27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『社員はなぜ育たない』を読んで

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2020/3/9発行分 日経ビジネス表紙

今回は2020年3月9日発行分の日経ビジネス『社員はなぜ育たない』を読んだ感想をまとめます。どの企業においても避けては通れない後継者育成問題。令和の次世代のリーダーを育成するためにはどうすればよいか?

本記事を読んで皆さんも一緒に考えてみましょう! 

 

目次

 

Part1:カリスマ経営者の挫折と焦燥

 「最高の経営状態でバトンを渡したつもりだったが肝心のバトンンの渡し方が悪かった」

そう語るのは、居酒屋大手ワタミの創業者渡邉美樹氏です。2011年に東京都知事選出馬のため、経営の一線から退きました。経営者交代後、2013年までは売上および利益を順調に伸ばしていきましたが、2015年に上場以来初の営業赤字となり、その後業績は低迷しました。

その理由は以前のワタミが創業者のカリスマ性によってうまく機能していたためです。ワタミは外食のほかに、弁当宅配の宅食事業、農業、エネルギー事業などを持っています。それぞれの事業から渡邉氏に報告が上がり、渡邉氏が全体を監督しながら指示を出す。そのタテ割りの組織運営が、次の経営者ではうまく統制がとれませんでした。

そして2019年10月に代表取締役会長に復帰した渡邉氏。後継者育成の方針については、「正直全く考えていない」との回答ですが、以前は否定していた世襲制への考えが軟化してきています。息子の将也氏は日本を代表する同族企業であるサントリーの子会社に入社しており、米蒸留酒ビームの買収の担当をしていました。現在渡邉氏はワタミを成長軌道にもどすためにオーナーに権限を集中しており、将来的には世襲も視野に入れていくことでしょう。

ワタミ以外の後継者選びの失敗例としては、ファーストリテイリングの柳井氏も退いた後に再度経営の一線に復帰しています。またLIXILの潮田氏が瀬戸氏を退任させたり、ソフトバンクの孫正義氏も後継者候補の副社長が退任するなど後継者決めが難航しています。

日産はゴーン氏の社長時代に後継者育成を行う制度「ハイ・ポテンシャル・パーソン」制を取り入れました。それは将来のリーダーとなる幹部候補300名を選抜し、一般社員よりも高い目標を課し、人材育成を行う制度です。ゴーン氏の後を受け継いだ西川氏もその厳しい競争を勝ち抜いてきたエリートです。しかしその制度も失敗だったという声も聞こえてきます。到底達成できない目標を課され、優秀な人材が出世コースから外れたり、リーダーのまわりにいうことを聞くイエスマンばかりが残ってしまいました。

時代の変化が速くなる中でリーダーの重要性は増していきます。どのように次世代のリーダーを育成していくべきでしょうか。

Part2:令和のリーダー 5つの育て方

令和のリーダーを育成する上での5つのポイントを、人材育成に熱心な企業例から見てみましょう。

POINT 1:新人から鍛える(JT、くら寿司)

日本たばこ産業(JT)では、入社する前の内定段階で幹部候補の選抜試験が始まります。内定段階で選抜された「予科生」が30歳のタイミングで「ジュニア」として入れ替え戦が実施、35歳で「ミドル」40歳で「シニア」とふるいにかけられ、経営人材プールに優秀な人材を確保していく仕組みです。20年後、30年後の将来に主力のたばこ事業がどうなっているかわからないため、より多様な個性を持った人材プールを用意しておき、その中から適切なリーダーを選ぶことが重要だと考えています。

くら寿司も、新人からの「促成栽培」を志向しています。幹部候補生として、26歳以下で、TOEIC800点以上、簿記三級以上の資格を持つ人を募集しました。そして新卒年収1000万円と設定したこともあり、約350人が応募してきました。その中から社長みずから選んだ数名を今後育てる予定です。選抜者を計画的に育成することで、少数でも質の高い幹部候補者を用意して、変革のリーダーにする。そのくらいやらないと世界で戦えないとくら寿司の担当者は語ります。

優秀な人材を引き留める上でも若手からの育成プログラムは有用だと思われます。

POINT 2 :チャンスは全員に(三菱商事)

一方で最初から選抜せずに、社員全員にチャンスを与えながら、リーダーとしての能力を高める方法を取るのが三菱商事です。商社の役目として当社会社の色合いが強まっています。現在は投資した会社に社員を送り込み、事業価値を向上させることで、商社全体の利益になるように変化しています。そのため、三菱商事が目指すのは全社員が経営人材。従来の人事制度では年次と役職によって職務内容が連動していました。しかし若手の優秀な人材を引き上げるため、19年4月に年次や役職の考えを撤廃し、30代でも経営人材として登用できるようになりました。

POINT 3 :自主性を引き出す(オムロン)

人事部主体でリーダーを育成する取り組み以外に、社員自身でキャリアを描く取り組みもあります。オムロンでは社内公募制だけではなく、募集がかかっていない部署にも売り込みができる制度があります。2年間の実績では102人が手をあげ、実際に42人が希望する部署へ配属になりました。

また自主性だけではなく、オムロンはリーダーとして引き上げる基準として3つの経験を積むことを求めています。それは事業を経営する能力である「収益責任」、違う事業などを経験する「クロス経験」そして「母国語以外での勤務」です。そして、リーダーが次のリーダーを育てるサイクルが作れるかも重視しています。

