27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『イノベーションの新作法』を読んで

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2020/4/6発行分 日経ビジネス表紙

今回は2020年4月6日発行分の日経ビジネス『イノベーションの新作法』を読んだ感想をまとめます。

外部との提携でのイノベーションではなく、社内の種を活用するイノベーションの新作法とは?

ぜひご覧ください!

 

目次

 

Part1:オープンイノベーションに限界 革新の種は社内の特許にあり

イノベーション不足と言われて久しい日本企業。

近年ではそれを打破するべく「オープンイノベーション」が声高に叫ばれてきました。多くの日本企業は、自社の技術を他社の視点でとらえることで新しい活用や価値が生まれることを期待していました。しかしながら、実際には成功例をあまり聞きません。

そんな中オープンイノベーションの本場である欧米諸国の企業を見ると、実は今の時代もイノベーションは社内の種から生まれているのです。サムスン、ジョンソンエンドジョンソン、アルファベット等々名だたる企業が、社内の種を活用してイノベーションを起こしています。

「社内の種」とはすなわち社内特許(技術)。そしてカギを握るのは社内の種の扱う知財戦略です。

ドイツの一大メーカーであるシーメンスも、知財部門を戦略部門と位置付けています。知財部門と役目として、特許を出すだけではなく、特許のビジネス化まで検討することを求めているのです。

 

日本企業もイノベーションを起こす種はあります。ただ、その埋もれた技術をうまく発掘し、育て、製品化につなげることができていないこと、それが問題でした。

 

Part2:埋もれた技術を蘇らせる4つの特許活用戦略

次に社内の種をうまく活用できた事例を見てみましょう。

ポイント①専門部隊が徹底捜索

生理用ナプキンを製造しているユニ・チャーム。同社がスポーツや日常で動きが多い女性をターゲットにした戦略商品を発表しました。そのカギとなる「2つの素材を適度に配合する技術」を発掘したのが、同社の知的財産本部特許グループでした。

ユニ・チャームの知財部門はシーメンス同様「出願だけでなく、自社の発明を発掘する」部門です。10年ほど前から自社の特許の強みと弱みを分析し、経営に活かす取り組みを行ってきました。そして今では商品開発段階から特許部門が入り込み、企画などの関係部門と「健全なケンカ」が行われているそうです。

meijiでは19年4月に特許部を知財戦略部に改組し、研究所と並ぶ位置に格上げしました。社内の埋もれた技術をスクリーニングし、活用するすべはないかを考える専門組織を作ったのです。そしてその組織の活動によって、製造工程を大幅に改善できる方法が見つかっています。

特許庁によると日本企業がもつ有効な特許数は約166万件ですが、半分ほどは休眠状態です。そのような社内の埋もれた種を探す専門部隊の存在が、イノベーションを生み出す仕組みの一つになります。

 

②買収先にも目を向ける

旭化成が18年9月に買収した自動車内装材大手のセージ。旭化成は買収早々にセージの技術を棚卸を行いました。そして同時にセージの競合他社の開発動向も分析しました。その結果、競合他社の技術動向がセージ以上に広いことがわかり、旭化成の技術を持ち込めることが判明したのです。その結果として現在セージに旭化成の技術をつかった新事業が準備されることになりました。

また自動車部品メーカーのカルソニックカンセイが買収して誕生したマレリでも、買収先主導の技術の棚卸が行われました。担い手はカルソニックカンセイの「グローバルテクノロジーセンター」です。事業部を横ぐしでみることができる第三者的な立ち位置の組織であるため、横断的な提案が可能です。

上記2社のように、グループ会社や統合した企業の技術に対しても細かく目を向ければ、思わぬ革新の種に巡り合う確率が上昇するでしょう。

 

③他社の特許も確認する

他社の特許を確認し、自社の強みを活かしているのは、精密機械大手のリコーです。リコーは現在コア技術である半導体レーザーをセンシング領域に応用する技術開発を進めています。技術開発を進める優先順位付の判断材料として、リコーは競合の他社の特許を分析し、自社の知的分析が強い製品を判断してます。

