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本日は『アメリカの高校生が読んでいる会計の教科書』の感想をまとめます。社会人にとって基礎となるお金の流れについて基礎的な内容を知ることができます。ぜひご覧ください。
目次:
本の概要
本書は会社の血液ともいえるお金の流れ=会計についての本です。構成は下記5章立てになっています。
- 第一章 株式会社の仕組み
- 第二章 決算書と複式簿記の仕組み
- 第三章 取引を記録するー開業から最初の取引までー
- 第四章 取引を記録するー売掛、買掛の処理から棚卸、決算までー
- 第五章 会計から利益が生まれる
最初に会社に関する予備知識として、事業経営の無限責任と有限責任、資金繰り(銀行融資と株式発行)などについて解説があります。つづいてお金の入りと出を管理する複式簿記の説明があります。第三章以降で実際にTシャツのオンライン販売を行う場合のケーススタディを例に、お金の流れと会計のつけ方を記録します。そして最終章となる第五章で、企業における会計の重要性をまとめています。
具体例に沿った説明があり、内容も非常に理解しやすいものでした。つづいて本書の中で特に印象に残った内容を2点紹介します。
会計の歴史
会社の決算資料で見る貸借対照表や損益計算書も、時代の変遷とともに改善が行われてきました。
現在の損益計算書のルーツは、11世紀のイギリスにあります。イギリスでは現金計算書というものがありました。15世紀の大航海時代に入ると、取引内容が複雑化します。そして他人から出資を募る「株式会社」の形態が発足し、収支報告が行われるようになりました。オランダの東インド会社が世界初の「株主の有限責任制」を採用しています。しかし、このころの会計はプロジェクト単位であり、1回のプロジェクトの会計が完了すると解散し、利益を分配していました。現在のように、利潤の最大化のために継続的に活動する前提(ゴーイングコンサーン)の会社運用ではなかったため、未来に使用できる資本や負債を示すための貸借対照表も必要ありませんでした。
資本主義が台頭し、株式会社が増えてくると、会計においても何らかの区切りを設ける必要が出てきました。そこでワンイヤー・ルール(1年基準)が設けられます。1年間の会計年度を企業自らが決め、その期間を基に定期的に会計報告を行います。日本では4月~3月の企業が多いですが、一般的には在庫が少なくなる閑散期を締め月にしている企業が多いです。
会計制度が確立するきっかけは1929年のアメリカ株式市場の大暴落「暗黒の木曜日」からです。それまでは企業の都合のよい会計ルールと情報開示がまかり通っていました。しかし、株式市場の大混乱が起きたのち会計制度の改革がはじまりました。決算書を作るための統一ルールの整備、公認会計士(CPA:Certified Public Accountant)の設置、監査制度の充実が図られました。その後掛けでの信用取引の発達や、発生主義(現金のやり取りではなく、取引が発生した段階で会計処理をおこなうこと)などもあり、さらに会計は複雑化していきます。
2001年には、アメリカのエネルギー取引企業の最大手エンロンが粉飾決算により破綻しました。エンロンの会計は不当に利益が水増しされており、しかもその会計監査をおこなっていた大手会計事務所アーサー・アンダーセンも不正に関与していました。この事件がきっかけで企業内統治を強く求めるサーベンス・オクスリー法(略称SOX法)が設定されました。
上記のように新しい取引形態が出てきた場合や、不正が出るタイミングで都度改善をおこなっています。その改善の結果が今学んでいる簿記に落とし込まれていると考えると勉強を頑張れる気持ちが湧いてきます。笑
管理会計と財務会計
一言に会計といっても、用途や目的によって会計の種類が異なります。会計は大きく分けると2つに分けられます。それが会社の経営判断に用いるための「管理会計」と、外部に公表する「財務会計」です。
管理会計とは、企業のお金の動きを経営判断に活かすために用いられます。例えば、財務会計上では「売上原価100万円」という数値があります。この中身を細分化すると、直接材料費・間接材料費・直接労務費・間接労務費・直接経費・間接経費に分けられ、さらにA工場・B工場・C工場と分けることができます。経営判断にとって、売上原価100万円という数値ではなにをどうすればよいかわかりません。100万円の中身を分解することで、問題点が明確化し、打ち手が分かります。これが管理会計です。
財務会計は決算や税申告などの外部に公表する数値です。この財務会計の中でもさらに「税務会計」と「財務会計」に分けることができます。
税務会計とは、その年の税金を申告するための会計処理です。この場合は企業としては税金を多く払いたくないため、できるだけ利益を圧縮しようとします。
一方財務会計は、株主や投資家が正しく企業価値を判断するための会計です。この場合企業は、税務会計とは逆に、利益が大きく出ているように見せます。
財務会計は未来に起こりうることについても、貸倒引当金や減損処理などで費用化することができます。これは問題を先送りせずにゴーイングコンサーンとしての企業価値を適正に判断するためです。一方税務会計ではあくまで確定したもののみ費用や利益として認めることができます。そのため税務会計での費用のことを損金、利益のことを益金といい、言葉の使い分けも行っています。
簿記の勉強をしていると財務会計と税務会計の使い分けが分からなくなるときがありました。今回この本を通して会計全体の理解を整理することができました。
感想
簿記の勉強中と相まって非常に学びの多い本でした。また、本を読むにつれて社会人に簿記の知識は必須であることを強く実感しました。苦手意識のあった税効果会計についても理解することができたので、簿記2級取得にむけて引き続き頑張ろうと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう。