27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『大は小を兼ねないー中小企業 再編論の罠ー』を読んで

中小企業 再編論の罠

2021/7/5発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は7月5日発行分日経ビジネス『大は小を兼ねないー中小企業 再編論の罠ー』の感想をまとめます。日本の企業のうち99.4%を占める中小企業。人口減少に備え、再統合すべきという論調があります。しかし、淘汰されるべき企業とそうではない企業があります。中小企業のメリットを活かした企業例をぜひご覧下さい!

 目次:

 Part1:中小企業の大誤解

企業規模別統計

企業規模別統計

「中小企業は大企業に比べ、体力も低く生産性も低い」。世の中の一般認識としてそう捉えられています。しかし中小企業だからこそ、大企業に巣食う「新しい挑戦へのハードルの高さ」や「改革スピードの欠如」といった悩みに振り回されない経営ができている企業も存在します。以下6つの企業例を紹介します。

①「中小企業=技術力がない」の嘘(ツインバード工業)

ツインバード工業

ツインバード工業

日本でコロナワクチンの普及に欠かせない働きをした中小企業がいます。それが新潟県燕三条にあるツインバード工業です。同社が作る「ディープフリーザー」と呼ばれる携帯式冷凍庫が、ワクチンを安定的に超低温に維持しながら全国に運搬することを実現しました。

ディープフリーザーの核となっているのは、フリー・ピストン・スターリング・クーラー(以下FPSC)という技術です。円筒内でピストンが往復運動し、ヘリウムガスを膨張・圧縮することで冷却します。用途が非常に限定的で、コロナ禍以前は国際宇宙ステーションの日本実験棟などで使われてきました。

FPSCの技術は20年以上前からありました。しかし使用用途や将来の市場規模などが見通せない技術でした。先代社長の重勝氏が、シャープ元副社長の佐々木正氏の経営塾に学び、「競合にない技術を持て」の言葉とともに勧められたのがFPSCでした。

大企業にはびこる短期収益主義ではなく、長期的なメリットを信じ、新技術への開発を進める。この判断ができたことは中小企業の意思決定の身軽さによるものでしょう。

②「中小企業=アイディア力がない」の嘘(サンコー)

サンコー

サンコー

「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」や「ネッククーラーEvo」など、個性的な家電を投入する会社サンコー。売上高43億円の同社は大企業では通らないようなニッチで独創的な商品が盛りだくさんとなっています。

元々商社で勤めていた山光博康CEOは、昔の会社で度々新商品やサービスの提案を行うも却下されてきました。やりたいことを実現するために2003年に独立します。独自のアイディアを出すのは部門関係なく40人の全社員です。毎週1回、社内掲示板に自分の提案を書き込みます。優れたアイディアには商品化するかどうかにかかわらず賞金が出されます。その時に評価されるのが、実現性ではなく、前例のない提案です。一般的な市場調査なども行わず、真に世の中から求められていると判断できたものはゴーサインを出します。技術力のみならずアイディア力についても大企業に劣るとは簡単には言えません。

③「中小企業=働き方改革が遅い」の嘘(エス・アイ)

エス・アイ

エス・アイ

残業撲滅歴約30年といっていいエス・アイ。データ入力やウェブサイト制作を本業としている同社は、自由出勤制度を実施し、効率的な働き方を実現しています。自由出勤制度とは午前8時から午後6時の間であれば、土日祝日含めていつでも自分の好きな時間帯に出勤できます。賃金水準を高めに設定することで、残業手当を当てにしなくてもよい設計になっています。

エス・アイが働き方改革に着手したのは、1993年ごろ。今本会長の前職時代の働き方が影響しています。前職では100人の部下を抱える管理職だった今本会長は毎日のように深夜まで残業、土日は接待ゴルフと、365日ほぼ休みがありませんでした。部下も同様の働き方をしており、疲労困憊で仕事が効率的に回っているとは思えませんでした。会社の仕組みを変えるには今本会長一人の力では到底かなわず、独立して理想的な働き方を実現しました。このように、大企業では数年かかるようなダイナミックな改革も、中小企業のほうがスピード感をもって対応できる強みがあります。

④「中小企業=DXなんて無理」の嘘(木幡計器製作所)

