27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『危機に強いぽっちゃり企業』を読んで

日経ビジネス表紙「危機に強いぽっちゃり企業」

2020/7/20,27発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年7月20,27日発行分の日経ビジネス『危機に強いぽっちゃり企業』を読んだ感想をまとめます。

まず今回の愛くるしい表紙が素晴らしいですね!私もコロナ太り気味のため、ぽっちゃりも悪くないのではないかとポジティブに捉えております。笑

本記事の結論を一言で表すと、『ぽっちゃり企業とは、危機は恒例行事と心得ており、景気の良い時期に戦略的に資本をだぶつかせる企業である』です。

ヒト・モノ・カネといった資本をだぶつかせる戦略とはどういうことなのか?

ぜひご覧ください!

 

目次

 

PART1:危機に強いぽっちゃり企業

恵比寿様

恵比寿様もぽっちゃり

 「選択と集中」「持たざる経営」「小さな本社」など、バブル崩壊後の日本では企業のスリム化がトレンドでした。しかし東日本大震災やコロナ危機において、「ヒト・モノ・カネ」の面である程度のぜい肉があるほうが企業の耐性が上がることが分かってきています。本章では戦略的に資源を割いていた企業を紹介します。

キリンホールディングス

言わずと知れたビール会社のキリンホールディングス。第三のビール「本麒麟」が好調な一方で、コロナによる業務用ビールの売り上げ減の影響を受け、前年同月比の売上1割減となりました。

しかしキリン自体に悲壮感はありません。理由は酒類・飲料の他に「医薬」と、健康食品などの「ヘルスサイエンス」という3本の矢があるからです。

医薬事業が発足したのは1980年代初頭。87年のアサヒ「スーパードライ」が誕生するまでトップシェアを堅持していたキリンですが、ビール事業が売り上げの9割を稼ぐ絶頂期の頃に次の矢に投資していました。20年1月には物言う株主からビール事業だけに絞る「スリム化」の株式提案がなされましたが、ほかの株主が企業方針を支持し、医薬とヘルスサイエンス部門は残されました。

景気の良い時期に次の成長株を仕込み来る危機に備える、お手本のような事例です。

神戸物産

「業務スーパー」を全国で展開している神戸物産。大手の他のスーパーと比較しても2~3割ほど安い価格で提供できていることが強みとなっています。その強さの秘訣が神戸物産独自の製版一体体制です。国内工場22か所と海外40カ国から輸入する商社機能を併せ持ち、プライベートブランド商品の取り扱いが3割ほどになります。

元々自社ルートで商品を輸入していた際、コストダウンのため大型コンテナで船便で送っていました。しかし店舗数が少なく、在庫がはけない状態が続きます。そこでスーパーとしては特殊な「フランチャイズチェーン体制」を取り入れ、店舗数を増やすことで、在庫をはけさせる構造を設計しました。結果的にそれが功を奏します。また商品が長持ちしない生鮮食品は、フランチャイズ店が独自のルートがない限り取り扱わないこととし、保管期限が長い商材を取り扱っていました。

分業化して効率化を図る経営に逆行し、自社工場と自社ルートを持つことで、安価なコストを達成し、コロナ下でも安定した業績を残すことができます。

エーワン精密

山梨県で工作機械向けの部品を製造するエーワン精密。5棟の工場が建っており、第一工場には近々2億円規模の最新鋭の機械設備が数台納入される予定です。それまでは面積の約3割ほどしか使用していませんでした。

実は第一工場の建設もリーマンショック直後の2009年に建築されています。不況の中だったため費用も2~3割程度抑えることができました。設備も人も「やや過剰気味」にもち、工場の対応能力に遊びを持たせています。その結果超短納期の納入にも対応できる差別化ができています。

エーワン精密は日本電産からの値下げ要求も突っぱねてきました。受注割合は6割程度で、4割の仕事は失注しています。しかしながら値下げ要求に応じない企業体質によって、設備や人の余力を十分に残しながら経営ができる体制になっています。

島津製作所

コロナ禍で注文が急増しているPCR検査の試薬キット。島津製作所が4/20に発売したものですが、検査に必要なDNAやRNAを抽出する工程を省ける「アンプダイレクト」という独自技術により、通常3時間以上かかる検査を1時間程度に短縮しました。1つのキットで22万5000円(税抜)。月間10万検体分の生産を予定していましたが、6月末までのやく2か月で27万検体分が売れました。

