今回は2020年4月20日発行分の日経ビジネス『楽天の岐路』を読んだ感想をまとめます。
楽天モバイルで独自回線を立ち上げ、携帯産業の第四極として注目されていましたが、スタートの状況は上々とは言えません。さらに楽天市場の出店者への送料負担を求めたとして公正取引委員会の優越的地位の乱用の疑いがかけられました。
日本のネットビジネスの巨人、楽天は今後どうなっていくのでしょうか?
ぜひご覧ください!
目次
- Part1:「第2の創業」前の混乱の連鎖
- Part2:携帯事業の行方
- DATA:楽天の事業展開
- Part3:楽天市場での試練
- Part4:雑草魂を取り戻せるか
- 私の感想
- 最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介
Part1:「第2の創業」前の混乱の連鎖
携帯事業を「第2の創業」と喧伝している三木谷社長は、4月8日にデータ通信がほぼ無料の「Rakuten UN-LIMIT」2,980円/月というプランを発表しました。従来の大手キャリアであるドコモ、au、softbankの値段の半額程度になっており、寡占状態に風穴をあけて携帯料金を下げていくのではないかと考えられていました。しかし、申し込み者は想定を下回る状態で、自社回線以外の高速通信の容量引き上げを行い、早くもテコ入れに動いています。
また1月に新体制を発表し、元ソフトバンクの渉外部門で活躍していた徳永順二氏を楽天モバイルの副社長に組み込みました。しかし、3月31日付で楽天モバイルを退職し、4月1日付で建築業界向けに金融分析プラットフォームを提供するランドデータバンクの社長に就任しました。
他のキーパーソンの流出もあります。楽天の格安スマートフォン事業を長く取り仕切ってきた大尾嘉氏も楽天を去った一人です。大手通信会社から転職した社員も、携帯事業のもつインフラとしての責任を軽んじているような雰囲気を感じ、将来性に不安を覚え退職しました。
また楽天市場では公正取引員会が16年ぶりに緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てを行いました。理由は3,980円以上買い物した顧客に対する送料無料を全店舗に強いたとし、その行為が優越的地位の乱用にあたる疑いがあったためです。
携帯事業の不発、社員の流出、パートナーとの関係悪化など逆風吹き荒れる中楽天はどこに向かっていくのでしょうか。
Part2:携帯事業の行方
楽天はサービス発表当日の4月8日に、見直しをしたプランを同時に発表しました。
現在楽天の自社回線は東京23区と大阪府、愛知、神奈川など都市圏の一部だけです。それ以外の地域ではKDDIの回線を利用することで補填していました。そのKDDI回線の制限を従来の2ギガから5ギガまで上げる発表をしたのです。
現在楽天はKDDIに対し、1ギガの利用に対し、500円支払う取り決めになっています。つまり5ギガにあげつつ、価格を維持することは楽天モバイルの収益性を悪化させることにつながります。しかしそれでもシェア獲得を選んだ楽天モバイル。19年12月期連結決算では営業利益が前年比57%減、自己資本比率も15.5%から8%に下がっています。
楽天の動向に対し、3大キャリアは焦りを見せていません。
その理由が、楽天が基地局に選んだ「仮想化」にあります。従来の基地局は通信を制御するソフトとハードが一体で販売されており、ファーウェイ、ノキア、エリクソンという3社のうちから機器を選ぶことが一般的でした。(3社の通信機器シェアは約8割に当たります)楽天は仮想化技術を利用し、ハードであるサーバーとソフトを分けた技術を採用しました。仮想化によって寡占状態の高価なハードではなく、安価な汎用サーバーを利用できます。さらに5Gへの移行もソフト部をアップデートするだけで対応可能である有用性の高い技術です。そのような最新の技術ですが、まだICチップの性能が追い付いていないとされています。サーバーの負荷が高まり、膨大な電気代もかかってしまっているようです。実際にソフトバンクでは仮想化のソフトを検証しましたが、採用を見送りました。
装置産業である携帯事業において、体力の劣る第4極が生き残るすべは仮想化技術にかけるしかありませんでした。ソフトバンクが携帯事業に参入したときはボーダフォンの土台がありながらも品質課題等の問題に直面し、伝家の宝刀「iPhone」の独占販売でなんとかシェアを拡大していきました。体力勝負になりがちな携帯事業において、楽天はどのように生き残ることができるでしょうか。
DATA:楽天の事業展開
2019年12月期の業績は売上高1.26兆円、営業利益727億円の楽天。23年前の創業当時に手掛けたECをはじめ、現在では楽天トラベルの旅行業や楽天カードや楽天銀行などのフィンテック、さらに格安スマホの楽天モバイルなど、コングロマット(複合企業)に成長していきました。
しかし企業価値を示す時価総額は2015年に3兆円まであがりましたが、現在は1兆円まで下がっています。それはコングロマット特有の安見積もりのせいだけではありません。携帯事業や物流構築など巨額の投資を伴う企業成長が待ち望んでおり、その成功が見えづらくなってしまっています。
Part3:楽天市場での試練
楽天市場からの退店が続いています。近年退店したお店はワークマンやディズニーストア、シューマートなど。理由は楽天市場の店舗維持コストの高さにあります。
