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今回は2020年1月20日発行分の日経ビジネス『アマゾン撃退法ーウォルマートのDX最前線ー』の感想をまとめます。
当記事を読むことで下記3点が分かります。
- アマゾンエフェクトに対処したウォルマートの打ち手
- ウォルマートが対処できた4つの背景
- 今後の日本企業の方向性
小売業世界一の売上を誇るウォルマートと、時価総額世界3位のアマゾン。その戦いの内容やいかに?
ぜひご覧ください!
目次
Part1:店舗×デジタルで攻勢
アマゾンなどのECの浸透で「時代遅れの企業」として見られていた小売店大手のウォルマート。しかし近年では店舗の強みとITを掛け合わせることによって企業価値を高めています。その具体的なサービス内容を見てみましょう。
パーソナルショッパーの活躍
お客様がまばらな店内にて、かごを乗せたカートを押す従業員の姿が。これはウォルマートが提供しているサービス「オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)」の光景です。OGPはお客様があらかじめネットで注文した食料品などを店舗で受け取る、取り置きサービスとなっています。そしてそのサービスを支える従業員こそパーソナルショッパーと呼ばれています。
OGPはアメリカで非常に人気のあるサービスです。専用アプリから注文し、指定した時間に店舗に行って、指定の駐車場に停めておけばトランクに荷物をいれてくれます。車から降りたり、財布をだしたりするわずらわしさから解放してくれるサービスとして市民権を得ました。
冷蔵庫の中まで配達される商品
もうひとつ手ごたえを感じているサービスが「インホーム・デリバリー」。顧客宅に上がり、冷蔵庫に食品を置いていく先進的なサービスです。デリバリーする配達員はその姿をカメラで撮影しており、それによって安全性を担保しています。
ウォルマートの豊富な店舗は買い物場所としてだけでなく、配送センターとしての機能も持っています。負債になりかねない店舗を有効活用した例といえるでしょう。
デリバリー・アンリミテッド
ウォルマートは温度管理が重要な生鮮品の管理や品ぞろえにおいて、アマゾンよりも強みがあると考えています。そこで年間98ドルの定額で食料品配達を無制限に利用できる「デリバリー・アンリミテッド」を開始しました。それに対しAmazonもプライム会員に対し「アマゾン・フレッシュ」の配達料を約20都市で無料にすることを決めています。
上記で見た通り、ウォルマートは最新のITを利用しながらお客様の困りごとを解決するために手を打っていきました。次章でウォルマートはなぜITとのかけ合わせがうまくいったのかについて探ってみましょう。
DATA:データで見るウォルマート
ウォルマートの変革の背景をみる前に、もう少し詳しくウォルマートのことを消化します。
創業者サム・ウォルトン氏が米国南部アーカンソー州ロジャースに最初のウォルマートを開いて58年になります。「エブリディロープライス」を掲げ、自社物流を整えたり、メーカーとの親密な関係を築きながら発展していきました。
現在の売上高は5144億ドル(56兆5840億円)です。20年度の日本の税収予算が63.51兆円のため、それに近い数値となっており、世界最大の小売り企業になっています。
また売上高は断トツですが、時価総額においてはアマゾンのほうが三倍ほど上となっており、まだまだ追いついたとは言えない状況です。
また近年ウォルマート内の投資の比重が変わりました。従来は新規開発に薬半分ほどの投資額を割いてきましたが、どんどんとIT、ECなどのデジタル分野への投資比率が上がってきています。
Part2:ウォルマート変革の背景
ウォルマートはなぜITをうまく活用し、あたらな価値創造ができたのでしょうか。2014年に47歳という若さでトップとなったマクミロンCEOの改革とそのポイントを4つ紹介させていただきます。
①人材獲得
マクミロンCEOが行ったことの1つ目は人材獲得です。ITやEC向けのサービスを行っている企業を買収しました。企業買収することでその中の技術などをゲットすることは可能です。しかし技術よりも買収先の優秀な人材が手に入ることが大きな要因でした。
②働き方の変革
業務内容が変わることによって、『パーソナルショッパー』のようなライン工の人の負担が増えることになります。そのため棚の減少を確認する業務や保管場所の仕分け作業などを自動でできるようロボットを投入しました。それにより従業員がもっと顧客との対話などに時間を使えるようにすることをウォルマートは狙っています。
③アジャイル思考
