27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】『最後の秘境 東京藝大』を読んで

今回は二宮敦人さん著『最後の秘境 東京藝大』の感想をまとめます。

 ■要旨:

現役東京藝大生の嫁を持つ著者。嫁の奇行エピソードから、藝大生のエピソードをまとめる本を書くことになった。音楽科と藝術科に大きく分かれており、さまざまな専門の奇人変人(褒め言葉)が出てくるエッセイである。

 

■感想:

率直に東京藝大に入ってみなくなるような、魅力的な一冊でした。

倍率50~60倍といったような狭き門を突破し、24時間自身の芸事のみに神経を使っている人々の生活やエピソードに触れて、自分もこうなれたらと思う反面、こんなプロにはなれないと思う内容もありました。

音楽科の学生は3歳から楽器にふれ、数々のコンクールで実績をだしてきた人ばかりです。ピアノの練習時間も9時間や真夜中に至るまでやるのが当たり前の環境です。ヴァイオリンは徐々に骨格がゆがんでしまうらしく、ヴァイオリンと一体の時が完成形となるプロの方もいるとのことでした。そんな激しい競争の中、舞台に立っていると考えると友人のピアニストの人もこれまで以上に尊敬しました。

また指揮者の方のインタビューでは、すべてのパートをあたまにいれ、作曲家の時代背景やほかの曲を調査し、どのような作品に仕上げるかという、孤独な準備段階があることがわかりました。指揮者のすごい人はどこが優れているのか具体的にはわからなかったのですが、この本を読んで理解することができました。

一方芸術家の学生はぶっとんだエピソードが多く、著者の嫁のカメの彫刻にフェルトで座布団にして椅子にするという発想は笑いました。

中でも作者も美しくなければならないという油絵の学生のエピソードは印象的でした。生き様から芸術にかけている姿勢があり、その魂が人の心を揺さぶるのではないかと思いました。また、かたくり人形を一から自分で作り上げた学生についても、やる意味とかではなく、自分の気がすむまで掘り下げる能力が卓越していました。

本書は非常にユーモラスなエピソードが多く、面白いという印象が強いのですが、それと同等に、彼らのストイックな生き様、突き抜けた姿勢に心打たれる良書でした。