EC昆明期は楽天市場が国内EC市場一強でしたが、Amazonやヤフーショッピングなどの対抗が現れたり、自社ECを行う企業が増えてきました。一例ですが、アマゾンの店舗維持コストが10%ほどですが、楽天は15%ほどという話も聞きます。
また出店者からの不満はほかにもあります。楽天から送料無料化を押し付けられることへの不満や、罰金請求がくることに対して、「独裁者のようだ」と怒りをあらわにする出店者がいます。楽天は偽物の販売や規約を守らなかった場合、最大300万円ほどの罰金を科す規定を設けています。しかしその請求基準があいまいであることが問題です。
送料無料化を楽天が要望した背景は、楽天市場の金額比較が難しいというお客様の意見からです。また近年Amazonに国内EC市場を奪われている中で、送料込みの値段でそろえることが必須であると三木谷社長が考えました。Amazonを追う上でも欠かせない効率の良い物流モデル。その構想も送料無料の発送となる一因でした。
楽天の戦略として楽天のポイントを利用できる「楽天経済圏」への呼び込みが重要です。携帯事業はその重要な窓口としての意味も大きくあります。その携帯事業を軌道に乗せるまではEC事業で稼ぐしかありません。そんななか楽天市場から魅力ある出店者が消えてしまわないよう、気を付ける必要があるでしょう。
Part4:雑草魂を取り戻せるか
元々日本興業銀行(現みずほ銀行)を辞めて企業を目指した三木谷氏。様々なビジネスプランを考え、行きついたのが楽天市場でした。
1997年5月の楽天市場スタート時に集まったのはたったの13店舗で、ほとんどが三木谷氏のツテをたどったものでした。その後目標を50店舗に設定し直しましたがそれも届かなかった時、「50社の目標に到達できないのであれば、とても世界に通用するとは思えない」という三木谷氏の想いのこもったメールが各人に届きました。
楽天がここまでシェアを広げることができたのは、1つはシステムの使い勝手の良さと、もう1つに泥臭く勧めた店舗営業がありました。2000年に出店した九州の海産物卸の出店者は「若いあんちゃんがきて、熱心に説明していく。話半分に聞いてなんとなく加わっただけだけど、よくよく考えるとあたらしい販路開拓につながった」と振り返ります。
創業メンバーで進めてきた楽天でしたが2000年に上場し、スタートアップから大企業への過渡期になりました。そこで管理職を強化するフェーズに入り、三木谷氏の先輩で元ゴールドマンサックス、元楽天副社長の山田氏が加わったり、銀行出身の人材が集まってきました。またM&Aで事業を伸ばせるスペシャリストを獲得し、外部からの人材をさらに呼び込みました。
それによって大企業としての統制はでてきましたが、いつしか創業当時の理念である「中小企業の力になる」という姿勢が薄れ、出店者との関係もパートナーから従属関係に近いものになりつつあります。
平成の名経営者ランキングの4位に名を連ねている三木谷氏。これまでは旧態依然とした規制やルールを嫌い、それを突き崩そうとする姿に周りの人が共感し、応援してきました。しかし最近は権力者側としての側面も見えてきています。
創業から20年以上たった今、勝負の携帯事業を軌道に乗せ、かつてのような泥臭さで再び成長を描けるか、まさしく岐路に立っています。
私の感想
自分も楽天経済圏にどっぷりはまっている一人であるため、退店が多くなっている事実にまず悲しくなりました。
楽天モバイルを使い、楽天カード、楽天銀行、楽天証券とそろえ、0と5のつくスーパーセール時にまとめて日用品を購入しています。(今年はふるさと納税もスーパーセール中に買おうとしていました)そんな中魅力的な店が減ってしまうことは非常に残念です。
しかし三木谷氏の懸念のように、送料込みで統一してくれれば、使い勝手はよくなると思いました。理念は間違っていないがやり方が性急だったと感じます。
また理念である「中小企業の力になる」という言葉は銀行出身者だからか、私の中でとてもかっこよく変換され入ってきました。三方良しだった昔の泥臭い商売人魂があれば、楽天はまだ復活できると思います。人材の大切さを改めて思い知りました。
また楽天モバイルの料金設定やなにが新しいかを理解することができてよかったです。新しい楽天モバイルのプランを契約しようかまさに迷っていました。しかしこの記事を読んで、都会に住んでいない私にはまだ早いサービスだなとわかりました。当面は現在の契約をつづけ、基地局の整備が整ったところで使用したいです。
仮想化という新しいテクノロジーを利用することは非常に良いことだと思います。
三木谷社長に今週号はぜひ読んでいただいて、雑草魂というかやり抜く力がいま最も重要であることを再確認してほしいと思いました!
最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介
日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。
気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!
皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。
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