アジャイル思考とは、とにかくプロトタイプ版でも世の中に出し、修正を行いながら完成度を高め、ビジネスを行うことです。その成功事例としてウォルマートで取り上げられているのは、会員制スーパーのサムズ・クラブで利用している「アスク・サム」というアプリです。そのアプリに音声で質問をするとサムズ・クラブの事柄、例えばチーズの場所や従業員のカレンダーなどを教えてくれます。アプリは立ち上げ当初は値段くらいしか言えませんでしたが、従業員がそのアプリに質問をし、その答えを埋めていく中で情報量が蓄積されていき、9か月後にはかなりのことがわかるようになりました。
④トライ&エラー
ウォルマートは様々な面でトライ&エラーを繰り返しており、それを推奨する仕組みが組織内に構築されています。例えば新たなサービスを導入する場合、まずは5店舗、そして50店舗、500店舗と規模を段階的に広げていきます。そうすることで修正の手間やサービス自体をブラシアップしていきながらよりよいサービスを全世界に展開することができます。
また大々的にアナウンスしたサービスであってもやめることは厭わない姿勢もあります。例えばアメリカの宅配食品サービスの「ラストワンマイル問題」においてもトライ&エラーを繰り返しています。16年にウーバーと協業、17年に最寄りのスーパーでのお客様でのピックアップなどを試しましたがいずれも合わないと判断し、中止しています。お客様の要望を叶えるサービスを作ることにフォーカスした、真に柔軟な組織となっています。
Part3:テクノロジー企業への転換
Part2でお伝えした通り、ウォルマートのITへの舵の切り方は大胆です。そして人材を確保していることの証として、AIの有力な学会である「NeurIPS」にウォルマートのエンジニアが提出した論文が掲載されました。グーグルやマイクロソフトなどIT企業が多くの論文を提出している中で、ウォルマートのような小売業でデータ学習を効率化する手法の論文を通したのは前例のないことでした。
また論文を通すだけではなく、店舗でのトライ&エラーもすでに始まっています。アメリカのレビットタウン店に行くと、天井には無数の吊り下げられたカメラが。そのカメラを使って商品の棚の状況やバナナや精肉のチェックなどを行っています。そのようなビックデータを分析することで人の工数を大幅に減らすことができます。分析の結果、商品の23%を削減してもお客様が選択の上で困ることはないことも判明し、お客様に選択しやすい環境に作り替えたりしました。結果としてレビットタウン店は以前よりも来店数が11%、売上が20%ほど増加しました。
日本企業の場合はどうでしょうか。セブンイレブンの7payでは不正アクセスが発生しました。経営陣のITへの知識不足やITにおける外注業者依存の構造が露見されました。外部にITサービスを委託すると、アマゾンのようなアジャイル型での開発は困難となります。トライ&エラーを始めるのに意志決定で1年はかかることもざらにあります。
アメリカ企業だから関係ないと高を括るのではなく、日本においても適切なデジタル化を導入し、環境変化に適用する必要があります。AIやビックデータの活用が必須となるといわれて久しい世の中。デジタルシフトに自ら取り組む姿勢とマインドに展開できなければ、ウォルマートやアマゾンに席巻されてしまうでしょう。
私の感想
アメリカ企業のフットワークの軽さと目的に基づく合理性が読んでいて気持ちのよい記事でした。
特に心に残った点はPart2のロボットやAIの活用による従業員の工数カットの内容です。日本では働き方改革の名のもとに従業員のこと、ひいては人手不足解消などの目的としてロボット導入などが検討されます。しかしウォルマートにおいては、目的がしっかりとお客様へ高い価値を提供することとなっており、その手段がロボットの導入による従業員の工数カットにつながっていました。そしてそれもお客様に価値を与える新たなサービスを行うため、従業員の工数を減らす必要があることからスタートしています。稼ぐことも重要ですが、あくまでも提供価値の対価として利益をもらう合理性が、ウォルマートの姿勢に感じることができました。
また家への宅配サービスについては、家の冷蔵庫まで届ける発想は文化の違いを感じました。私もやはり知らない人が家に入ることに抵抗感がありますし、冷蔵庫の中を見られるのもなんとなく恥ずかしい気がします。また安全面はどうするかなど議論がでることで、日本での導入は難しいのではないかと個人的には思いました。
しかしながらそのような心理的制約を外して、真に便利なことを探し、それを実現する方法を論理だてて積み上げ、実行することが重要であることを再確認できました。日本企業のことだけでなく、外国企業の取り組みを知ることで知見が広がる好例だと思いました。
最後に今週の本紹介
日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。
気になる本があれば、感想をブログにアップする予定です!
皆さんも気になる本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。