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今回は6月28日発行分の日経ビジネス『あなたの知らないソニー』の感想をまとめます。
過去最高の純利益1兆円を計上したソニー。日本の電機業界の唯一の生き残りともいえる会社の歴史とこれからの歩みがわかります。ぜひご覧ください!
目次:
PROLOGUE:ドローンは復活の証
ソニーが開発した「Airpeak」というドローン。13個のセンサーで自動飛行しながら、台風並みの強風の中でも安定した動画を空撮できます。中国のDJIという巨人が牛耳るドローン市場に、ソニーは2018年、後発組として参戦しました。しかし、カメラやロボティクス面の技術で差別化が計れると自信をもっています。
過去ソフトとハードの融合で競合に後れをとり、スマホを筆頭に伸びる市場を取り損ねたソニー。その失敗から学んだソニーがドローンのような新しい市場に参入できるのは、業績回復したからにほかなりません。
21年3月期の連結純利益は前期比2倍の1兆1717億円となっており、ほかの日系電機会社を大きく引き離しています。リーマンショック以来人員整理や赤字を経験し、今の輝かしいソニーに導いたのは、前CEOの平井一夫さんと、今期からCEOになった吉田憲一郎さんです。エレクトロニクスや半導体、ゲーム、エンタメなどの既存の事業がそれぞれ花開いた結果が過去最高益の達成につながりました。ソニーがどのように変化し、未来を切り開いていくのか、次章以降で見てみましょう。
Part1:脱自前主義による成長
幅広い事業領域を展開しているソニー。自前主義ではなく、協業を活用しながら各分野で新たな取り組みを手掛けています。
①スポーツ
アメリカの大リーグで、大谷翔平選手が大活躍しています。皆さんも大谷選手のホームランの飛距離や打球速度がメジャートップレベルであることをニュースなどで知った経験はあると思います。
それを可能にしているのが、ソニーグループ傘下、英ホークアイ・イノベーションズのプレー分析サービスです。ソニーがホークアイを買収したのは2011年。今では25種のスポーツで分析技術が取り入れられ、90カ国以上の500を超えるスタジアムにて、年間3万以上の試合などで使われています。テニスのライン判定システム、サッカーのゴール判定、野球のプレー内容を解析する「パフォーマンストラッキング」などスポーツ界でデータ革命が本格化しています。
世界的にスポーツテックの市場は拡大しており、21年から年平均17.5%伸び、26年までに4.4兆円規模に達する見込みです。今後もスポーツエンタメ事業に進出し、データとイベントを組み合わせた新たなサービス・価値を提供します。
②ロボット
世界的なパンデミックにより、オフィスワーカーの多くがテレワークを導入しました。しかし現場での作業が必要な工場勤務者はテレワークができません。それを解決するサービスとして、コントローラーで遠隔制御しながら、組み立てや塗装ができる仕組みを提供しました。
ソニーと川崎重工業が協業し、銃タイプのコントローラーをつかって塗装を実施したり、自動車の椅子の取り付け作業を遠隔でおこなったりできるようになりました。消費者向け製品で成長してきたソニーにとって製造現場の最前線で働くロボットは未知の領域です。川崎重工業とのパートナーシップを組めたからこそ、新たな事業領域に進出できました。
③タクシー
後部座席の窓に広告が表示されたタクシーが都内を走っています。そのサービスを行っている会社が、ソニーから出資を受けている、配車アプリ会社S.RIDEです。
日本交通グループやウーバーなどがひしめき、レッドオーシャン化している配車アプリ市場になぜソニーが飛び込んだか。それはタクシーからとれる「データ」に目を付けたからです。5万台弱が都内を走って得られた交通データは、センサーの開発などに使えます。自動運転技術や電気自動車にも取り組むソニーにとって、全体の成長に必要な協業でした。
④ルアー
魚が食らいついた瞬間、どのくらいの水深でどんな動きをしていたのかを記録できる、IoTルアー。脱サラし、趣味の釣りを科学的に分析したいと会社を作った岡村雄樹社長に支援の手を差し伸べたのがソニーでした。