DX優先度の調査

DX優先度の調査

中小企業でもDXを素早く実行している企業があります。それが100年以上続く老舗の計器メーカー木幡計器製作所です。

7代目木幡巌社長がホテルの地下駐車場で他社の計器の針が折れたまま設備が放置されているのを発見し、ショックをうけました。計器は機器が安全に作動しているのか計るための大事な製品です。それがメンテナンスされていない事実に愕然とし、DXを使った指針を遠隔でモニターできる商品を完成させました。人材確保としてシャープを早期退職したベテラン技術者を数名採用。そして周囲の中小企業と連携し、IoTの知識を高めていった結果でした。中小企業においても適切な危機感を持っていれば、DXに沿った変革が行われます。

⑤「中小企業=グローバル化なんて無理」の嘘(アイオニック)

アイオニック

アイオニック

大企業に負けず劣らずの「海外市場開拓力」を持つ会社もあります。その1つが、千葉県流山市で歯科用器具を製造するアイオニックです。売上高8億円のうち15%が海外を占めており、中小企業の売上高輸出比率3.6%を大きく上回ります。

海外市場を開拓するにはマーケティングやコンサルティングなどで大きな費用が掛かります。しかし同社は展示会や自社サイトでの発信等を通じて、商品をアピール。海外の販売代理店から問い合わせが入れば、独力で交渉し、販路を広げていきました。今では中国やタイ、米国、セルビアなどの代理店が持つ販売網も活かして約50カ国を開拓しています。

⑥「中小企業=ダイバーシティなんて無理」の嘘(小金井精機製作所)

小金井精機製作所

小金井精機製作所

自動車レース「F1」用の関連部品を中心に、航空機や次世代電気自動車のエンジン用部品を手掛ける小金井精機製作所。同社は現場の技術者約270名のうち、1割強の30人がベトナム人です。いずれも正社員で業務内容から給与水準、人事評価、福利厚生まですべて日本人と同じ待遇となっています。

同社が外国人社員を受け入れるきっかけは2007年でした。先代社長が知人から「ベトナムでは優秀な人材が職に就けない」と聞き、採用を行いました。当初は言語の壁、文化の壁がありました。池の鯉を食用として捕縛するなどの事件もありつつ、粘り強くサポートを行い、採用活動を止めませんでした。

その結果現在ではベトナムの後輩にも小金井精機の評判は広まり、さらに人材が集まる武器になっています。

Part2:やみくもな統合は危険

大阪大学社会経済研究所結果

大阪大学社会経済研究所結果

「日本経済が停滞する最大の原因は生産性の低さ。その主犯は賃金が低く、効率化の投資をする資金的余裕にも乏しい中小企業にあり、彼らを整理統合してこそ国全体の生産性は高まる。そのためには、毎年5%程度の最低賃金引き上げに対応できない企業は統廃合し、60年までに中小企業の数を現在の半分以下、160万社程度まで減らすべきだ」とデービッド・アトキンソン氏は語ります。

理念的には「長期的な視点をもつ」「大企業病になるような複雑なルールを作らない」などの約束事を守っていけば、統合したとしても強い企業が残っていくと思われます。しかし、大阪大学の研究において興味深い結果が示唆されました。それは「日本人は自分が一番得をする方法よりも、相手が損をする方法を優先する」傾向があるというものです。これに従うと、やみくもな統合は相手の足を引っ張りあう形での統合になっていまうかもしれません。

統合の1つの形として参考になるものが由紀HDの例です。

由紀ホールディングス

由紀ホールディングス

由紀HDは現在11社を傘下に加えています。独自の技術があるけれども資金面や人材、マーケティング面などで弱みのある中小企業に対し、横ぐしで全社的な業務の効率化を図れる統合を行っています。人口減少する中で中小企業の統廃合は避けられません。日本の競争力を強化しつつ、うまく統合を推進することが必要不可欠です。

感想

中小企業統合における国のスタンス、および中小企業でも生き残ることができるケーススタディを学ぶことができて有意義でした。

中小企業が統合されていくべきであることは賛成です。経済的な規模感は必要不可欠だと思います。しかし統合する際に合理的な判断がされないリスクが、日本では高いということは意識しておくべきだと感じました。周囲に協調を求める日本ならではの感覚だと思います。いい面と悪い面は表裏一体ですが、最近は日本の規律性が悪い結果につながるという情報が多いと感じます。今一度いい面を見つめ直すべく、今回のまとめをその契機とします。

今週の本紹介

日経ビジネスで特集されている話題の本を紹介します。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。