27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『どうなってる?Panasonic』を読んで

日経ビジネス表紙「どうなってる?Panasonic」

2020/1/27発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただきありがとうございます。

今回は2020年1月27日発行分の日経ビジネス『どうなってる?Panasonic』を読んだ感想をまとめます。

 

ぜひご覧ください!

 

目次

 

Prologue:広がる「改革」への温度差

「門真発想ではもう限界」

2017年6月19日の会見で、パナソニックの同社内分社であるコネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行社長が発言した言葉です。その言葉通りCNS社は2017年10月に東京にオフィスを移動しました。

「門真発想」とはPanasonicの本社やほかのカンパニーがある門真市で萬栄している発想のことを指しています。つまり大企業病に侵され、社内の風通しは悪く、危機意識が浸透しづらい社内風土になっていました。

CNS社は東京でオフィスを構え、18年末に「カルチャー&マインド改革推進部」を立ち上げるなど、風土を変えるための手を打ってきました。その結果、現在では「別の会社かと思うほど」社内風土はよくなっています。樋口社長は「多様な人たちが集まり、会社内の風通しが良ければ、客観的に正しい道は見いだせる。だが、どちらもなかった」と振り返ります。

Panasonicは現在グループ全体で27万人をかかえる大企業。母体が大きいため、改革の方針を合わせることは簡単ではありません。経営陣と現場で広がる「改革」への温度差。19年5月に打ち出した22年3月期までの中期経営計画では、成長事業を新しく3つ打ち出しました。快適な生活空間を提供する「空間ソリューション」、あらゆる現場の生産性を高める「現場プロセス」、競争力の高い部品を核とする「インダストリアルソリューション」の3つです。そして、これまで柱の1つだった車載向け事業は再挑戦事業に格下げしました。

就任8年目となる津賀社長。社内外から将来像への不信感が指摘されており、Panasonicの成長をどのように描くのか。社長インタビューの中で確認していきましょう。

Part1:社長インタビュー(津賀一宏氏)

2020年3月期の見通しについて

目指すべき方向である、売り上げを伸ばし、営業利益率で5%出すという視点においては不本意な結果になっています。

その要因として外的要因と内的要因があります。外的要因は米中貿易摩擦がありました。利益率の高い中国関係のビジネスがダメージを受けています。一過性のことであると考えていますが、この問題がいつまで続くかわからない。不本意な数字の原因の8割はこの外部要因にあると考えています。

一方で内的要因ですが、車載事業の拡大が予定通りの進捗になっていません。事業拡大にむかっていますが、足元では開発費の増加や米テスラ向け電池ビジネスのオペレーション力の不足などの影響で赤字になっています。ただしテスラ向けは来期は黒字転換するめどが立ちつつあります。利益面で厳しくなっている角型電池はトヨタとの協業の立ち上げフェーズにはいっており、年々収益改善に向かっています。

2012年の就任からの振り返り

2012年就任してから最初の3年は思い切ったリストラでV字回復につながりました。まずは構造改革をして赤字事業をなくし、事業部制を導入して課題を見えるようにしました。それからBtoBへシフトする視点で産業別のカンパニー制を導入しました。その後成長戦略として成長できる分野に投資しました。その投資先の1つが車載事業でした。

車載事業については売上が1兆円から2兆円近くまで増えたので、間違いなく成長しました。ただ車載電池については、納得のいく進め方ができましたが、ほかの車載部品が実力以上のスピードで進めてしまいました。

一方で既存で安定的に成長できる、もしくは維持できると思っていた事業で痛みが出てきています。それはBtoCの家電領域だけではなく、ほかの事業においても見受けられます。しかしながら、すべての事業に目配りしながら、全社があるべき姿に向かっていけるようコントロールはできています。

パナソニックの将来の姿

パナソニックの強みは幅広い分野における深い専門性と、100年企業というブランドです。その総合力は世の中探してもそう簡単には見当たらないでしょう。欧米的には儲かる事業に特化してあとは捨てるのが良い経営とされていますが、パナソニックは人の暮らしに密着しつづけることを踏ん張っています。ただ従来通りのビジネスをつづけるだけではなく、従来の強みにイノベーションをかけ合わせることで、モノではなくコトを提供しようとしています。従来の強みがないと「Why Panasonic?」ということが説明できないので、総合力は可能な限り維持しながら、掛け算ができるような形に引き算することを目指しています。

掛け算の仕方については、社員からは「分からへん」と言われます。しかし100年企業である以上、先の10年20年でへたったら困るわけです。そのため、グーグル出身者の松岡陽子さんをヘッドとするチームを外部から取り入れて、コト発信でのビジネスを考えていっています。変革についてわからない人は今のやり方の延長で収益を確保する役目を担います。将来的に今の連続的な取り組みと非連続的なイノベーティブな取り組みのどっちで仕事をするかという選択が増えればいいと思います。

