座組」を提供する企業も存在します。博報堂子会社のquantumです。

2016年に設立した同社は、企業に眠っている技術を有効活用しquantumと共同事業を行っています。例えばスポーツ用品や医療・福祉機器などを製造するモルテンと組み、アクティブに活動する障害者向けにデザイン性と乗り心地を追求した車椅子「wheeliy」の開発をすすめました。

COLUMN:伝説のヒット商品誕生秘話

ここでは有名な商品の誕生秘話を紹介します。

柿の種

浪花屋製菓・創業者の今井与三郎氏が発明。

妻があられを作る金型を誤って踏みつぶしてしまいました。曲がった金型をそのまま利用するとゆがんだあられができ、それを見た知人が「形が柿の種に似ている

といったことから着想を得ました。

コカ・コーラ

1886年薬剤師のパンバートン氏は香り高いカラメル色の調合シロップを作り、そのシロップを水で薄めて提供していました。ところがある日間違えて炭酸水で割って提供したところ、飲んだ人が大絶賛。当初の販売は1日9杯ほどでしたが、無料クーポン配布などのPR戦略がはまり、一気に国民的飲み物になりました。

ポスト・イット

1968年、3Mの研究者だったシルバー氏が強力な接着剤を開発している際、良くくっつくが簡単にはがれる接着剤の試作品ができました。その特性がユニークだったため、何かに使えないか社内で声をかけていたところ、フライ氏が教会で賛美歌集から落ちたしおりを見て、今の使い方をひらめきました。

バイアグラ

米ファイザーがもともと抗狭心症薬として開発しましたが、臨床実験で効果がありませんでした。その試験の途中で陰茎勃起がみられたため、1993年からED患者を対象とした臨床実験を開始、効果が認められました。

カニカマ

水産加工のスギヨは70年代初頭に珍味だったクラゲの代替品を開発する過程で生まれました。卵白などで本物に近い人工クラゲを作りましたが、そこにかまぼこを加えたところ、風味がよく口当たりが蟹の身そっくりなものができました。

ちなみにカニカマはインスタントラーメン、レトルトカレーに並ぶ戦後の「食品三大発明」のひとつに数えられます。

ナイロン

1935年のデュポンの研究者だったカロザース氏が開発しました。絹などの天然繊維を全く含まない人工繊維を作ろうとしていたところ、うまくは進みませんでした。ある時、失敗した試作品の残りかすをガラス棒の先端に付けて引っ張ると、蜘蛛の糸のようにのびました。そこから研究を重ね、強度の高い人工繊維が誕生しました。

PART3:失敗を許容する風土をつくる

上記の例で確認した通り、失敗の中から次の成長事業が育ちます。失敗をいかに許容し、次につなげられる風土を作れるか、そのポイントを具体例から探りましょう。

不二製油

チョコレート用油脂で世界トップ3に入る不二製油。同社は大豆ミートで国内シェア5割誇っています。

不二製油が大豆ミートの開発を始めたのは1960年代。現在はビヨンド・ミートが上場するなど追い風が吹いていますが、約60年ほどは失敗の連続でした。

そんな中でも事業を辞めずに続けることができたのは、2代目社長の西村政太郎氏が残した「人のために絶対になる。」という言葉があるからかもしれません。短期的な損得だけではなく、長期的な視点で人々の暮らしに必要なものを生み出すという、経営者の信念と覚悟によってうまれました。

Futonto

オーダーメイド枕のお店を運営するFutonto。同社は何かに失敗した社員を「やっちまった賞」として定期的に表彰する社内制度を設けており、その表彰式の会場は明るい笑いに包まれています。

同社の170人弱の社員の9割が転職組。一度の失敗で転職されないようにするためにも、失敗を許容する風土を社長や制度含め作り出しています。

サトーホールディングス

ラベルプリンター大手のサトーホールディングス。同社は全社員に「仕事のやり方基本要綱」を配布しています。それは失敗の教訓を全社で共有し、語り継ごうとする仕組みです。

サトーホールディングス「仕事のやり方基本要綱」

サトーホールディングス「仕事のやり方基本要綱」

その中身は「やらぬ前から『出来っこない、やってもしょうがない』という負け犬にはならぬこと。」「他と違うことをやる。同じ事なら先駆けてやる。」「変化を喜ぶ心。」などがあります。そして企業理念を浸透させる部署を作ったり、研修を行ったりするなどして、企業文化の醸成に努めています。

私の感想

失敗を失敗にしない信念が重要だと学びました。

タニタや宇部興産やNECの例など、失敗した理由を分析し、それを解決する手を打つという当たり前を続けています。この失敗した理由の分析が、僕の弱いところだと感じました。自分の仕事で「これは必ずやり遂げるべき」、「社会のためになることである」というところまで業務をかみ砕けていないなとも痛感しました。その信念があれば、失敗しても困難な壁でも打ち破ろうと行動します。しかし、現在そこまで改善活動に落とし込めていないということは、使命感が薄いとわかりました。

使命感が薄い理由として、業務における問題・課題を発見する意識が低いと気づきました。その意識を高める方法として、改善活動が評価される仕組みを作るという外発的動機づけの面と、改善自体に達成感を得るような内発的動機づけを行う必要があると思います。内発的動機づけができれば、優秀なサラリーマンだと頭ではわかっています。しかしながら自分の貧乏性がでてしまい、素直に心を入れ替えることができません。ほかの人はどのようにサラリーマンで内発的動機づけを燃やしているのでしょうか。。

もしくは動機など考えず、脳筋となって目の前の業務を完璧にこなす、この姿勢でゴリゴリと進めるほうが自分には合っているのかなとも思いました。

最後に:日経ビジネス 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。