27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『立ち向かう医療』を読んで

立ち向かう医療ーコロナ後改革への処方箋ー

2021/7/12発行分 日経ビジネス表紙

当記事にお越しいただき、ありがとうございます。

今回は7月12日発行分日経ビジネス『立ち向かう医療-コロナ後改革への処方箋-』の感想をまとめます。

本特集は4/26発行分の『ワクチン最貧国』の2ndシーズンのような記事内容です。ワクチンの普及が進む中、日本の課題とこれからの国の政策のあるべき姿がわかります。もしよろしければ、4/26発行分のブログをご覧になった後お読みいただければと思います。

www.jiujingrentang.com

ぜひご覧ください。

 目次:

Part1:ワクチン接種にみる日本の課題

ワクチン接種率

ワクチン接種率

ワクチンが導入され始めましたが、現場の混乱は枚挙にいとまがありません。かかりつけ医の場所で接種するように自治体から連絡があった70代のおばあちゃんは、「あなたのかかりつけ医ではありません」と医院側から拒絶されてしまいました。国が接種方針を自治体に任せ、さらに自治体は集団接種よりも地元の診療所での個別接種でまずは乗り切ろうとしました。その結果、受け入れ先の病院がすくないことが問題として起こります。

打ち手の人手不足の問題もあります。特に地方では打ち手が足りず、日給17万5000円という破格の値段で打ち手の医師を確保する自治体もありました。

続いてシステム面での不便さです。市の予約システムと県の予約システムが連携しておらず、市の予約を消してから出ないと、県の会場に変更できません。また、札幌市では市のサイトから予約ができず、予約の電話がひっきりなしになっていたそうです。その非効率さからワクチン接種担当大臣の河野太郎氏は職域接種への切り替えなどを行い、国主導の接種を推進しています。

ワクチン接種と医師会の協力

ワクチン接種と医師会の協力

国が出張ってきた背景に、7月中に高齢者への摂取を完了すると宣言した菅首相の「ショック」発言があります。5月に各自治体へ7月中の完了めどを調査したところ、14%が間に合わないと回答しました。その挽回のため、河野氏や総務省があの手この手で接種を推進した結果、6月の調査ではすべての自治体が7月中に接種完了予定と変わりました。

今回のワクチン接種では大きく2つの課題が判明しました。1つは自治体の課題であり、自治体の取り組みレベルに差がありました。2つ目は国の問題です。最終的に帳尻を合わせることはできましたが、最初から計画的に進めることができなかったのか疑問です。自治体へ丸投げするのではなく、最初から戦略的に摂取を行うようにすることが国に求められていました。

Part2:ワクチン以外の日本の医療課題

日本の水際対策

日本の水際対策

ワクチン接種以外のコロナ対策においても、日本の課題は多くあります。

その1つは水際対策です。東京五輪・パラリンピックの事前合宿で6月19日に来日したウガンダ選手団9人のうち1人が、到着した成田空港の権益で新型コロナウイルス陽性と判明しました。選手団の発症したものがインド型(デルタ株)であったことも含め、水際での拡大防止は重要な意味があります。

現在の日本の水際対策の流れは下記3つです。

  1. 外国を出国前72時間以内の検査で陰性証明取得
  2. 空港検疫所で抗原検査実施。陰性判定
  3. 国内での行動などについて規定を守る誓約書提出。14日間、自宅やホテルなどで待機する。位置情報を保存、求めに応じて提示

しかし、上記の対応が徹底されていない点が問題に挙がっています。まずPCR検査結果を提出する場所でのソーシャルディスタンス確保の不徹底。さらに健康確認や位置情報の取得のためのアプリを空港でダウンロードするものの、それを使用するためのIDとパスワードの連絡が届かない例もあります。そして毎日来るはずの健康チェックやビデオ通話による確認も未実施のケースもありました。

日本が決めた水際対策に協力しない入国者に対しては、罰則を行うような制度になっています。しかしながら、どんな違反に対してどのような処分になるかという基準を厚労省が作成できていないという批判もありました。

つづいての問題は医療ひっ迫です。日本は病院数8872,病床数約164万と、数値上は世界トップの医療整備がある国です。しかし、約8割が民間の病院で、そのうちの6割は200床未満の中小病院になります。加えて民間の約4割が赤字経営であり、そのような中小かつ赤字の民間病院はコロナ患者を受け入れられる余裕はありませんでした。

この状況を打開するには、公立・公的と民間の枠を超えた再編や医療機能の地域内での再整理が欠かせません。しかし、それを実現するのは極めて難しい状況です。民間の個人事業の医者の同意を得ることや、公立病院の再編における地域住民の理解をえることなどが具体的な課題となります。

人工呼吸の配分における調査

人工呼吸の配分における調査

このような医療ひっ迫は、恒常的に起こりえます。人口減とともに日本中の医療現場が需要縮小に直する一方、新型コロナのような疫病は想定を超える繁忙を今後ももたらしてしまいます。その際に考えなければならないことはトリアージです。

