27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『エネルギー維新』を読んで

エネルギー維新

2021/6/14発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2021年6月14日発行分の日経ビジネス『エネルギー維新』を読んだ感想をまとめます。

待ったなしと言われている地球温暖化対策として、カーボンニュートラルが叫ばれています。カーボンニュートラルを達成するために企業が行っている取り組みをまとめました。

ぜひご覧ください!

 

目次:

 

PART1:エネルギー需要者の変化

各国の電源構成

各国の電源構成

「日本の温暖化ガス排出量を2030年度までに13年度比で46%削減する」と公約した須賀首相。さらに2050年にカーボンニュートラルを達成することを目標としている中、日本企業もそれぞれ動き出しています。PART1ではエネルギーをどのように使うかで工夫をしている企業の実例を確認しましょう。

トヨタの焦り

日本において最大の貿易輸出の稼ぎ頭であり、雇用の担い手である自動車産業。そのトップといって過言ではないトヨタ自動車の豊田章男社長は、脱炭素の流れに焦りを感じています。

理由は2つあります。1つめは脱炭素化=電気自動車化という流れにおいて、エンジン機構に携わるTier1以下の雇用や日本の持つ技術的影響力がなくなることへの危惧です。豊田社長は政府に対しても、電気自動車に向かわせるだけではなく、水素自動車などの他の技術へのモチベーションを削ぐような政策はやめてほしいと発言しています。

2つめは、製造におけるCO2排出量が他国での製造よりも多くなり、日本で製造した車が国際市場では販売をためらわれる可能性があることです。

その危機に立ち向かうため、トヨタは昨年6月、中部電力、豊田通商と再エネ電源の取得・運用を手掛ける共同出資会社を設立しました。

イオン

イオンの太陽光パネル

イオンの太陽光パネル

今年の新中期経営計画で「2030年までに国内の再生可能エネルギーの導入率を50%以上にまで引き上げる」と宣言したイオン。

現在太陽光などの再エネの比率は約1%ですが、立体駐車場の側面をすべて太陽光パネルにするなどの施策によって、30年までに700店舗ほどの電力をすべて再エネに切り替える予定で進めています。

また、再生エネルギー導入のための精度である固定価格買取制度(FIT)が終了した家庭から再生エネルギーを購入することも始めています。FITは10年間は高値の決まった金額で購入してもらえる制度ですが、2009年から開始されたもののため、卒FITの家庭などが増えています。そこで電力会社に8円で売っているところ、イオンは7円+2円分のWAONポイントを付与する(=実質9円で購入する)ことで再エネの調達を高めています。

東京電力、東レ

再エネの出力変動

再エネの出力変動

東京電力と東レの共同で取り組んでいるのが、再エネの「貯蔵」です。

再エネの弱点は発電量にムラがあることです。ある時間では多く発電され、ある時間では全く発電されないことがあります。現在蓄電池も普及していますが、まだ十分に貯蔵できるわけではありません。

そこで東京電力は太陽光で発電した電力により水を分解し、水素を取り出す仕組みを東レの特殊な膜とともに作りました。その水素を使い、ほかの会社の工場などでボイラーを動かしたりしています。

現在はまだプロパンガスにコスト面でメリットを出すことができていませんが、液体化することによる体積の減少で物流コストを下げることが可能です。千代田化工建設は水素の運搬方法に焦点を絞って技術開発を進めています。

東京製鉄

東京製鉄は九州電力を協力し、再エネの発電量に応じた工場稼働を行っています。

東京製鉄は今まで電気代が安い夜間に工場を稼働させていました。しかし2017年に日中の再エネが使いきれなくなる恐れがあった九州電力から、日中の電気を使うように東京製鉄に相談しました。東京製鉄は電気代を安くしてもらうことで両社にとってWin-Winな関係を築くことができました。

京セラ

京セラの自己託送

京セラの自己託送

自社の工場やオフィスで使う電力を自己調達の再エネで賄う方針が京セラです。

遠隔地で作った電力を送りながら、大規模な蓄電施設も準備することで送電量を一定に保つ仕組みを作り上げています。

PART2:脱炭素化への取り組み

つづいてPART2ではカーボンニュートラルよりもさらに高い目標を掲げている企業を紹介します。

花王

花王の取り組み

花王の取り組み

花王の目標は「2050年までにカーボンネガティブを目指す」です。カーボンネガティブとは自社で排出する量よりも、削減する量のほうが多い状態を指します。

短期的には再エネ設備の整備や購入電源の脱炭素化を、長期的にはCO2を原料とした新素材で容器などを製造することを目標に技術開発をしています。

また、2006年から社内独自のカーボンプライシングを投資判断に組み込みました。例えば設備投資の場合、投資金額を何年間分の利益で回収できるかで判断しますが、利益だけでなく、CO2削減量を金額換算し、投資判断を行います。