アイディアの整理や実現可能性の検証など、全面的にサポートに入り、量産までの道のりを支えました。ソニーは、2018年から「ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(SSAP)」という新規事業創出支援プログラムを開始。支援は有料で行っていますが、採算は度外視した価格設定です。長期的なシナジーの創出が目的であり、その貴重なノウハウをソニーにもフィードバックしています。
Part2:高収益のからくり
ソニーの高収益を支えている大黒柱が「ゲーム事業」です。ゲーム事業が収益を上げるポイントは3つあります。
1つ目はハードの販売。世界的に人気のプレイステーション4(PS4)は販売から7年たった20年度も570万台を売り上げました。20年11月に投入した「PS5」も数か月で780万台販売。世界的な半導体不足の影響で品切れが続出し、2倍の価格で転売されるなど底堅い需要を見せました。
2つ目は月額課金。現在のゲーム市場はネットでつながり、全世界の人々とつながりながらプレイします。そのオンライン対戦に参加するためには、ソニー・インタラクティブエンタテインメンツ(SIE)が運営する「PSプラス」に加入しなくてはなりません。月額料金は430~850円で、会員数は21年3月末時点で4760万人となっています。PSプラスを軸とするネットワークサービスの21年3月期売上は3830億円、任天堂の同様のサービス会員は20年9月時点で2600万人と、大きく差が開いています。
3つ目はアイテムの販売です。ゲームの中のキャラクターの衣装や、キャラ自体を追加購入できます。スマホのゲームにおいても、基本料金を徴収せずにアイテム課金で稼ぐ「F2P(フリー・トゥー・プレー)」というビジネスモデルが一般的です。F2PがPS4などのゲームでも浸透してきた結果、ゲームでの収益の柱に成長しました。
3つの収益構造を整えたことにより、ゲーム事業の売上は2兆6653億円に達し、7年前の2.5倍に拡大しました。ゲーム機とソフトの「売り切り型」から、継続的に収益を生み出す「リカーリング型」にビジネスモデルを切り替えたことで営業利益も3422億円、営業利益率12.8%になりました。
Part3:これからのソニー
祖業のエレクトロニクスから、半導体、音楽、金融、映画、ゲームと事業拡大してきたソニー。現在はこの6本の柱が独立して成長しています。そして吉田CEOが掲げる戦略も手堅いものがおおいです。
例えば映画においては、ゲームで人気の出たタイトルをもとにした映画を企画し、ゲームや音楽についても、「顧客10億人」を長期ビジョンと掲げつつ、まずはゲームで4760万人とつながっているところからしっかり攻めていきます。GAFAなどの巨大企業との戦いやEVにおいても現時点で量産化は行わないなど、勝てる市場を見極めて参加しています。
数少ないソニーの課題としてあるとすれば、7本目の新規事業が20年以上出ていない点です。新たな世界を描ける「人」の登場が今まで見たことのないソニーを生み出すカギとなります。創業者の井深大氏は「常識と非常識がぶつかったときに、イノベーションが生まれる」と語りました。CEOになった吉田氏はまさに「常識人」であり、いかにして「非常識」な人を抜擢できるかが問われています。
感想
多くの事業を抱える、コングロマリット型の企業ですが、それぞれがしっかりと成長をしている素晴らしい会社だとわかりました。今回の特集ではそれぞれの事業がどのように稼いでいるかは理解できましたが、なぜほかの企業と違い、ソニーは全事業が筋肉質な体制になれたのかが知りたくなりました。
平井前CEOの「感動」をテーマにした取り組みのわかりやすさが全社員に浸透したからなのか、もしくは人事制度や教育観点で自律的な社員の育成に成功したからなのか。企業文化の醸成には一朝一夕でできるものではありませんが、根底にあるソニーの強さをほかの本を読むことで探ろうと思います。
今回の特集をきっかけにまずは創業者の井深大さんの本を読むことにしました。盛田昭夫さんの本もそのあとに読みたいと思います。
今週の本紹介
日経ビジネスで特集されている話題の本を紹介します。
気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!
皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう。