今回は2020年3月16日発行分の日経ビジネス『どうする?働かないおじさん』を読んだ感想をまとめます。
トヨタ自動車の豊田章男社長からでた「終身雇用難しい」という発言や、ファミマや富士通での早期希望退職者の募集など、昔のような雇用体制に綻びが生じています。
時代の変化の中でミドル層もしくはそれ以下の世代はどのようにキャリアを拓けばよいのでしょうか?
ぜひご覧ください!
目次
- Part1:迫られるキャリア自立
- Part2:自身のキャリアの人間ドックを
- Part3:ミドル層の「レジェンド」からの助言
- Part4:会社を”使う”ニューミドル
- 編集者インタビュー:経団連会長 中西宏明氏
- 私の感想
- 最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介
Part1:迫られるキャリア自立
2020年、日立製作所では「入社式」を廃止し、新たに「キャリア・キックオフ・セッション」と名付けたイベントの開催を予定していました。コロナウイルスの影響で今年は中止になりましたが、自分のキャリアは自分で気づくものだというメッセージを新入社員に伝えるためのイベントでした。
経団連会長の中西宏明氏も「終身雇用は限界」と発言している通り、日本型雇用ではグローバルで通用する企業成長は難しくなっています。
日本型雇用は「終身雇用」、「年功序列」、「企業内労働組合」が特徴です。日本型雇用は、大量消費・大量生産の時代で1つのことを極めていくためにはよい人事制度でした。しかし、デジタル社会で社会変化のスピードがあがると、その変化についていけなくなっています。
今雇用形態の見直しを進めているのが、冒頭に述べた日立製作所です。まず2011年に管理職以上をジョブ型の評価制度に変更しました。従来までは過程を重視し、社内の論理で評価が決まる職能型でしたが、ジョブ型とは職務の内容(結果)で評価が決まる制度です。世界的にはジョブ型の人事制度が一般的で、職能型の制度ではグローバルの優秀な人材を確保できなくなっています。そして日立製作所は今後一般社員においても職能型からジョブ型への移行を進めています。
トヨタ自動車も社員一人一人が主体的にキャリアを築くよう求めています。2020年の労使協議会では、初の「労使使」という3者協議になりました。労働者である組合員と管理職や執行役員で構成される会社側①、そして豊田社長含む取締役で構成される会社側②の3者協議です。豊田社長が直接管理者側にも意見をぶつけたいという思いがあり、3者協議になりました。また一律で昇給する仕組みを廃止し、考課による反映額を大きくする賃金改定案を労組に提案しています。
黒字企業のリストラも目立ってきています。2020年に早期退職を実施する主な企業は、セブン&アイHD、ファミリーマート、味の素、エーザイ、シチズン時計などです。味の素ではジョブ型への移行を図る中で、将来の人事制度変更による風景を共有し、そのうえで個人にキャリアパスを選んでもらっています。リストラの目的は人件費抑制ではなく、あくまでも新しい人事制度への変革に適用できる人材を選抜するためです。
日本の企業全体がジョブ型の人事制度への変革を行う中、個人はどのような準備をするべきでしょうか。
Part2:自身のキャリアの人間ドックを
今までの日本型雇用においては、自分の評価を映すのは会社の上司だけでした。しかし、今後は会社以外の社会での自身の活かし方を探さなくてはなりません。そのため、自分のスキルの棚卸を行いましょう。
写真の「イエスノーチャート」にそって、転職や副業、独立など多様なルートのどれが自分にマッチするか確認します。そして、いままでのキャリアの中の「モチベーション曲線」を描き、自分の特性、長所や好きなところを洗い出しましょう。
また今すぐできるマインドチェンジとして4つ方法が紹介されています。
- 「好き・嫌い」「得意・不得意」のマトリックス作成
- 「組織・個人」「問題・解決策」のマトリックス作成
- 学び続けないことの危うさを認識
- 「アクション・スキル・マインド」の毎日の振り返り
①については、自分の強みを生かせる仕事内容を明確にすることに有用です。好きかつ得意に入っている仕事を多くし、できる限り嫌いで不得意な業務内容をやめるようにしましょう。