Part2:再成長へのもがき

Panasonic モノからコトへのビジネスモデル変革

Panasonic モノからコトへの変革

世界の家電市場では中国・韓国勢が台頭してきています。さらにシェアリングエコノミーやサブスクなどモノからコトへ市場ニーズが変化したり、デジタル技術の革新など様々な外部環境変化が従来にないスピードで襲ってきています。残念ながら現在のPanasonicはその変化に対応できているとはいえません。

その中で再成長への具体的なもがきを紹介します。

門真市のPanasonic本社の一角。大小のディスプレイが映すのは、構内を走る自動運転車の映像や位置情報です。ゴルフカートをベースに開発したEVとなっており、次世代移動サービスMaaS(Mobility as a Service)の実験を兼ねています。完成車というモノを売るわけではなく、移動というコトを提供するビジネスモデルを提示するため、従来にないような失敗から学ぶ手探りな進め方を行っています。

また19年4月に「中国・北東アジア(CNA)社」を社内カンパニーとして設立しました。そのCNA社に商品企画から設計開発、製造、営業・マーケティングまでを一気通貫で担える役割を持たせました。さらに日本のような産業別カンパニーがなく、住設機器や家電など、あらゆる商材を顧客視点に立って提供できるようにしました。その結果、交渉から7か月で数十億円の案件をまとめあげるといった、スピード感のあるビジネスを展開できるようになりました。

家電においてはグーグルでスマートホーム事業「ネスト」を率いていた松岡陽子氏とその同僚10人を招集し、コトを売るビジネスへの変革を託しました。顧客が求めるなら自社製品にこだわらずにビジネスを展開する姿勢も見せ始めています。丸の内に19年7月にオープンしたシェアオフィス「ポイントゼロ マルノウチ」。空調王手のダイキン工業、オフィス家具の岡村など9社と連携して開設しました。このような場を通じて、他社との協業を行いながらビジネス創出を目指していきます。

Part3:成長阻害の4つの「病」

Panasonic 売上・損益推移

Panasonic 売上・損益推移

Part2で成長の種がいろいろと蒔かれていることはわかりました。しかしその芽がでない原因を本Partで説明します。

①長期戦略の見立ての悪さ

1点目は成長戦略のまずさです。2000年に就任した中村社長時代にプラズマパネルなどの電子部品やサービス事業を成長事業に据えました。しかし、その戦略がうまく全社で推進する体制ができていませんでした。例を挙げるとパナソニックが開発していた半導体「ユニフィエ」。当時の半導体は電子機器個別にLSI(大規模集積回路)を開発していましたが、Panasonicのユニフィエはその多様な機器で使えるものでした。しかしPanasonicはブラックボックス戦略を選択し、結果成長戦略に乗せることはできませんでした。あの時ユニフィエを他社にも売り込み、業界標準にできれば半導体メーカーとしてさらなる成長が見込めていた線もあったと、当時の経営企画部の元社員は漏らします。

また市場がなにを求めているかから考える発想が弱かったと、当時副社長を務めた古池進氏は振り返ります。車載事業に1兆円の投資枠を確保し参入しましたが、自動車機器メーカーの技術やコストの要求水準を満たせずに収益の足を引っ張る形になりました。自社の実力を過信し、規模の拡大にまずは走る自社中心の考えが、現在の車載事業の赤字を生み出したといえるでしょう。

②社内の危機感の薄さ

中村社長時代に大きな構造改革としてリストラを断行したが、実は98年には約3万人の余剰人員がでていることが試算できていたと、元社員が吐露します。白物家電や、オーディオ、エアコンなどの製品力低下による経営悪化が原因でしたが、その改革を結局2000年まで先伸ばしにすることになりました。

また2001年3月期の31万7000人いた従業員は、2003年3月期には28万8000人に大きく減ったのにかかわらず、残った社員にも危機感は強くありませんでした。その背景にあるのがグループ再編です。当時パナソニック電工や三洋電機を完全子会社にしました。その二社の統合前の売り上げは合わせて3兆円です。しかし、子会社化されてもPanasonicの売上高はほとんど増えませんでした。強い子会社を取り込んだことによって、本体の弱体化が表面化せず、結局社員の中でも危機感が募ることがないまま今まできてしまっています。過去の強かった成長体験を捨て、危機意識を持った社員の育成が課題です。

③縦割り組織の弊害

成長事業に位置付けられた『空間ソリューション』。この事業を巡って、ライフソリューション社とアプライアンス社のぶつかりがあったようです。空間ソリューションとは、店舗やオフィス、住宅などの空間を顧客に合ったデザインで、照明や家電などを配置し、生産性を上げることを目的とした事業です。それに対し、空間設計を主にするライフソリューション社と家電などを供給するアプライアンス社が自分の領域であると手を挙げました。結果話はまとまらず、それぞれの事業で行い、共生をめざすという中途半端な状態で議論は終わりました。