島津製作所は分析機器やX線装置などを主力製品としていますが、PCR検査に詳しい研究者の入社を機に試薬の開発を開始しました。1997年に最初の製品を発売しましたが、芳しくなく、ノロウイルスが流行した2006~2007年には40万検体分が売れただけで、それ以外の年は鳴かず飛ばずでした。

足元の売上が良くなくても、時間軸を広く持つことで不況に強い事業を残し、会社としてのリスクヘッジを行う好例となりました。

サカタのタネ

ブロッコリーの種約75%、スイートコーンの種約60%、国内販売で圧倒的なシェアを持つ種苗大手のサカタのタネ。優れたグローバル企業でもあり、海外売上高比率は6割にあたります。

種の開発には長い年月がかかります。素材となる種の遺伝資源の購買と選抜を繰り返して新品種を開発するまでに約10年。開発された品種を協力農家などで販売できる両人あるまで増やす「採種」にはさらに数年かかります。加えて天候や自然災害にも左右される作業ということもあり、サカタのタネは自己資本比率を8割超と、高い水準にしています。また手元資産を月商で割った手元流動性比率も約4か月と高い状態です。

自然のリスクと隣り合わせの開発を少しでも安定的に進めるために、公邸の各所に「ゆとり」を持たせています。採種する場所を約20カ国に分散したり、同じ品種で南半球と北半球に分けてリスクヘッジしています。

戦略的に手厚いリスクヘッジと手元資金を準備する危機に強い企業体質を作ることができています。

アクサ生命保険

 東京と札幌の2拠点に本社をもつアクサ生命保険。本社はコストセンターのため、小さいほどよいという経営観と逆をいきます。

本社の複数拠点化を検討したきっかけは東日本大震災でした。震災時にアクサ生命保険の9つの事業所が被災、東京本社も混乱の中にありました。その時は福岡で本社機能ををバックアップする拠点を設け、120人の人員を派遣することでしのぎました。

社長に就任したばかりのベルギー出身のジャン=ルイ・ローラン・ジョシ氏は、地震大国である日本の手痛い洗礼を受け、危機感を募らせました。

災害時にこそ必要とされる保険業において、震災のリスクヘッジにかかわるコストは投資と判断しました。東京と札幌でチームを分けず、一人の管理職が両方のスタッフを統括するなどしていつでも互いの業務を即座にバックアップできるようにしています。有事に基幹業務が止まらない体制を構築すれば、ステークホルダーからの信頼獲得につながり、平時のビジネスの追い風にもなります。

COLUMN:松下幸之助流『ダム式経営』

松下幸之助氏

松下幸之助氏

「ぽっちゃり」経営に通じる考え方を持っていたのが、パナソニック創業の松下幸之助氏が提唱した「ダム式経営」です。

ダム式経営の大切さに松下氏が気づいたのは米電池メーカーのユニオン・カーバイドを訪れたときでした。2度の世界大戦を経ても30年間同じ価格で乾電池を打っていたユニオン。その事実を知り、松下氏は2~3割の製造施設を予備として持ち、製造側に余裕を持たせることで供給を安定させて価格のバランスを保っていたと気づきました。

松下氏は生産体制のみならず「設備のダム、資金のダム、人員のダム、在庫のダム、技術のダム、企画や製品開発のダム」など様々なダムが考えられるといいます。そしてそのダムをつくるためには自社の技術力、資金力、販売力などを含めた会社の実力を適正に把握していることが大切と語っていました。

松下氏がダム式経営の大切さを説く講演会をした際に、出席者から「うちはそんな余裕がない、ダムの大切さはわかったからダムの作り方を具体的に教えてくれ」と質問が飛んだそうです。その時の松下氏の答えは「ダム式経営をやろうと思わんといかんでしょうな」。その場にいた人は即時的な回答を望んでいただけに失笑がこぼれました。しかし京セラの創始者稲盛和夫氏はその言葉に「ガツーン」ときたといっています。稲盛氏の著書『生き方』にもエピソードとして引用されていますが、その時に「思うことの大切さ」を突きつけられたと学びを得ています。

PART2:優等生企業はどこだ?