②については、個人や組織の問題を可視化させることで、次の行動を明確化させます。それにより自分のキャリア形成に足りない点を改善しようとするモチベーションにつながります。
③については、今の社会変化のスピードの速さにおいては、学び続けない大人は次の世代のこどもと同列程度の知識しか身についておらず、結果として子どもにスキルで逆転されてしまう危険性を説いています。今の日本型雇用では若いころは会社への貢献度に対し、賃金面が低く設定されており、その若いころの過小支払いを年功序列によって取り戻す構造になっています。取り戻すステージになったときに首を切られないよう、これからの大人は学び続ける必要があります。
④については、自分のキャリアを決めていくためには毎日の振り返りと言語化が必要ということです。「なぜその行動をとったか」「どんなスキルが生きたのか」「どんな意味があったのか」を振り返り、繰り返していくと、将来、点と点がつながる瞬間がくるのです。自分の望むキャリア・夢は準備しているものだけにくるものです。
Part3:ミドル層の「レジェンド」からの助言
人生100年時代においては40歳、50歳はまだ折り返し地点にすぎません。
そこでミドル層の「レジェンド」からの助言を紹介します。
スキージャンプメダリスト 葛西紀明氏の言葉
葛西選手は20年6月で48歳です。1988年に世界の舞台にでて、そこから32年間スキージャンプの第一線で活躍されました。
そんな葛西選手も挫折を乗り越えて成長しています。
最初の挫折は92年、とび方のトレンドがV字に変わり、その姿勢で飛ぶことへの恐怖を克服できませんでした。2回目の挫折は94年、V字の飛行姿勢に慣れたころ、合宿の最中に空中分解し、鎖骨をおりました。そこから10年間恐怖心を引きずりました。3回目の挫折は98年の長野五輪の時です。団体メンバーは金メダルを獲得しましたが、葛西選手は足のケガでメンバーから外れていました。
その後も所属団体のスキー部が廃部になったりと多くの挫折や逆境に遭遇しました。
しかし、それをエネルギーに変え、悔しさや厳しさやありがたみといった経験を積み重ねることで、自分に余裕を持ち、自然に笑顔もでるようになりました。
2030年の冬季五輪誘致を目指している札幌。その時には葛西選手は57歳ですが、若い者には負ける気はありませんと述べています。
日本ラグビーフットボール協会理事 中竹竜二氏の言葉
続いて、日本ラグビーフットボール協会理事の中竹さん(46歳)の言葉です。
日本企業は今まで分業制を敷き、効率を重視してきました。
しかし変化の速い現代では1つのことを知っているだけでは価値を作れません。つまり、いままで目の前のことだけ集中すればよかったのに、自分のフィールドを超えて技能を発揮しなくてはならなくなりました。
人というのは氷のようなもので、人材も一度溶かさないと別の枠には入りません。ただし、シニア層はその氷を解かす作業に時間がかかります。
自分は本当は何がしたいのか?どんなことでワクワクするのか?この意思の棚卸が難しいのです。そこで「にわかファン」の精神が求められます。「わからないことも多いけど、なんだか楽しそうだから覗いてみよう。」そのぐらいの気持ちで、シニア層はプライドの制限を外して取り組んでみることが大事です。
逆に年上の部下を持ったリーダーは、年上のシニアへのリスペクトを忘れてはいけません。愛でも情でも評価でもいいので、気持ちを態度で示すことが重要です。人は信頼していない人のもとではモチベーションが上がりません。リーダーはチームのパフォーマンスに責任を負っている、そのことを忘れてはいけない。
ラグビー日本代表が「ワンチーム」になれたのは、リーダーがたくさんいたから。そしてメンバー全員が肩書に関係なく責任感を持ち、それを態度として示していました。
Part4:会社を”使う”ニューミドル
会社を利用しながら、自分の活躍の場を広げていく「ニューミドル」。その選択肢は独立、副業、転職、社内異動などが挙げられます。そんな中で活躍している人に共通している点は学ぶ姿勢と謙虚さでした。
人材企業で10年ほど大企業向けの研修を担当していた木下紫乃さん。45歳で慶応義塾大学大学院に入ると、ミドル世代への支援が必要であるとひらめきました。そしてヒキダシという会社を立ち上げ、毎週木曜のお昼に「昼スナック ひきだし」を始めました。そこでミドル世代の悩みを静かに聞き、向かいたいと考えている方向にそっと背中を押すことで、支援を行っています。
