27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『東大の力』を読んで

日経ビジネス表紙「東大の力」

2020/6/8発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2020年6月8日発行分の日経ビジネス『東大の力』を読んだ感想をまとめます。

アフターコロナの成長を担う中心としての大学のあるべき姿、その先頭を担う東大の姿を映し出します。これから大学進学を迎える親御さんはもちろん、日本の今後を明るくしたい投資家の皆さんにも有益な情報となっています。

これからの日本の成長の種はなんなのか、ぜひご覧ください!

 

目次

 

PROLOGUE:コロナで問われる東大の役割

東京大学は明治維新以降、国を担い立つ優秀な人材を官民に供給する役割を追っていました。その結果、鎖国から開国へと転じた日本を世界の一等国に引き上げ、戦後の灰じんから世界2位の経済大国まで押し上げる原動力になっていました。

コロナショックにより戦後初の緊急事態宣言が発令され、多くの大学が4月から通常の授業が送れなかった中、東京大学は4月からオンライン授業で通常通りのカリキュラムを行っています。3月初めにオンライン授業の方針を決めており、半月で準備が整いました。東大は新型コロナ感染拡大を受けて下記のメッセージを発しています。

 

「現代社会は今、急速なデジタル技術の革新によって、生活空間でもリアルな世界とバーチャルな世界の融合が急速に進んでいます。せおれは多様な属性を持った人の社会参加はを可能にする、Society5.0と呼ばれる次世代社会を形作る仕組みでもあります。オンライン授業はSociety5.0に向けた準備でもあるのです」

 

アフターコロナの世界をどう立て直すか。その役割を担う「知」の拠点として東大の力が試されています。

PART1:東大総長 五神真氏インタビュー

東京大学総長 五神真氏

東京大学総長 五神真氏

「知識集約型社会」への転換を掲げ、東京大学が多くの施策を進めています。2015年から東京大学総長を務める五神真氏のインタビューをまとめます。

「学」が担う役割

「知識集約型社会」とはAIなどを駆使し、膨大なデータを有効活用することにより、みんなにとってよりよい社会が実現できる状態を表します。そして東大は知を生産する場所であるため、その社会の実現の原動力となっていかなくてはなりません。

社会があるべき方向に向かうためには産・官・学・民がビジョンを共有して連携し、行動することが不可欠です。その中で最もニュートラルな立場にいて、中心となるべきなのが「学」。新しい社会の実現のためにはテクノロジーのみならず法律や行動経済学、倫理など多様な知識が必要となります。そこで大学の役割が重要になってくるのです。

大学債の発行

国立大学が法人化したことによって国からの運営費交付金は100億円ほど減少しました。その結果若い博士や助教授に被害がいき、任期のない不安定な雇用になってしまいました。

しかし近年東大は経営体となる道筋がついてきました。そして東大は財源を多様化し、自由度のあるお金をもっと増やすために「大学債」の発行を検討しています。そのために格付投資情報センターからAA+の格付を取得しました。大学債を発行することにより、思い切った先行投資ができるようになります。

「知の協創の世界拠点」となることを基本理念とした「東京大学ビジョン2020」を作成して大学の役割を明確にしています。SDGsの考え方を中心に据えたやり方は産業界とも歩調が合いつつあります。公益的な立場やミッションのあるモデルを日本発祥として生むことができれば、きっと世界からもリスペクトされますよね。

PART2:東大の産学連携

東大提携先

東大提携先

東京大学の産学連携が増えています。それを後押しするのは「自ら『経営体』にならなければならない」という東大総長五神氏の危機感です。

現在東大が連携している主な企業は、日立製作所・NEC・ダイキン工業・TSMC・ソフトバンク・IBM。これまでの産学連携に比べ、格段にスケールアップしています。

東大産学連携イメージ

東大産学連携イメージ

ソフトバンクとの連携では、最先端のAI技術開発を見越した「Beyond AI研究所」を設立します。ポイントは事業化後にでてくる配当や株式上場益を企業側だけではなく、大学側にも還元させる点です。大学は基本的に企業と共同出資会社を設立することは認められていません。しかしCIP(Collaborative Innovation Partnership)と呼ばれる制度を活用することによって、組織設立時に大学が資金を出していなくても人材やノウハウの提供をコスト負担と同等とみなし、株主になれるようになりました。それによって資金規模や研究期間もより柔軟かつ安定したものにできるようになりました。

東大共同研究費受け入れ金額

東大共同研究費受け入れ金額

またダイキン工業との協業については五神氏の本気度が身を結びました。18年6月に鳥取県にあるダイキン工業の研修施設に五神氏はいました。井上会長にあって交渉するために東京から飛行機で駆け付け、30分の面談後すぐにまた移動しました。その熱意によりダイキン工業と東京大学は10年間で100億円もの支援をすることが決定。また今期からは年間予算を10億円から20億円に引き上げました。