ほかにも「TOGA」と呼ぶ企業理念実践運動を社内で実施し、自主性を尊重しながら会社の軸を再確認できる場を提供しています。「世に先駆けて新たな価値を創造し続ける」という企業理念に基づくテーマを宣言し、チームで協力しながら実践します。例を挙げると、ちゅごくの医療体制が抱える社会的課題の解決策を探って、対策を実行し、その成果を年に1回の発表会で披露するといったものです。

POINT 4 :役員のそばに身を置く(KDDI)

現場での経験を踏まえた上で、経営陣のそばに置くことで、マネジメントの要諦を学ばせるのがKDDIです。

現在社長を含む6人の取締役に計13人の補佐がつくようになっています。任期は1年で、各取締役の指名におり選ばれる人材が決まります。取締役の打ち合わせなどに同席し、事業部からのレポートや取締役の発言を聞き、その要点をまとめ、改善店や問題点を洗い出したレポートを取締役に提出します。そしてチェックが入り、経営者目線でのフィードバックを得られる機会になります。

それにより会社経営の視座を高めることができるようになることはもちろん、各部門・事業部のキーマンもわかるようになります。そして現場の人間が経営陣の感覚を持つことで、経営陣と現場が一体感を持って事業を進めることができるメリットもある制度です。

POINT 5 :社外取締役が目付役(りそな)

りそな銀行は、社内の育成以外に社外からのフィードバックを取り入れて、後継者育成を図っています。

元々2003年に約2兆円の公的資金を注入し、実質国有化されたりそなHD。その立て直しを任されたのがJR東日本副社長だった細谷英二氏でした。細谷氏はその時の苦労を味わった現場の経験がなければ人心掌握は難しいと考え、社内の600名の部支店長級の人材の中から20人ほどに絞り、育成を行いました。

そして執行役員クラスに昇格してからが育成の本番になります。昇格後2~3年目から外部の人事コンサルタントや社外取締役が、面談を通じながら一人一人の能力を見極めます。さらに後継者を決める指名委員会メンバーは3/4人が社外取締役で構成されています。

細谷氏の「リーダーの器量以上の組織は絶対にできない」という言葉の重みが今もなおりそなHDには引き継がれています。

Part3:多様化時代を導く「吸い上げ型」人材

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新入社員アンケート結果

現在の若手社員はリーダーとして組織の上に立つことをどう考えているのでしょうか。

アンケートの結果では社長にまでなりたいという人が10年前よりも減っており、その間の重役、部長、課長になりたい人が増えています。ほどほどでいいという「適温志向」が覗かれます。また理想の上司像のアンケートでは世代間によって重視するポイントが異なり、新入社員は丁寧な指導やプライベートでの相談に乗ってくれるなど、上司からの寄り添いを求める傾向にあります。

そんな中令和のリーダーに求めらる型は「吸い上げ型」になってきています。いままでのマネジメントは管理者の経験と知恵で解決策を示し、それを遂行するトップダウン型でうまくいきました。しかし、さまざまな要因が速いスピードで変わっていく世の中では、部下や様々なステークホルダーと積極的に話をしながら答えのカギとなる情報を吸い上げ、適宜最適な指示をだし、時に即座に修正する力が必要です。

時代や価値観の変遷とともに、現場力を引き出せるリーダー像も変化します。その変化とともに歩みを止めることは我々には許されないのです。

私の感想

 具体的な各企業の人材育成方法を知ることができ、大変面白かったです。

中でもKDDIの役員補佐による人材育成は大きな意味があるなと感じました。

私も上司がどういう情報を持っていて、どういう視点から考え、どういう報告を望んでいるのか判断ができないことが多くあります。いわば前提となる視座が違うため、報告内容に不備があり、手戻りが発生してしまいます。しかし、わからない部分の細部まで上司に確認することは悪であるような空気を感じることがありました。そして自分なりに修正し、再報告するとまた指摘が入り、結果うまく仕事が回らず、パフォーマンスもあがらないという負の連鎖に陥ることで悩んだこともありました。

もちろん自分から情報を取りに行き、上司の視座まで自力でいくことができれば理想です。しかし情報を取りに行くキーマンがわからなかったり、細かいところまで突っ込んできて疎まれやしないかと心理的ブレーキを勝手にかけてしまったりとうまく行動できませんでした。その時にKDDIのような制度があれば、制度をうまく利用することで少しは成長しやすくなるかもなと思いました。(ちなみに今の私はある種開き直るというか、サイコパスのような志向でガンガン仕事を進めることが結果的に会社の利益になると考え、心理的ブレーキを外しました)

また自分の会社の人事制度についても調べてみようと思いました。今までは漠然とキャリアプランがあると想像していましたが、上司の視点から考えるとそろそろ自分も選別される時期に来ていると感じます。その選別のタイミングがどのタイミングでくるのか、どういう経験・能力が評価されるのかについて、知っておくことは損ではないでしょう。「というか入社した時から確認しておけよ!」というツッコミは置いといて、まずは社内の制度、ルールを把握するところからまずは始めたいと思います。

Part3のアンケートにある若手の「適温志向」についても思うことがありました。かくいう私も今の会社で社長になりたいと考えたことはありません。その理由を考えると、自分のキャリアパスが見えているのが身近な部長レベルまでだからかなと思いました。また「社長になってよかった」や「取締役になってよかった」といったポジティブな意見より、その忙しさやわずらわしさといったネガティブな意見のほうが多く触れるため、その地位まで上り詰めるモチベーションが沸いてきません。そもそも価値観が変わり、会社で偉くなることが人生のゴールであるという意識も薄れていることも一因ではないでしょうか。

最後に自分も後輩ができた身であるため、人材育成についてももっと積極的に参加していこうと思った良記事でした。

最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

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