27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『アフターコロナ資本主義』を読んで

日経ビジネス表紙「アフターコロナ資本主義」

2020/7/13発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年7月13日発行分の日経ビジネス『アフターコロナ資本主義』を読んだ感想をまとめます。

コロナエフェクトによって資本主義の限界を迎えています。高まる失業率。ロックダウンと保護主義に走る各国の分断。アフターコロナの資本主義はどうなるのでしょうか。

ぜひご覧ください!

 

目次

 

 

PROLOGUE:世界は「大停滞時代」へ

世界の実質成長率推移

世界の実質成長率推移

コロナショックを受けて、世界経済はマイナス成長に落ち込む見込みです。IMF(国際通貨基金)が6月に発表した世界経済の実質成長率は-4.9%。4月の予測値よりもさらに1.9ポイント下がり、リーマンショック翌年の2009年時の-0.1%よりも低くなる見込みです。

08年のリーマンショックは金融機関による過剰な投融資が引き起こしたバブルとその崩壊でした。その結果金融機関は事業会社への融資を絞り、事業会社は設備投資などを絞りました。それにより、先進国を中心とする経済は縮小し、鉱工業生産はいまだ07年以前の水準に戻っていません。それまでの世界経済の成長率をけん引してきた中国も、IMF20年度予測成長率は1%と厳しい見通しです。

世界経済の成長エンジンとなっていたグローバル化には過去2つの節目がありました。

1つ目は蒸気機関や蒸気船などのインフラが整備されたことによる「移動コストの低下」。これにより地産地消ではなく、消費地が生産地から離れた場所に広がりました。

2つ目はインターネットによる「情報やノウハウの移転コストの低下」です。その結果生産地が国外に移り、アジア等の人件費が安い地域に集まりました。

ジュネーブ国際高等問題研究所のリチャード・ボールドウィン教授は、次に残されているコストは「人の対面コスト」だと主張します。人が世界を移動してコミュニケーションを取り、ITではなお足りない情報や意志の共有を図るコストです。

そのコストがコロナにより低下されようとしています。Zoomなどのウェブ会議システムの普及や本社から遠くの現場を管理・運営できるインダストリー4.0など変化が加速しています。その変化によりアフターコロナの世界はどうなるのか、予想される状況を見ていきましょう。

 ◇ポイント

  • 20年の実質成長率は前年比-6.9%の予測
  • グローバル化の転機は「移動コストの低下」と「情報移転コストの低下」
  • コロナエフェクトにより「人の対面コストの低下」も起きている

PART1:「失業率2割」の足音

アメリカの実質失業者比率

アメリカの実質失業者比率

コロナ禍の移動制限による経済の停滞により、失業の波が押し寄せてきます。

国際労働機関(ILO)は、4~6月の就労時間がコロナ前の2019年10~12月期に比べ14%減少したと発表しました。日本でも在宅勤務の影響や外食、ホテル業などの休業などにより労働時間は減少しています。20年3月から7月3日までのコロナ関連の経営破綻は、日本国内で307件。経営破綻まではいかなくとも派遣等の雇い止めや解雇が増えています。

欧州の失業率予想

欧州の失業率予想

さらに深刻な状況がヨーロッパです。IMFが20年の実質経済成長率を-10.2%と予想する欧州では、大企業のリストラ計画が次々に明らかになっています。英ブリティッシュ・エアウェイズを傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループは1万2000人を解雇すると発表し、英エネルギー大手BPは世界で1万人の解雇を発表しました。

ヨーロッパでは各国が対策を打っています。ワークシェアリング(短時間労働制度)や雇用維持制度を講じており、4月の失業率は3月に比べ0.2ポイントの増加に収めています。イタリアでは2月以降企業に解雇・免職手続きを停止させた上で、賃金の80%を補填する制度を導入。さらにスペインではベーシックインカムの導入を議論しています。加えてスペイン・ポルトガル・イタリアの3国はEU全体でベーシックインカムを導入するロビー活動を開始しました。過去1992年にEUで検討された際は各国の社会政策に欧州委員会が踏み込むことになるため反対多数で実現しませんでしたが、コロナエフェクトにより状況は変化するかもしれません。

日本の完全失業率の推移

日本の完全失業率の推移

日本の状況も芳しくありません。今年4月の休業者数597万人のうち約7%が5月に職を失い、同月の休業者はなお423万人に上りました。そして10~12月期の失業率は5%台に急伸し、就業者数が約300万人減少するおそれすらあるとされています。

2008年秋のリーマン・ショック後にも強烈な雇用縮小が起きました。米国の失業率は

それまでの約5%から09年秋には10%に達し、リーマン前に戻るのに7年程度かかりました。イギリスは6年程度かかり、フランスは今も戻っていません。

失業率以外に、賃金上昇率の停滞もリーマン・ショックでは見受けられました。日本は1990年を100とした就業者一人当たりの実質給与総額は96年の104.2をピークに下落を始め、2020年は92.7にまで落ちています。