戦略的ぽっちゃり企業の変数

戦略的ぽっちゃり企業の変数

平時嘉新ヒト・モノ・カネに余裕を持たせた経営を意識することが、危機に強く変革し続けられる企業であることをPart1で述べました。Part2では財務指標から戦略的ぽっちゃり企業はどこかを考えます。

偏差値を算出するにあたり用いた指標は4つです。

  1. 自己資本比率
  2. 流動比率
  3. 負債比率
  4. 総還元性向

1つ目の自己資本比率は、中長期で見た会社の安全性を見極める指標になります。資本全体のうち、どの程度を返済義務のないお金で賄っているかを示します。

2つ目の流動比率は、短期的な支払い能力を判断します。短期で支払わなければならない負債(流動負債)に対し、換金性の高い資産をどれくらい保有しているかを示します。

3つ目の負債比率は自己資本に対する負債の割合です。比率が高いほど売り上げが落ちた場合返済負担が重くなります。

4つ目の総還元性向は利益のうちどれくらいを自社株買いや配当といった株式還元に回しているかを表す指標です。流動比率が低かったり、負債比率が高い場合でも総還元性向が高い場合は資本を厚くするのではなく、株主還元を重視しているからだと判断できます。近年ではROEを高める観点からも自己資本を小さくし、配当を厚くしている企業も多くあります。有事の際にはそのお金も流動資産的に利用は可能です。

優良企業に総じて言える特徴は負債比率が総じて低い点です。ファナック、キーエンス、製薬会社、任天堂、村田製作所、ニトリなどの実質的無借金経営の会社がぽっちゃり偏差値の高い企業として名前が挙げられます。

ぽっちゃり偏差値ランキング

ぽっちゃり偏差値ランキング

ただし内部留保の目的がなんなのか、ただ手厚く内部留保をしており株主還元意識の低い企業に当たらないかを見極める必要があります。

EPILOGUE:上手な「脂肪」の蓄え方

ぽっちゃり企業の3箇条

ぽっちゃり企業の3箇条

1801年に廻船問屋として創業した鈴与。200年以上続く老舗企業であり、現在は8代目鈴木与平さんが会長を行っています。200年も続いた秘訣は地域に求められる事業を一つ一つ手掛けた結果と鈴木さんは語ります。

売上高約4600億円の鈴与は地元静岡に根を張り活動しています。Jリーグの地元チーム清水エスパルスの運営母体が危機に陥った際に助けたり、地方航空同士を結ぶ航空会社富士ドリームエアラインズに100%出資したりしています。現在コロナの影響を受け20年度3月期は大赤字だったと鈴木氏は語りますが、多角的な経営で1年後にはだいぶ復活する見込みと述べています。

失われた30年の間日本企業はコストカットによる縮小経営に向いてきました。しかし企業としての基礎体力の引き上げのためには『拡大均衡』を目指す必要があります。中長期的な目線で、多少の無駄も覚悟して収益基盤を強化してきた企業が永続的に価値を届けられる企業になります。

感想

企業の寿命は30年と言われている中で、危機が定期的にくるものだと理解し、具体的な手まで打つことができている企業が生き残っているのだとわかりました。

多角的な経営についても言うは易しだと感じます。特に業績がいいときに多角化経営で全社の利益が圧迫されているとなんとなくもやっとします。そんな気分に対し、経営者目線で物事をとらえる機会になって良かったです。

またぽっちゃり企業は急成長は見込めないが安定的に右肩上がりになっていく企業が多いのかなと感じました。短期的な成長を求めれば、筋肉質なむだのない会社が正しいと思います。しかし雇用を守る社会の公器として会社をとらえるのであれば、ぽっちゃり企業が日本には必要なのかと思いました。また株式投資においても、継続的な成長が見込める企業に投資し、長期保有をしたいという考え方です。そのため今回挙げられたぽっちゃり企業については、詳細の企業分析を行いたいと思います。

アクサ生命保険の本社の複数化はなるほどと思いました。ただしこの本社の動きもどんどんテクノロジー化が進み、最終的には仮想現実内にあるバーチャル本社ができるような気がしました。そうなると新たな脅威としてサイバー攻撃などがメジャーになるなどのいたちごっこに発展しそうですが、、

何事も分散させることが中長期的な成長、繁栄につながることがわかりました。

最後に:今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

  • 『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』
  • 『サガレンー樺太/サハリン境界を旅する』
  • 『猫を棄てるー父親について語るとき』

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。