27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】『アメリカの高校生が読んでいる税金の教科書』を読んで

アメリカの高校生が読んでいる税金の教科書

アメリカの高校生が読んでいる税金の教科書

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は『アメリカの高校生が読んでいる税金の教科書』の感想をまとめます。具体的な節税策云々よりも、税金政策に影響を与える大きな政府や小さな政府といった経済的な知識を整理することができます。ぜひご覧ください!

 目次:

本の概要

本書は税金を納める側と使い道を決める側の2つの面から税金を説明しています。構成は下記の4つに分かれており、1章が納める側、残りの3章が使う側の内容です。

  1. 第一章 家計の税金学
  2. 第二章 政府の税金学
  3. 第三章 「大きな政府」の時代
  4. 第四章 「小さな政府」の時代

当初は税金を納める側からみた節税等の話がメインかと思っていましたが、章の割り当てでもわかる通り、使う側の話に多くの紙面が割かれていました。本書の内容の中でとりわけ印象に残った点3点を下記で紹介します。

税金の歴史

10万ドル紙幣(ウィルソン大統領)

10万ドル紙幣(ウィルソン大統領)

税金の歴史は古来からありますが、アメリカの税金の始まりはウイスキー税から始まりました。初代財務長官のハミルトンが、アメリカ独立戦争での国の赤字を解消するために、流通量の多かったウイスキーに税金をかけました。当然民衆は反発し、一部地域では反乱もおきました。しかしハミルトンは軍を派遣し鎮圧することで、アメリカの税徴収への制度を整備していきました。

続いてアメリカで所得税が導入されたのは、1862年のリンカーン大統領時代です。南北戦争の戦費を調達するため10年間の期限付きで行われました。政府収入の20%を占める財源になり、継続的な導入をその後模索しましたが、叶うことはありませんでした。しかし、1913年のウィルソン大統領時代に導入することができ、1914年から勃発した第一次世界大戦の戦費も、所得税の税収から賄うことができました。ちなみにアメリカの紙幣の肖像画には、5ドル札にリンカーン、10ドル札にハミルトン、10万ドル札(現在製造中止)にはウィルソンが使われています。

当初アダムスミスの経済論のもと、自由経済の理論が世の中の主流でした。そのため政府の役割は「国防」「司法」「公共施設と公共事業」「元首の威厳維持」の4つだけでよい、いわゆる夜警国家とよばれるモデルが理想でした。しかし、自由放任主義の中社会的な問題も発生しました。それは貧富の差や公害問題です。そのため、貧富の差の拡大を是正する共産主義思想が誕生します。そして小さな政府から大きな政府へ時代の潮流が変わります。

共産主義以外にも大きな政府への変化点がありました。それは1929年「暗黒の木曜日」から始まる世界大恐慌です。それまでは失業者は次の職を求める「自発的失業者」のみでした。しかし世界大恐慌により会社からリストラされる人々が増え、「非自発的失業者」の存在が社会問題になります。それを解決するために立ち上がったのが、イギリスの経済学者ケインズです。

ケインズは「自由放任主義の終わりであり、不況克服のために政府が積極的な役割を担うべき」と主張します。つまり公共事業を活発にし、労働における総需要と総供給の差額を是正する(有効需要の原理)ことを求めました。また累進課税制度の導入も提案しました。その理由は高所得者のほうが入ってきたお金を使う比率(消費性向)が低く、貯蓄に回されるため、景気が良くなりません。これらのケインズの一連の考え方は非常に画期的で「ケインズ革命」と呼ばれるようになりました。そして、ケインズの取り組んだ経済学を、一国の経済活動全体を考える経済学ということで「マクロ経済学」とよびます。そして、それまでのアダムスミス以来の「神の見えざる手」による市場メカニズムの経済学を、個々の家計や企業の行動を考える経済学ということで、「ミクロ経済学」とよびます。

ケインズ経済が広がった20世紀半ばでしたが、70年代になると公共事業を投入しても、物価が上がり、失業者が増える状況になりました。つまりケインズ経済学でも解決できない状態になりました。そこで出てきたのが、「マネタリズム」という考え方です。マネタリズムとは通貨供給量の伸び率を安定させることでインフレ率をコントロールできるという考え方です。それにより国家が介入する大きな政府からまた小さな政府へと揺り戻しがおきました。

さらに鉄の宰相ことサッチャー首相は、「最小限国家」のスローガンのもと、公共事業の民営化や規制緩和を行いイギリス経済を立て直しました。アメリカでもレーガン大統領がマネーサプライを調整しインフレを抑えたり、税率を下げることで経済の活性化を図りました。このように小さな政府が20世紀後半には求められることになりました。

そして現在ですが、再度貧富の差や環境問題が取り沙汰されています。それらを是正するため政府の果たす役割は大きなものを求められるようになるでしょう。小さな政府と大きな政府はケインズ経済以来およそ30年周期でめぐっているようです。

2つの増税方法

2010年時点控除種類例

2010年時点控除種類例

政府が国民に課す税金を増やす方法は2つあります。

1つは皆さんもなじみのある消費税などの増税です。現在ある税率を引き上げることによって税金が増えます。もう1つは今ある控除枠を減額することにとり、税収を増やす方法です。具体的にいうと基礎控除額を減額したり、配偶者控除や生命保険控除などをなくすことによって、課税所得が増えることになります。

上記写真のとおり、日本には控除枠がいろいろとあるため、自分に関係する控除額を認識することが大切だと感じました。わかりやすい消費税の増税だけに目がいかないように、政策を選ぶ際は確認したいと思います。

赤字国債発行の原理

2021年度日本政府予算案

2021年度日本政府予算案

現在日本政府の収入における公債金は2021年度予算では約1/3を占めています。また現在の公債残高は平成30年度時点で883兆円です。世界一の借金大国と呼ばれます。

借金をしているにも関わらず、なぜ日本はさらに新規国債を発行するのでしょうか。それは国債発行の際のルールを下記の通りにしているからです。

「将来にも財産として残る資本的支出、建設国債の発行はOKだが、公共投資のための資金調達としての赤字国債の発行はやるものではない」

つまり将来のもうけになる投資なら借金してもいいし、その場しのぎの借金ならばダメということです。至極全うな話ではありますが、問題は日本の国債が果たして将来のもうけになり、返済余力があるものにすべて紐づいているのかです。「日本人の預金をすべて集めれば、国債は全部返済できるほどある」という主張はよく耳にしますが、冷静に考えて右肩上がりで借金が増えているのは適切ではないと思います。今回考え方はわかりましたが、妥当性については自分の頭で考えることが必要だと思います。

感想

即効性のある節税の話ではなく、税金を使う政府とはどうあるべきかを考えることができた読書体験でした。政治のことを真剣に考える時間はなかなかとれないため、いい機会になりました。また、気づかないうちに損を被らないように、選挙への参加や政治の動向の注視などこれからも行っていきたいです。

尚、本書は2010年発行のため、最新の税制を知るためには別の本をおすすめします。 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。