元米財務長官でもあるローレンス・サマーズ米ハーバード大学教授は先進国の長期的な低成長の原因は2つあると指摘します。個人所得のうち貯蓄に回す部分の貯蓄性向の上昇と民間の投資が不足していることです。その根底には高齢化で老後のために資本を残そうとする人が増えたことと、所得・富の分配の不平等による格差拡大です。

さらに企業の大型投資の圧縮も進みます。労働が頭脳労働中心となると第二次産業の大規模投資は減っていきます。ハードではなくソフトの力が増えていく「非物質化」。コロナにより経済活動のデジタル化が進み、さらに非物質化の動きは加速していくでしょう。

◇ポイント

  1. 10~12月期にかけて失業率増加の懸念あり
  2. 欧州の一部の国ではベーシックインカムの導入検討
  3. 個人消費と企業投資が抑えられ、経済が停滞し貧富の差が拡大する

PART2:世界の分断の始まり

アイリスオーヤマの工場生産変化

アイリスオーヤマの工場生産変化

コロナエフェクトにより、低コストなアジアで生産し利益拡大を志向するグローバル化が逆回転を起こします。マスクなどの医療品が新たに戦略物資となり、自国生産回帰の動きがあります。中国の通信機器使用禁止等の動きと重なり、世界のサプライチェーンはどう変化していくのか、本章でまとめます。

中国でマスクを生産していたアイリスオーヤマ。中国で生産していたマスクを日本で作ってほしいと政府から強い要望を受けました。中国で製造したマスクを日本用に輸出する際に中国税関から止められる「事件」が起きました。医療用マスクが中国国内でひっ迫している中で、「サージカルマスク」という商品名が医療用マスクと勘違いされ止められたのです。結局パッケージを変えて事なきを得ましたが、中国側から「中国で作ったマスクは全量中国国内に供給してほしい」と要請を受けたといいます。

コロナエフェクトによる変化の1つは効率や利益だけでは測れない評価軸が出てきたことです。マスクが戦略物資として国内生産回帰が起きたことはその一例です。

また2つ目の変化として米中間の新たな「冷戦」の先鋭化です。ハイテク分野での覇権争いから始まった二国間の対立は、コロナの感染源として攻撃する米国とそれに反発する中国により激しさを増しています。また6月30日には中国の全人代で香港国家安全維持法が可決され、「民主主義vs共産主義」の対立構造もより鮮明になっています。

米中対立の余波は日本にも影響を与えます。アメリカがファーウェイに半導体調達ルートの遮断のためアメリカソフトなどを利用して製造した半導体をファーウェイに供給することを事実上制限しました。ファーウェイに半導体を入れていた半導体受託生産最大手の台湾メーカーTSMCはその影響でファーウェイとの取引が制限される形になりました。しかしTSMCは米アリゾナ州に最先端の半導体工場を約120億ドルかけて建設する計画も同時に発表。アメリカ寄りの姿勢を打ち出しました。日本の半導体製造装置大手SCREENホールディングは中国とアメリカ企業どちらの半導体にもかかわる分野です。現在は規制対象とはなっていませんが、さらに米中の分断は加速していく中で頭を悩ませます。

そのデカップリング(分離)はほかの国にも波及しています。インドでは中国製アプリを発見し、削除するスマホ向けアプリが国民の間で人気を集めています。現在も中国と国境紛争を繰り広げており、6月には軍同士の衝突が起きました。オーストラリアも4月に新型コロナの発生源調査を世界に呼びかけると、中国が猛反発。結果として中国からの牛肉や農作物の輸入制限に発展しました。

一方のアメリカ側も一枚岩というわけではありません。アメリカの保護主義はトランプ政権下でさらに強まります。その影響を受けているのがアイルランドです。アイルランドは低い税率と母国語が英語という強みを活かし、アメリカの医薬品企業の多くが投資をしています。その結果アイルランドの輸出の3割は医薬品が占めます。アイルランドで作った医薬品をアメリカに逆輸入する状況がトランプ大統領から苦言を呈されます。このアメリカの保護主義への動きは11月の大統領選挙の結果にかかわらず、大きな流れとして今後も存在します。

 ◇ポイント

  1. コロナエフェクトによりグローバル化が終了
  2. 米中対立が広がり、冷戦が加速
  3. アメリカの保護主義の流れは継続

PART3:「寛容な」資本主義

株主至上主義の崩壊

株主至上主義の崩壊

これまで会社は株主のものと考えられてきた資本主義が、失業者が増えることにより変わろうとしています。アマゾンでは新型コロナウイルスの対応を求めるための抗議運動を主導したクリス・スモールズ氏が解雇。その他マクドナルドやドミノピザでも経営陣に対する抗議活動が起きています。コロナ禍において会社は株主と経営者だけのものではない、従業員も重要なステークホルダーであるとの見方が広がっています。その動きの一つとしてウォルマートやAT&Tの株主総会では従業員代表の取締役を選任すべきだ」との株主提案が出されました(結果は否決)。従業員の権利を守るための活動者を取締役にいれることで持続可能な企業になるということです。アメリカの左派であるバーニー・サンダース上院議員も「労働者に取締役会の席を与えて富を労働者の手に戻す」と主張しました。