また富士フィルムの化粧品事業への参入も他社の特許を確認してできた動きでした。他社の特許を分析すると、写真フィルム用途で保有する特許が海外の化粧品大手の特許にも引用されていることがわかりました。

自分たちの気づいていない応用方法を見つけるために、他社の特許分析も大きな助けとなります。

 

④他人の視点を取り入れる

オムロンが19年11月の中国国際輸入博覧会で「アグリオートメーション」と呼ぶシステムを披露しました。カメラや温湿度センサーなどを活用して野菜の栽培状況を把握できるシステムです。そのシステム開発のメンバーの一人だったのが京都のスタートアップ、オーガニックnicoでした。

上記の共同プロジェクトとオープンイノベーションの決定的に異なる点は資本提携をしていない点です。あくまでオムロンがつくるプロジェクトメンバーの一員として「対等な立場で」きてもらいます。オムロンではチーム作りでのミスをなくすため、少人数のプロジェクトは4種類の人材で構成するようにしています。

  • ビジョナリー:社会課題を解決するアイディアを生む人材
  • スペシャリスト:特定領域の専門知識や課題を知る人材
  • アーキテクト:事業を設計する人材
  • リーダー:チームをけん引する人材

他社の人間を招いて開発チームを作ることもイノベーション創出の打率を上げる1つの対策となるでしょう。

 

DATA編:強い企業ほど「社内の種」(特許)を育てている

データ編として世界と日本の特許ポイントの高いランキングを見てみましょう

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グローバル版特許ポイント順位

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日本版特許ポイント順位

本データの特許ポイントとは、特許の引用数をもとに数値化したものです。特許出願年度が古いものは新しいものよりも引用数が多くなる傾向にあるため、相対化をしています。

本データを見ると、イノベーションを起こしている企業はやはり特許ポイントも高いことがわかります。すなわち強い企業こと社内の種を育てているのです。

 

Part3:革新力増強には知財を経営の中心に

イノベーションを起こす強い企業になるためには知財戦略のある経営が不可欠です。

三菱電機は90年代の半導体ライセンス料支払いの苦い経験を忘れていません。その三菱電機がとる知財戦略とはオープン・クローズ戦略です。

三菱電機は3つの戦略に自社技術を分別しています。

  1. 他社への技術提供による標準化
  2. 特許権利化による囲い込み
  3. コア技術のブラックボックス化

アップルもオープン・クローズ戦略をとっている企業の一つです。部品の調達先として大切なサムソンに対し、タッチパネルの操作性を模倣したと訴えたことは、自社のコア技術の侵害になりえると判断したからでしょう。

日本の企業も知財戦略を含んだ経営を行うため、知財部門の役目のリフレームが必要不可欠になるでしょう。

 

私の感想

知財部門の役割・あるべき姿が理解できた有意義な記事でした。

文系出身の私は特許出願などとは無縁のキャリアを歩んでいましたが、会社全体を考える上で特許の重要性を理解できたことはよかったです。

本雑誌の中で特許のデータ分析において、ヒートマップを使ったグラフがありました。これもIoTによって今まで把握できなかった特許の全貌をとらえることができるツールだと思います。そして強い企業はこの技術的革新を利用し、知財戦略を会社経営の重要な柱として組み込んでいることに気づきました。

自分の会社についてまだまだ理解が浅いため、知財戦略までは想起することができませんでした。もちろん何もやってないわけではないと思いますが、ただの特許出願舞台なのか、はたまた特許を分析し次のイノベーションの一助となる部門なのか確認したいと思います。

会社以外もそうですが、ルールを知っているものが勝つ世の中です。

まずは私個人の範囲から関係するルールを熟知することから始めたいと思います。

 

また過去の埋もれているデータや知見から再度洗いなおすことの大事さを再認識することができました。わたしも日々の仕事は正直やりっぱなしが多いです。その中の細かい工夫やコツを意識的に拾い上げ、さらに効率的な仕事ができるよう自省をしていきます。

 

最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたらぜひコメント欄で教えてください。