27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】『祈りと経営』を読んで

祈りと経営

祈りと経営

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は森健さん著『祈りと経営ーヤマト「宅急便の父」が闘っていたものー』の感想をまとめます。経営者としての小倉昌男さんではなく、家族や引退後の葛藤にスポットを当てた素晴らしい本でした。ぜひご覧ください!

 目次:

本の概要

本書はライターの森健さんが、生前の小倉さんとゆかりのあった人物に話を伺いながら、ヤマト運輸引退後に障害者支援に力を入れた小倉さんの歩みと、家庭人としての小倉さんの姿を描いたノンフィクションです。下記8章構成になっています。

  1. 第一章 私財すべてを投じて
  2. 第二章 経営と信仰
  3. 第三章 事業の成功、家庭の敗北
  4. 第四章 妻の死
  5. 第五章 孤独の日々
  6. 第六章 土曜日の女性
  7. 第七章 子どもは語る
  8. 第八章 最期の日々

ヤマト運輸の会長を退いたのち、小倉さんは私財を投入して障害者のための財団を設立しました。障害を持った方が月10万円の給料がもらえる会社をつくるため、培った経営能力と資本を使います。小倉さんは若くして結核を患ったことがきっかけとなりクリスチャンになりました。そして同じクリスチャンの妻玲子さんとの間に娘と息子を1人ずつ授かりました。しかし、家庭面では手のかかる娘さんに振り回されます。また、玲子さんが59歳の若さで亡くなったことが、障害者支援財団設立などの動きにつながりました。最愛の妻に先立たれ、孤独な日々を送る中、行きつけの銀座のホステスさんが日常のお世話をしてくれるようになりました。一時娘夫婦と暮らしていましたが、旦那さんが外国人だったためアメリカに移住する決断をすると、寂しさを埋めるように、ホステスの方との距離が近づいてきました。だんだん病気が重くなっていく小倉さん。彼は自分の最期を悟って、娘のいるアメリカに80歳で行き、孫たちと幸せな数か月を過ごしてなくなりました。

元々小倉昌男さんの経営者としての伝記として本書を手に取りました。しかし内容を読み進めるごとに経営者としての厳格な小倉さんのイメージが、共通の悩みをもつ一人の男性として見つめることができました。

仕事と家庭のバランス

宅急便という今の世の中に欠かせないサービスを作った小倉さん。「サービスが先、利益が後」という信念に従い、世のため人のための改革を行ってきました。

しかしその間も、妻と娘と息子、さらに妻のお母さんや自分の父母含めた家族関係の課題については、中々解決できませんでした。娘さんは11歳のころからいわゆる「キレる」ような言動が目立ち始めます。小倉さんが亡くなった後、娘さんは「境界性パーソナリティ障害」とわかり、治療薬も合うものが見つかりました。

小倉さんは若いときは仕事人間で、家庭での存在感はほとんどなかったと、息子さんは語っています。キレる娘とそれに対し、怒る妻。小倉さんは仕事から帰ってきてケンカに遭遇した際も両者をなだめるだけでした。娘はその後も拒食症や不眠症に悩まされ、妻はそのストレスから逃げるため、深酒をするようになりました。そして、大人になってからも娘の自由奔放さに夫婦ともども翻弄され、娘の黒人男性との国際結婚に心ふさがれるようになりました。

小倉さんは娘に対する自責の念もあり、会長を引退後は娘家族と過ごすことが多くなります。子育ての時間は戻ってきません。もちろん仕事においても逃してはならないタイミングがあると思います。しかし、最も身近な人を犠牲にしてまで行うべきことがどれほどあるのでしょうか。常に当たり前にあるような家族との時間の意義と優先順位を改めて意識しようと思える内容でした。

感想

仕事への取り組み方よりも、人生の生き方を考えさせられる良い一冊だったと思います。仕事と家庭。両方ともに完璧にできるようなスーパーマンはいないということを、小倉さんの生き方から学べました。日本人は仕事のウエイトが大きいと思います。自分も男は稼いでくることが一番の仕事で、そのために残業することは家族のためになると思っていました。しかし、今はいいかもしれませんが、人生のタイミングにおいて、家庭への時間をさらに確保すべき時間がくると思います。そのタイミングを逃すことのないように肝に銘じておこうと思います。

また小倉さんがつくった宅急便というサービスは、日本の1億2000万人の人の生活を向上させました。家庭からのちょっとした荷物がすぐに届くことによって、笑顔になった人や回数は数えきれないことでしょう。しかし、その陰には家庭での妻と娘、息子の葛藤がありました。インド建国の父であるマハトマ・ガンディーも、自分の息子には学費などを捻出せず、一方で国中を巻き込む活動を行いました。基本的人権の立役者のルソーも、自分の子どもは孤児院に入れながら、現在60億人が享受している基本的人権の思想を確立させました。どちらがよくて、どちらが悪いという単純な二元論では人は語れないものだとつくづく感じました。自分が選択するタイミングで、後悔の無い決断ができるように、今は多くの古典や名著に触れ、自分の判断軸を確立させたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。