持続可能な資本主義が今後目指す動きになりえます。近年ではESG(環境・社会・企業統治)指標による投資も増えています。そこで独シーメンスは20年度から経営者の株式報酬の20%を二酸化炭素の排出量などESG指標と連動させる方針を示しました。日本でもオムロンや三菱ケミカルホールディングスがESGと連動した経営者報酬を取り入れています。

横河電機の管理システムイメージ

横河電機の管理システムイメージ

またコロナエフェクトの1つとして人の移動制限があります。その結果人の移動を必要とする経済活動の見直しがかかります。販売においてはECが中心になり、生産においては工場の保守・メンテがAIやセンサーによる遠隔制御可能な方向に向かいます。そしてAIが発展すると新たな経済のエコシステムが出現する可能性があります。それは企業の垣根を越えて経済活動が停滞しないサプライチェーンです。あるメーカーがAという部品メーカーから部品を納入していたとします。そこでA社がコロナウイルスのような突発的な事象でサプライチェーンに影響があった場合、同じような部品を供給するB社とつながる。そのマッチングを一つの大きなシステムの中で行うイメージです。

マイケル・ポーター教授の5フォース分析では①新参入者の脅威②顧客の交渉力③サプライヤーの交渉力④代替品や代替サービスの脅威⑤既存企業同士の競争という5つの競争要因がありました。しかしコロナのような共通の敵が存在する場合は、既存企業間の競争ではなく、仮想的に対する協力という選択肢もあり得るでしょう。

また技術革新の中から資本主義再生の道筋が出てくるとすれば、米中だけではなく日本にもまだチャンスはあります。既存の成長線だったグローバル化が止まったこと、経済の非物質化のなかでGAFAといった巨大プラットフォーマーの力が強大化したことを加味すると、技術革新によりエコ型社会を作り上げることで大きな成長のコアに日本がなれます。

日本成長のカギとなるのが「寛容さ」です。米エール大学のエイミー・チュア教授は著書『最強国の条件』の中で「米国の世界は県は、米国が世界で最も寛容な国であり続けた事実による部分が大きい」と指摘します。長年移民を受け入れ、優秀な人材を活かしたことが今日のアメリカの繁栄のもとです。コロナ禍における自国第一主義とポピュリズムに流れるのではなく、アフターコロナで強く生き残る資本主義の姿を思い描き、行動することが重要です。

 ◇ポイント

  1. 株主至上主義の崩壊
  2. 企業間を超えたエコシステムの誕生
  3. 発展のカギは「寛容さ」

感想

今回の内容は理解することに非常に苦労しました。

そもそも資本主義という世界観がなんとなくわかってきたのが最近です。そのうえでアフターコロナの新たな資本主義のかたちを考えることは、今の自分にとっていいトレーニングになったと思います。

社会主義が生まれた背景も資本家(経営者)と労働者の対立関係から18世紀後半ごろ登場した思想です。第一次世界大戦が終結しロシア革命が起きて初の社会主義国家(ソ連)が誕生したのが1922年。約100年前と考えると時代がループしているかのように感じます。リーマン・ショックの時と比較すると終わりが予測しづらく、対応方法も移動制限や特効薬の開発のみのため、人々の不安をエネルギーに社会が大きく変化しても不思議ではないように思います。

PART1では世界経済の成長率や具体的な失業率、リストラ数などが理解できました。今も仕事ができていることを当たり前と思わずに働こうと思います。イギリス企業の1万人規模のリストラを考えると、その1万人分の受け皿となる仕事はあるのかと不安に思いました。(厳密にいるとほかの失業者も含め数百万人規模の雇用が必要かと思います)ただ、社会の解決すべき課題が多数ある中で国や世界的な組織がそれを解決するための仕事を作り、雇用を創出することはできるはずです。その人達の給料は我々の税金から出ることになりますが、我々ができない社会課題解決のために働く人のための税金は支払う際の心理的負荷は低いと感じます。

PART2においては、危機の時に自国優先になることと外に敵を見つけることは世の中の常套手段だなと感じました。余裕がないと協力や平和を作ることは難しいと思います。このままでは米中のどちらをとるかの選択をしなくてはならない危機にあることは理解できました。ほかの国と協力し、第3勢力を作り上げ、三つ巴の状態で均衡を取ることができれば一番良いのではないかと漠然と思いました。

コロナによる移動制限で「対面コスト」が下がったことは大きな変化だと感じます。在宅勤務が導入され3か月ほど立ちますが、これが日常になりつつあります。移動時間がないことで自分の可処分時間が増えたことは素直にうれしいです。ただ最終的には人は慣れ親しんだものや習慣、楽なほうに流れていきます。今回の強制的な変化が一過性のものにならず、さらによりよい生活に向かう形はなんなのかを考え、それに向かって意志ある変化につなげたいと思いました。

またIMFのHPにある経済見通しのサマリー動画がめちゃめちゃセンスがよいです!IMFのHPなんてチェックしたことはなかったのですが、これからは定期的にチェックしたいと思います。

www.imf.org

最後に:今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

  • 『危機の時代』
  • 『コロナショック・サバイバル』
  • 『日本経済の再構築』

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。