また本当にしたいことを考え、スタートアップに転職した方もいます。NECで順調に出世していた門川さん。しかし39歳でスタートアップへの転職を行いました。年収減を承知でスタートアップに行ったのは、本当にしたいことはなんなのかを考えたからです。
自分の特性や棚卸を行った結果、転職をしない人もいます。リクルートキャリアでエグゼクティブプロデューサーを務める深澤さんです。30代くらいで「卒業」することが多いリクルートですが、深澤さんは「会社に残っていたほうがデカいことができる」と考え残る選択をしました。
自分の意志で積極的に挑戦していくミドル層は人材として貴重な存在です。
ミドル層にはバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災といった激動を乗り越え、社会人として生き残った経験値があります。その経験から出てくる人間力と、常に学び続ける姿勢を身に着けたミドル層は日本再興の切り札となるでしょう。
編集者インタビュー:経団連会長 中西宏明氏
元日立製作所の会長で18年から経団連会長を務める中西氏。19年4月には体調を崩し、辞任を申し出ましたが、指名委員会が辞任を認めませんでした。
その中西さんが課題に挙げているテーマの1つに「終身雇用」の見直しがあります。
ジョブ型への人事制度の変革が起きることによって、60歳でもそのジョブを満たすことができれば定年制度がなくなっていくでしょう。また、グロ-バル社会で競争力のある人材を確保するためには、優秀な人材には十分な報酬を用意しなければなりません。
雇用の流動性を高めるため、解雇規制を緩めるべきだという声に対しては、否定的です。日本の企業文化をドラスティックに変えることは難しく、日立製作所の社長時代に解雇する場合でも社内の別部署やほかの会社の働き口を探すなどの支援を行ってきました。
私の感想
日本の終身雇用モデルにおける賃金設定の説明について、腑に落ちました。
年次の若いときは「パフォーマンス>報酬」、それが徐々に「パフォーマンス≦報酬」に向かっていき、トータルで人材への投資コストを会社がペイできる仕組みにしていることがわかりました。
しかし私のような不真面目な人間からすると、この制度は頑張る気を削いでしまう欠陥のある制度に感じます。安定感というメリットはあれど、頑張っても頑張らなくても差がつかない仕組みは悪だと思いました。
また、仕事においても自分の「好き・嫌い」「得意・不得意」で分けてみる。この考えにハッとしました。
「仕事というものは『嫌なこと』をやることである」という意識がどこかにありました。そのため苦手で効率が悪い業務についても、自分の感情を押し殺して行ってきました。もちろんある程度は「嫌いなこと」をすることも必要だと思います。しかし、思考停止せずに、いかに自分の好きかつ得意なことの仕事を増やすか、嫌いで不得意な仕事をなくすかを考えて取り組むべきであると目が覚めました。
先日テレワークを行いましたが、テレワークこそがぶら下がり社員をなくすきっかけになるのではないかと感じました。テレワークでは業務時間中の態度がわかりません。そのため、日報や成果物だけで判断せざるを得なくなります。管理者は成果物が正しいかどうか判断するため、目標管理や週報などの形骸化した仕組みを整えなくてはなりません。そうすることで会社として正しい組織が生まれると思いました。またむだな会議が極限までなくなるため、自分が仕事をした証明=自分が与えた会社への利益・価値はなんなのかを徹底的に考える時間になりました。
100年時代の歩み方として、昔のやり方・制度に固執せず、何事も「自分はどうしたいか」を大切に進んでいこうと思いました。
最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介
日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。
気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!
皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えて下さい。
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