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今回は2020年6月29日発行分の日経ビジネス『どこへ行く日産』を読んだ感想をまとめます。
ゴーンショックから株価も業績も右肩下がりの日産。『技術の日産』と呼ばれていた栄光を再び取り戻すためにはどうすればよいでしょうか。
今回も長くなりそうなため2部構成でまとめさせていただきます。
ぜひご覧ください!
目次
PROLOGUE:内田新体制の使命
19年度日産は6712億円の連結最終赤字に転落しました。6000億円規模の赤字は20年ぶりです。生産能力720万台に対し、19年度の販売実績は493万台に留まりました。
日産が危機に直面するのは今回で3度目です。1度目は1990年代後半。バブル崩壊後もコスト度外視のクルマ造りを続けたことが原因でした。2度目の危機はリーマン・ショック時の2008年。しかし、いずれの時も危機を救ったのはゴーン氏でした。
11年度から6か年の「日産パワー88」では営業利益率8%、市場シェア8%を目指していきました。そしてルノー日産の日仏連合に、途中で三菱自動車も取り込むことで、17年1~6月のアライアンスの世界販売台数はトヨタ、フォルクスワーゲンを抑え世界一の座を獲得するまでに成長しました。
しかし17年度をピークに状況は悪化。北米市場での販売奨励金と収益率の低いフリート(大口顧客)販売に依存した体制になっていました。さらに新興国市場を中心に生産増強に力を入れ、新車の開発が遅れます。無資格の検査員の問題やゴーン氏の逮捕、そしてコロナウイルスの蔓延と問題が畳みかけるように日産を襲います。
なぜ日産がここまで堕ちてしまったのか。原因をPart1でみていきましょう。
PART1:日産の課題
日産の栄光が続かなかった理由を本章でまとめます。
課題その1:車齢の長さ
車齢とはフルモデルチェンジしてからの期間のことをいいます。業界平均は「4年」と言われている中で日産の車齢は「5年」を超えるものでした。
理由はシェア拡大のための生産能力増強に投資を割き、新機種の開発が遅れたためです。その結果、販売代理店では売る車が軽自動車のみとなり、SUVなどの主力品は他メーカーにシェアを奪われていきました。
リーマンショック後の自動車産業は転換期を迎えていました。新興国向けに対しては今までと違う車種や低コストなものづくりが必要となります。自動車メーカーは開発体制の立て直しが課題となっていました。
トヨタは過去最高益を出した14年度に「意志ある踊り場」を宣言。開発工数や設備投資を大幅に削減する新たな設計・開発手法「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」によって、クルマ造りをゼロから見直し、開発期間を2割以上圧縮することを狙いました。さらに16年にダイハツ工業の完全子会社化を決めたのも、低コストの開発・生産ノウハウを取り込むためのものでした。
課題その2:販売奨励金とフリート(大口顧客向け)販売
新車の供給が途絶える中、販売台数の目標を達成するために増えたのが販売奨励金とフリート販売です。その結果、北米部門の18年度売上高営業利益率は1%程度と低水準になっています。アメリカのトヨタのSUVの販売奨励金が0~1500USD、一方の日産は1500~3000USDです。新車の約1割が値下げ可能な状態になっているため、「安売りのクルマ」として見られ、ブランドイメージも毀損します。
日本においても新車は三菱自動車からOEM供給を受けるデイズが2019年に投下されたぐらいで、主力のノート、セレナ、エクストレイルなどはライバルの新モデルにシェアを奪われています。
課題その3:アライアンスの機能不全
日産が設備増強に走り、投資余力がない場面においてルノーが新車を供給するような有機的なアライアンスの協力ができていれば話は違いました。もともと狙っていたルノーとの開発の効率化が思うように進まなかったことも、日産の車齢の長さの原因と言えるでしょう。
ただし、現在日産では立て直しを行っている最中です。具体的にはモデル数を69種から2割削減し、投入サイクルを早めます。さらにアライアンスの枠組みも、得敵の地域や分野で「リーダー」「フォロアー」と役割に差をつけ、日米中の市場を中心に今後18か月で12車種を投入します。この秋にアメリカでローグ(日本名エクストレイル)の新車を投入予定です。その反応次第で風向きが変わる可能性があります。
PART2:日産復活の鍵
「技術の日産」。e-POWERや運転支援機能「プロパイロット」など、独自のよい技術はまだ日産の中に残っています。しかしながらそれを新車に投入する数は直近では他社より見劣りします。
現に、日産の販売平均単価は08年266万円/台に対し、18年で219万円/台。年あたり1.9%下落したということになります。一方のトヨタは08年287万円に対し、320万円/台。1割以上高めた計算になります。安全設備や燃費性向上、車内の快適性などの付加価値をつけてきました。
自動ブレーキシステムの先駆者も日産です。日産の技術力にはまだまだ巻き返しができるほどの力があります。
ここまでの感想
自分のメーカーでも開発期間がやたら短くなってきたと最近思っていましたが、自動車メーカーでもそのような流れがあったことを知り、腑に落ちました。
また悪くなることはわかっていても部分最適に走ってしまうところに独裁的リーダーシップの限界を感じました。今回の記事を読む限りでは車齢の長さがすべての元凶であるように感じます。つまりそれだけ新車の販売への影響が大きいこともゴーン氏およびほかのメンバーは気づいていたと思います。調子のよいときにこそ、将来への布石を打つことが良い会社の印です。日産の体質という言葉で片付けることは簡単ですが、自分自身や会社においても歯止めがかかるよう、この部分は考えたいと思います。
また日産の株価は現在相当に低く、自分の食指が動きます。笑 ただしまだ日産が投資すべき体制の企業かと言われるとNOだと思います。投機の材料としては面白いですが、投資としては避けるべきですね。自分の大切なお金を投資するため、本当に良いと思えるまで会社研究をおこない、これからも株式の購入を行おうと考えるきっかけになってくれました。
次回は『どこへ行く日産』PART2を更新します!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
次回のブログでお会いしましょう。