トリアージとは患者を重症度、緊急度などによって分類し、治療や搬送の優先順位を決める行為のことをいいます。今回のコロナウイルスによってイタリアなどではトリアージの必要性がでました。日本ではその議論をしなくてはならない一歩手前でこらえましたが、今後同じような疫病の蔓延に備え、この機会を活かして枠組みを作る必要があるでしょう。

Part3:これからの日本政府の対応

国・地域別の100人当たり接種完了人数

国・地域別の100人当たり接種完了人数

日本はワクチン開発においても後塵を拝す結果となりました。その原因はこれまでは国家安全保障戦略の一環としてワクチン開発を捉えられていなかったためです。そこで菅首相はワクチン開発・生産体制強化戦略に関する発言を行いました。

ワクチンに対する日本人の抵抗感はほかの国に比べて高いです。そのため治験の段階も多く、認証まで時間がかかっていました。2007年時点においても日本のワクチン行政について、変化点がありました。厚生労働省は2007年「ワクチン産業ビジョン」を策定しました。その結果、海外製ワクチンの輸入ハードルを下げることに成功しています。ただし、国内ワクチンの確保までは実現することができませんでした。

これまでもメッセンジャーRNAワクチンの研究開発プロジェクトに政府の資金援助が不十分だったり、昆虫の細胞を使って製造した遺伝子組み換えタンパク質を利用したワクチンが厚労省で難色を示されたことがありました。また今回のコロナ禍でも海外で有効性が確認できているワクチンを日本で治験することが求められた結果、普及が遅れたとも言えます。

日本のワクチン5つの壁

日本のワクチン5つの壁

ワクチンの国産化には2通りの方法があります。1つは開発から製造まですべて国産で行う方法。もう一方は開発は外部と連携し、製造を国内とする方法です。5月に日本で特例で承認されたアストラゼネカ製のワクチンは2つ目の方法に当てはまり、国産ワクチンといえます。グローバル化した現代では、1国で閉じられるワクチン開発-製造-販売ではなく、近隣諸国と協調したワクチン戦略の構築も1つの解になります。

Part4:これからの医療現場の対応

大阪府の医療現場状況

大阪府の医療現場状況

ワクチンの国家戦略だけではなく、医療現場の改善も必要です。コロナ禍で医療崩壊寸前になった経験を糧に変わり始めています。

医療崩壊をせずに病院を運営していくには、きめ細かな計数管理が必要です。関西と関東を中心に10病院と介護施設を運営する伯鳳会グループの理事長古賀資久医師は、コロナが蔓延し始めた際に経営にどのような影響がでるかをシミュレーションしました。その結果外来患者の現状などによりキャッシュが30億円ほど減少することがわかりました。そのため、前もって銀行から借り入れを行い、危機に備えるとともに、政府のコロナ支援を有効活用することで黒字をキープしました。

企業のようなムダを削減し、財務体質を強くすることは、有事の際でも医療現場が適切に働くことにつながります。山形県酒田市の日本海総合病院でも統合をきっかけに経営を筋肉質にしていきました。例えば高度な医療を中心に行う病院に特化させ、地域の病院はリハビリなどの回復期や長期治療に使用する場として役割の再編を行いました。また働くスタッフの生産性を高めるため、外来で来る人の待ち時間の短縮や、業務の分散化をすすめます。医者や看護師の生産性を高めることで、質の良い治療を行うことができ、患者の入院日数も減少しました。

日本海総合病院の変化

日本海総合病院の変化

サービスの質を高める例として、医療内容の仕組み化に取り組んでいるのが熊本市の済生会熊本病院です。医療の世界でクリニカルパスと呼ぶ手法を行っています。それは疾病ごとに患者の標準的な診療計画を設定し、医師や看護師など診療チームがそれに基づいて効率よく医療を展開していく仕組みです。

例えば手術日の前日には「手術の準備ができている」、翌日は「疼痛コントロールができている」、5日目には「歩行ができる」といった日にちごとの目標を設定。それに合わせてタスクを設定し、医療チーム内の担当者が実行します。患者の病状によって計画が変更になる場合も、データとして残し、次の計画作成に活かします。現在では約7割の病気に対してこの手法を使えるようにすることができました。

上からの制度の改革だけではなく、現場からの改革を続けていかなくてはなりません。人口減少による医療人材配置の再編も現在はほとんど進展していません。オンライン診療等新しいテクノロジーとサービスを駆使した、新たなビジネスモデルの登場とともに、日本の医療の改革が待ち望まれています。

感想

医療の課題は常にあるにもかかわらず「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の言葉通り改革ができていないと感じました。このような難しい課題は長期的ビジョンに沿って、着実に実行を重ねないとうまくいきません。使命感を持った医師団か、新たなるビジネスモデルの創始者の登場を待つしかないのだろうかと思いました。

また私も含めて、日本の医療問題を正しく理解できている人が少ないことが原因かもしれないと思いました。私も日経ビジネスを読むまでは日本のワクチン戦略や医療体制がどれほど課題かは意識しませんでした。おそらくなにかあっても救急車は呼べば来てくれると思っています。自分自身の当事者意識の低さを恥じ、これを機会に日本の課題を学びたいと思いました。

今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!

皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう。