27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】『三体』を読んで

今回は劉慈欣さん著『三体』の感想をまとめます。ネタバレを含む内容になりますので、ご注意下さい。

 ■要旨:

ナノマテリアルの研究者であるワンミャオ。ある日突然警察のシーチャオに連れられ、ある会議に参加させられる。そこで科学者が次々に自殺している事実を知らされ、その解明のため、『科学フロンティア』に侵入するように言われる。最初は嫌がるものの、目の前にカウントダウンの映像が投影され、その謎を解くため、VRゲームの『三体』を進める。その結果『科学フロンティア』は異世界文明を地球に仕向け、人類を滅ぼすことが目的と突き止める。VRや宇宙、数学原理など多岐にわたる壮大なスケールで話が展開されるSF小説。

 

■感想:

中国の文化大革命時代の知識層への糾弾のシーンから始まり、現代のVRゲームや現実の定理を使いながら、最終的にSFとしての側面である別の太陽系からの生命体の襲来(降臨)を求めるという、とにかくスケールの大きさ、ストーリーの緻密さに圧倒されました。非常に面白く、知的好奇心もくすぐられる一冊でした。

自分の中で一番好きな部分はVRゲームとしてワンチャオが体験する『三体』の世界観です。異世界の世界観を体験できるVRゲームですが、その世界は3つの太陽が存在し、かつ生活に適した気候になる周期が不規則に訪れ、文明がその都度発展と破壊を繰り返すという世界です。実際の三体問題(3つの相互作用する天体の軌道は求積法では求まらないという問題)をモデルにした発想ではありますが、それをかくも見事に魅力的にSFに落とし込む著者の非凡さが素晴らしいです。骨組みは人類に絶望した登場人物が異世界と交流したことによって、その力を借りて人類のスクラップ&ビルドを図るという王道ストーリーですが、前半にちりばめられた謎、不可解さが読み進めるにつれて全貌が見えてくる爽快さ、細部まで作り込んだ設定の細かさ、著者の数学や天文学に対する造形の深さに心を打たれます。

尚、本書はヒューゴー賞という世界的なSF界の賞を受賞し、かつ前アメリカ大統領のオバマ氏も愛読書の1冊として挙げている本です。ぜひ読んでみてください。読んで損はないと言い切れる名小説です。