日立製作所

日立製作所も政府目標よりもチャレンジングな「2030年度カーボンニュートラル宣言」を発表しています。

東原社長のトップダウンで活動を推進。省エネ関連で600億円、再生可能エネルギーなどの創エネ関連で240億円を投じ、電力消費量を22%以上、CO2排出量を24%以上削減しました。

また社内独自のカーボンプライシングであるICP(インターナル・カーボンプライシング)を花王同様に導入し、CO2排出量1トンあたり5000円と設定。通常の投資基準に満たない省エネ設備にICPの観点を取り入れました。

ヤフー

23年度までに事業用の電力を100%再エネ化するとぶち上げるヤフー。チャレンジングな目標設定の裏には「時間をかけることのアンチテーゼとしたい」という思惑があります。

再エネ化をする方法は2通りあります。1つは太陽光、水力発電、風力発電などの再エネの電力を購入することです。2つ目は「非化石証書」を購入することです。

非化石証書とは化石燃料由来の電力でないことを示すもので、日本卸電力取引所で取引されています。これを購入することによって、非化石電力を割り当ててもらえるということになります。ただし、多くの事業会社が非化石証書を求めることになると、需要はどんどん上がり、価格が高騰することにつながります。

東京ガス

東京ガスの取り組み

東京ガスの取り組み

東京ガスはシェルからカーボンニュートラルLNGを購入し、販売しています。

カーボンニュートラルLNGの仕組みは、LNGの燃焼時に発生するCO2分シェルが植林などのCO2削減につながる活動を行っています。その活動により「炭素削減のクレジット」をシェルが購入し、排出分と相殺しているため、このLNGはカーボンニュートラルとなるという理屈です。

東芝や三菱地所、ヤクルトなどの企業がカーボンニュートラルLNGを使った冷暖房システムを導入しています。

ヨーロッパ企業(オーステッド、イケア)

電源別発電コスト

電源別発電コスト

デンマークの再生可能エネルギー会社であるオーステッド。もともとは石油ガス生産と、石炭火力発電事業がメインでした。

しかし2008年に洋上風力発電事業に投資を集中させることを決断し、化石燃料や原子力の発電コストより安い競争力を身につけました。そして現在世界最大手の再生可能エネルギー会社になっています。

イケアでは20年に再エネ投資による発電量が電力需要を上回りました。温暖化ガス削減の取り組みは多岐にわたり、風力発電機や太陽光パネルの設置、ミートボールの原料を植物由来に切り替え、家具のリユース販売など、多くの取り組みを行っています。

PART3:日本企業の行く末

日本企業の強みと弱み

日本企業の強みと弱み

かつて日本は環境先進国と言われていました。1970年代に起きたオイルショックの機に、省エネ活動を推進し、太陽光発電などの再エネ開発でも先行。緻密な分別回収によるリサイクルでも世界を驚かせました。

しかし原発事故をきっかけに火力発電に頼る電力構造は改善されませんでした。再エネをメインの電力とすると宣言したのが2018年であり、その間に日本は他国の取り組みのスピードに取り残されました。

脱炭素化は日本の低成長打破の処方箋にもなります。この変化の激しい時代の中で、チャレンジングな目標の達成に向けて、やり通す。約束を守る日本人の美徳を今こそ活かし、脱炭素化とグローバル社会での成長を達成しましょう。

感想:

ヨーロッパの取り組みの先進性に度肝を抜かれました。もちろんトップ企業の例であることはわかりますが、日本の企業でそこまで徹底して環境問題に取り組んでいる企業は見当たりません。

私の会社でも数年前からSDGs(持続可能な成長目標)に沿った経営方針の発表がなされたり、再エネ率100%のグリーン工場の実現などに取り組んできました。それ自体は非常によい姿勢だと思います。そしてほかの企業との差異化がここでできるように、先取の気概でカーボンネガティブな会社にしたいと感じました。

また、これから確実に企業のCO2排出量を下げるor相殺するサービスや製品は必要になります。この商機を逃さずに、自分自身もなにができるか考えなくてはならないと思いました。

最後に:今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。