PART3:大学発ベンチャーの勃興

東京大学は日本一の起業家輩出校です。日本にある大学発ベンチャー2566社のうち東大発ベンチャーは268社。そして「アフターコロナの経済を立て直すのはベンチャー企業だ」と語る東大教授もいます。

学内に有形・無形の支援体制

東京大学のベンチャー支援体制

東京大学のベンチャー支援体制

東京大学には大学発ベンチャーが生まれる支援体制が整っています。

その恩恵を受けた1人がミドリムシを原料とする製品の開発を手掛けるユーグレナ社長の出雲充氏です。東大にはアントレプレナープラザと呼ばれるインキュベーション施設があり、そこには事務所として使える29の個室があります。創業間もないころ出雲氏もそこを利用し、技術開発に励みました。それ以外にもアントレプレナー道場で講師を行い、先輩から後輩へバトンをつないだり、東大発ベンチャーを応援するファンドが設立されています。

また東大以外の大学でも大学発ベンチャーを支援する体制が整ってきました。一橋大学出身の起業家らが19年6月に後輩を応援するファンドを立ち上げました。また東北大学は15年にVCを設立し、17年はインキュベーション施設を開設、本格的な起業家の教育プログラムを始めました。

アメリカにはまだ及ばず

時価総額比較

時価総額比較

日本ではトップの支援体制と実績を持つ東大発ベンチャー。しかしながら世界に目を向けると存在感は薄れてしまいます。

スタンフォード大学の大学院生だったラリー・ペイジ氏らが1998年に創業したグーグル

や、ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグ氏らが2004年に創業したフェイスブック。その2社と東大発ベンチャー企業の時価総額を比較すると100分の1以下です。国内だけではなく、世界を主戦場にする国際的なベンチャー企業の台頭が求められています。

PART4:日本の大学の資金事情

大学予算比較

大学予算比較

2004年の国立大学法人化を機に国から支給される運営費交付金は減少傾向です。その削減された資金を優れた研究課題に対し配分する仕組みになってから、約6割は研究費50万円未満となっています。そのため大学が強みをいかし外部からの資金を得て、それを大学内の研究者に循環させなくてはならないと指摘があります。

海外の一流大学は強固な財務マネジメント体制を確立しています。スタンフォード大学の年間予算は1兆3000億円。大学執行部が各教員の研究業績や競争的資金の獲得状況、研究室にかかるコストを定期的に把握し、教員に外部資金の目標額を連絡します。そしてその目標達成へのアドバイスも欠かしません。

東京大学の年間予算は2600億円。まだまだ海外の大学とは差があります。国からの資金が増えない今、外部資金をどう集めるかの「経営力」が大事になってきます。

DATA:世界の大学ランキング

世界の大学ランキング

世界の大学ランキング

各大学の平均給与

各大学の平均給与

東京大学の世界ランキングは36位。英語が母語じゃないことに加え、学部生の留学生比率が低いためランキングが低くなっています。

PART5:日本の大学改革

各大学の改革例

各大学の改革例

東大だけでなく、現在大学全体で改革競争が起ころうとしています。

日本電産会長の永守重信氏は私費100億円を投じ、京都最先端科学大学を設立しました。狙いは「英語と専門知識の習得」です。大学で即戦力の人材が育っていないことを問題視し、特別なカリキュラムを用意しています。

今後の日本の私立大学の改革の方向性は3つに分類されます。

  1. 海外大学との協業、データ経済に対応した新学部開設(早慶、MARCH、中堅校)
  2. グローバル化やIT、技術志向に特化(京都最先端、立命館アジア太平洋など)
  3. 改革が停滞し、将来的に淘汰される大学

人口が減少する中で大学の競争力を保つためには世界中から優秀な人材を集める必要があります。そのため英語はこれからスタンダードな能力になっていくでしょう。

私の感想

自分の大学時代が恥ずかしくなりました。笑

私は大学のころはサークル活動1色となってしまったため、大学で社会人になる前の勉強はできていませんでした。その結果社会人になってから非常に苦労しました。

また「ポスドク」(ポストドクター=博士課程を卒業しておらず、雇用先がない教授のこと)の存在が問題になっていましたがその理由が理解できてよかったです。私の友達で大学教授になれた人がいましたが、研究費の申し込みやそれのプレゼンは準備が大変だと言っていたことを思い出します。日本や世界の未来を創る土台となっていた自負をもって、もう少し勉強すればよかったなぁと思いました。

後悔しても始まらないので、社会人の今から勉強を続け、仕事を通して社会に還元できるよう、これからも努力していきます!

最後に:今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

  • 『2020年6月30日にまたここで会おう』
  • 『2060 未来創造の白地図』
  • 『一九八四年』

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。