27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『物流革命 フィジカルインターネット』を読んで

日経ビジネス表紙「フィジカルインターネット」

2019/9/16発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は2019年9月16日発行分の日経ビジネス『物流革命 フィジカルインターネット』の感想をまとめます。

ネット通販などの発達につれ、物流業界の労働環境は過酷なものになっていきました。その解決策となるのが「フィジカルインターネット」という新しい物流網の考え方です。

今後の物流のスタンダードになる考え方だと思いますので、ぜひご覧ください!

 

目次

 

PART1:フィジカルインターネットとは?

通信業界で起こった革命が、物流でも起きようとしています。

電話線で電話局を介しながら行っていた通信が、インターネットにより効率的かつ低コストで情報のやり取りをすることができるようになりました。物流網においても、物流拠点同士をつなぐのではなく、オープンシェアリングによって効率的なモノの移動をできるように目指す考え方がフィジカル・インターネットです。

詳しい説明を見ていきましょう。

現在の物流:ハブ・アンド・スポーク

ハブ・アンド・スポーク型

ハブ・アンド・スポーク型

従来の物流は物流拠点同士を結び、そして物流拠点から個人のお客様に届ける「ハブ・アンド・スポーク型」でした。大都市圏にハブを置き、そこに一度荷物を集約したうえ拠点ごとに仕分けて配送する。フェデックスの創業者フレッド・スミス氏が大学生時代に考案したもので、最も効率的な方法と考えられてきました。

ハブ・アンド・スポーク型は一度に大量の荷物を処理できる点がメリットです。その一方で必ずハブを介するため、移動距離は長くなる傾向がありました。さらに物流量が増えれば増えるほど物流網を整備しなくてはなりません。しかし物流量が増えたからと言って稼働能力をフルに使っているかというとそうなってはいません。

例えば即日配達のサービスが増え、物流量や稼働する回数は増加します。しかし一回当たりの積載率がMAXの状態かといえば、そうではありません。そのロスをなくす方法こそがフィジカルインターネットです。

未来の物流:フィジカル・インターネット

フィジカル・インターネット型

フィジカル・インターネット型

インターネットがパケットという考え方を用いて、データを細分化し送ることに成功したように、物流においても荷物を小口に分け、それぞれの空いているトラックや物流網を活用して運ぶ。それがフィジカル・インターネットのイメージです。

フィジカルインターネットを実現するためには、いままで各企業ごとに持っていた物流網をオープンにすることが必要となります。すでにアマゾンでは自社の物流設備をほかの企業にも提供しています。自社のサービスを外部にも使ってもらうビジネスモデルはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)でも見られました。

フィジカルインターネットが現代に発展した理由は下記2点です

  • 翌日配送や時間指定などの顧客ニーズの多様化
  • GPSやAIなどのテクノロジーの進化

顧客ニーズが変更したことにより、移動距離にロスがあるハブ・アンド・スポーク型よりも小回りの利くフィジカルインターネット型を志向するようになりました。また小口の荷物をバケツリレー式に運んでいくためには、荷物がどこにあるか、空いているトラックはどこにあるかを知る必要があります。そしてその情報をマッチングさせるための技術も必要です。

シェアリングエコノミーが普及してきた現代だからこそ実現できる物流網がフィジカルインターネットです。

フィジカルインターネットのメリット

物流改革の影響

物流改革の影響

フィジカルインターネットの普及によって5つのメリットが挙げられます。

  1. 倉庫の稼働率向上
  2. トラックの積載率向上
  3. 物流業界の働きかた改革
  4. 環境負荷低減
  5. 価格の弾力化(多様化)

倉庫やトラックの稼働率向上は外部サービスを受け入れることによって、倉庫やトラックの空きを埋めることにつながります。

物流業界の働き方改革は、現在ドライバーが荷物の積み込みなどを行ったりと過酷な労働環境になっています。その担い手が増えることで長距離移動がなくなったり、一人で行う作業量が減少する可能性もあります。

環境負荷低減は移動距離が短くなったり、ラストワンマイルをウーバーイーツのように個人の自転車に任せることでCO2の削減につながります。また小口に荷物を規格化する必要があるため過剰梱包の見直しにもつながります。

価格の弾力化においては、顧客のニーズによって値段に差をつけたり、個人でも物流の仕事を受注できるようになり、価格の競争が起きる可能性があります。

PART2:悲鳴を上げる物流現場

本章では物流現場の現状についてまとめます。配送コストの値上げなどが記憶に新しいですが、実際の現場の課題は何なのか。見ていきましょう。

配送業界の現状

物流業界 現状

物流業界 現状

2017年にドライバーの長時間労働や未払いの残業代支払い問題が表面化したヤマトHD。その後ドライバー不足を理由に最大顧客のアマゾンなどの法人顧客に大幅な値上げを提示し、受け入れる荷物量も抑制しました。

輸送重量は減少していますが、宅配便貨物の量は急増。そしてドライバーの高齢化に伴い、現場は窮しています。また、1990年に貨物自動車運送事業法が施行され、配送業への参入のハードルが下がると、事業者は1.5倍の約6万社に増えました。その中で仕事を得ようと荷物の積み下ろしや検品、フォークリフトでの倉庫内の運搬などの業務も配送料金に含めずに請け負いました。その結果労働時間は長時間化し、現場の疲弊を招きました。

配送業界の打ち手

大手会社の共同配送

大手会社の共同配送

ヤマトHDでは、ジョージア工科大学とフィジカルインターネットの共同研究をおこなうことに合意しました。ヤマトグループ総合研究所理事長を務める木川氏はオープンシェアリングにも積極的な姿勢を示し、ライバル企業の佐川急便でも「ヤマトの倉庫を活用してもらって構わない」と発言しています。