高度経済成長期には重複があってもグループ会社が自由に動き、競争の中で業績を拡大していくことはよくあることでした。重複事業によりリソースがまとまらないため、成長力が弱くなるという弊害が目立つようになっています。

④頻繁な組織改革

組織の統廃合が頻繁に行われたことも成長を阻害した一因になっています。例えばシステムキッチンやシステムバスなどの住宅向け設備。もともとはPanasonic本体とパナソニック電工の2社がそれぞれ事業を手掛けていました。お互いのシェアは合わせて15%ほど。しかし統合した結果、重複する商品ラインナップをなくしたことで、他社へ置き換えできる隙間が生じ、結果としてシェアは落ちて行っています。頻繁な統廃合は組織内の外側への問題に対する打ち手が遅れてしまうデメリットがあることを認識すべきです。

Part4:変革の鍵は継続と徹底

マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏。彼はマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏から「彼のおかげでウィンドウズ中心主義のアプローチから離れることができた」と称賛されています。ナデラ氏はOSを売り切るシステムから、クラウドを軸にサービスで儲ける企業へ変革させました。

日立製作所もモノを売るビジネスからコトを売るビジネスに脱却した企業です。2009年3月期に7873億円という巨額の最終赤字を計上した同社は、ITとインフラ事業を融合させた「社会イノベーション事業」への注力を打ち出しました。独自のIoT基盤「ルマーダ」を軸に、顧客の課題を解決するサービス売りへの事業転換を進めており、ルマーダで事業の競争力が高められないコト事業については売却を進めています。その例として昨年末に昭和電工に売却した日立化成は記憶に新しいかと思います。

ドイツのシーメンス。同社では10年以上先の未来を絵に記し、それに沿って戦略を組み立てます。その「ピクチャー・オブ・ザ・フューチャー(未来の絵)」は技術部門の出身者などからなる10人以上の専属チームを発足させ、最低でも半年、長ければ9か月をかけて策定します。現在の中核事業であるIoT関連のデジタルインダストリーズ事業も2002年に作成した絵がベースとなっています。

ソニーは事業ポートフォリオを大胆に入れ替えずに、改革に成功しつつある稀有な例といえます。その推進のもととなっていることは、明確なビジョンの共有と技術へのこだわりです。前CEOの平井氏は「感動(KANDO)」、現CEOの吉田氏は「人に近づく」とわかりやすい言葉でビジョンの浸透に努めています。さらにテレビ事業では画像処理や画面を振動させて音を出す技術、カメラ事業ではイメージセンサーの性能向上などこだわり抜いています。

Panasonicは今後の改革として「組織の見直し」「外部資源の活用」「人事や賃金にかかわる制度の見直し」という3つの軸で進めます。社長交代などがあってもその改革を継続、徹底できるかがカギになっていきます。

私の感想

Panasonicという大企業のかじ取りの大変さが身に染みる記事でした。

創業者の松下幸之助氏は「企業は社会の公器である」という有名な言葉を残しています。意味は企業は社会によって生かされているあずかりものであるため、私利私欲を肥やす道具ではないということです。前日の雇用クライシスの読書感想でも述べましたが、約28万人の従業員の生活および付随するお取引様の生活を預かっていると考えると事業再編やリストラが後手に回ることもわからなくもないと感じてしまいます。

働きアリの法則もあるように、28万人も従業員がいればやる気のない人、変化が嫌いな人などが企業のなかに大勢いることだと思います。その全社員に危機感とミッションを持たせるためには、わかりやすいビジョンとわかりやすい使命感および仮想敵を掲げることが一番だと思いました。その意味では現在の津賀社長のインタビューにある「今のままの延長線で続ける人」を容認するようなやり方は、あまりにも優しすぎるのではないかと感じます。

また私の会社でもモノからコトへの変換を考えているため、社会の大きな流れとしていかに先を制すかが大事であることが再度わかりました。ただ現時点では他社の行っているサブスクリプションなどを後追いで行うぐらいしか手が打てていません。事業戦略や経営企画の人々が日々知恵を絞っていると思いますが、社内公募などで意見を投書できる場面があると社員の当事者意識も芽生えるのではと考えました。

最後にPanasonicの本日(2020/4/28)時点の株価をチェックしました。797円/株です。

バルミューダなど面白い家電が出てきていたり、本記事ででてきた中国の分社が活躍すればまだまだ面白い企業だと思います。松下幸之助氏の後を継ぐ、中興の祖のようなカリスマ性のある社長がでてくることを私は期待します!

↓Panasonicの新中期戦略資料です。

https://www.panasonic.com/jp/corporate/ir/pdf/20190509_vision_j.pdf

最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。