またフィジカルインターネットの一歩目とも言える共同配送が大手企業の中で普及しています。ハウス食品グループやカゴメ、日清フーズ、日清オイリオグループの大手食品メーカー4社が設立した共同物流会社「F-LINE」。共同物流にすることによって1日に74台必要だったトラックが60台にまで圧縮され、コスト面や環境面でもプラスになっています。さらに物量が増えたことにより交渉力が増し、小売業者からの注文確定日の前倒しなどの成果を得ることができました。

PART3:物流革命の動き

物流業界はまだまだ課題が多く残ります。その課題をデジタル技術で解決し、商機を狙っている「新参者」が存在します。どのような取り組みがおこなわれているのか見ていきましょう。

物流業界の商機

物流業界の商機

物流業界の商機

オフィス用品最大手アスクル。同社の物流センターでは積載能力が1トンを超える楕円型ロボットがトラックからの荷物を運んでいます。客先ごとのコンテナへとしょうひんを仕分ける際には専用の吸盤が付いたアーム型のロボットを使用。吸着力を間違えれば梱包の破損につながる繊細な制御が必要ですが、事前に製品を登録することでロボットとの共存が、現場で図れています。さらに配送においても顧客の倉庫に届いた荷物を、登録した個人が届けるサービス「エコ配フレックス」を行っています。(現在は都内の一部地域のみ対象)

ネット通販事業を行っている楽天も自社物流を持つために2000億円を投じると表明しています。既存物流業界が悲鳴を上げている中で自社物流を整備し、即座に配送できる体制を整えます。またネットスーパー事業を共同で手掛けている西友の店舗も配送拠点として「活用することを考えている」と明かしています。

CBクラウドが提供する荷主とドライバーをマッチングする「PickGo」。19年8月時点で1万2000台が利用するサービスになっています。過去のマッチングでの評価が格付となっており、ドライバーも良い仕事をすれば、さらに仕事を受けやすくなる仕組みです。

印刷・物流サービスのラクスルもスマホやPCを介したマッチングサービス「ハコベル」を提供しています。同社のサービスの強みはトラックの輸送距離や拘束時間などを入力するとすぐに見積もり金額が提示される点です。この「明朗会計」の背景にはドライバーの待遇改善が商機になるとにらんでいるからです。

またドライバーの待遇改善につながるサービスはほかにもあります。Hacobuが開発した「MOVO」というサービスを使うと、倉庫でのトラックの停車スペースをあらかじめ予約できます。従来は倉庫での停車スペースを確保するために、早朝から倉庫近くにトラックで並ぶ必要がありました。それを改善することで、長時間労働の是正につながります。

多くの企業が物流業界のゆがみに切り込み、新たなる商機をつかもうとしています。

PART4:フィジカルインターネットの影響

日本はインターネットの普及に伴い、デジタル市場で敗北を喫しました。ネットの普及前までは製造業で飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本。2000年代にはNTTが光ファイバー力を入れ、米国を上回る通信速度のブロードバンドネットワークが構築されていました。そしてモバイルインターネットの先頭を走っていたのはドコモの「iモード」でした。動画や音楽の配信サービスやゲームや決済のアプリを提供するビジネスモデルはのちにグーグルやアップルなど、スマホ用OSを開発する事業者に影響を与えたといわれています。

しかしながら先を見通す力が欠けていました。明確な戦略や大胆な投資ができず、現在のデジタル市場から退場することになっています。物流業界におきる革命においては、同じ轍を踏まないよう、スピード感を持って課題解決に情熱を注ぐべきです。

感想

物流業界の知識が乏しかったため、現在のハブ・アンド・スポーク型物流の整理から最新のフィジカルインターネットの内容まで網羅でき、大変参考になりました。また17年のヤマトの値上げにおいても、詳細背景や物流業界の課題についても理解できていなかったので、有用な記事でした。

以前日経ビジネスで楽天の特集の記事をまとめました。

www.jiujingrentang.com

内容は楽天モバイルについてが中心的でしたが、楽天が独自の物流を整備しようとしていることもその時に知りました。当時は「通信販売事業を固めるための布石」としか認識できていませんでした。

しかし本記事を読んで、日本の物流業界が限界を迎えていること、そしてフィジカルインターネットを楽天の物流上で定着させることができれば、日本における物流のプラットフォーマーになることができ、さらに楽天の基盤を盤石にできることにつながると理解しました。尚、個人的には楽天経済圏でお世話になっているため、頑張ってほしいですが、楽天に物流業界への投資余力が残っているのか不安です。楽天モバイルの基地局でも納期遅延や接続性が不安視されているため、携帯電話事業においても投資がかさむのではないかと思っています。

また晃一さんという方のブログで物流業界で働くメリットデメリットを読みました。そこで書かれているように「需要が安定している」ということは間違いないなと感じました。これからもネット通販が増えていくでしょうし、かといって物流自体はなくならないので、このような消滅しない業界のことを理解することは重要だと思います。皆さんもぜひ晃一さんのブログをチェックしてみてください。

www.kokorotime.com

当たり前のように享受していたサービスでも人の手を介在していることに思いを馳せ、世の中の課題を見つけれるようになりたいです。

最後に:今週の本 紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

  • 『女たちのテロル』
  • 『何が私をこうさせたかー獄中手記』
  • 『子どもたちの階級闘争』

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

次回のブログでお会いしましょう。