27歳からのどっこいしょブログ

会社員。ブログ歴3年目。現在30歳。国際結婚。長野県。読書感想や思ったことを記録していきます。

【読書感想】日経ビジネス『DXって何?』を読んで

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2020/3/30発行分 日経ビジネス表紙

 今回は2020年3月30日発行分の日経ビジネス『DXって何?』を読んだ感想をまとめます。

私の会社でも「DX」が声高に喧伝されていますが、皆さんはDXの定義を説明できますでしょうか?

かくいう私もこの記事を読んで、思考が整理されましたので、ぜひご覧ください!

 

 

Part1:間違いだらけのDX 提唱者が語る原点

提唱者:エリック・ストルターマン氏の話

『Degital Transformation』

「別の状態へ」を意味するTransをXと略すことからDXという言葉が生まれました。

 

では、DXという言葉は誰が使い始めたのでしょうか。

最初に使用したのはインディアナ大学教授のエリック・ストルターマン氏で、2004年に発表した論文で初めて定義されました。

彼は論文の中でDXを以下のように定義しています。

 

「すべての人々の暮らしをデジタル技術で変革していくこと」

 

例えば音楽業界でDXが起こった例として、メディアがレコードやCDからストリーミングで聞くようになったこと。そしてメディアが変化したことにより、聴き方はいつでもどこでも聴けるように、売り方はレコード会社主導からSNSを通じたアーティスト経由の販売に、稼ぎ方はアルバムやCDなどのハードからライブやそのグッズなどのコト(体験)での稼ぎに変わりました。

つまりDXの本質とは、単なる業務効率化ではなく、デジタル技術を駆使して社会に劇的な変化を起こすことになります。

 

DXがうまくいかない理由

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DXアンケート結果 日経ビジネスP30より参照

しかしながら現実の企業の多くでは、デジタル化の脅威は認識していても、十分な成果をあげられていません。上記図の通り、多くの企業は業務効率化のためのDX活用がほとんどで、サービスの創出やビジネスモデルの変革といった項目は取り組めていないのが実情のようです。

この業務効率化にフォーカスが当たっている一因として、2018年9月に経済産業省が公表した「DXレポート」があります。

https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-3.pdf

 

ここでは「2025年の壁」という問題が特に強調されています。

「2025年の壁」とは、現在日本の企業が使用しているシステムのサポート終了やITの人手不足などの問題が一気に顕在化する年が2025年にくるという問題です。その対策として、現在のレガシータイプのシステムから新しいITサービスを活用することが標榜されています。

しかし先ほど述べた通り、DXで成果が出ている企業は多くはありません。

DXは進まない理由として下記のようなことが実際のヒアリングからうかがえました。

「会社の中での存在感が薄く、影響力がない」

「現場が変革を求めていないような、経営層と現場との温度差がある」

「推進するにしても上司が理解に乏しかったり、承認プロセスが複数の役員までと長かったり、スピード感がない」

 

つまり『DX』という広義の言葉を旗印にすることによって、結果的に何も進まないという状況に陥ってしまっているのです。

Part2:本気企業に学ぶ 失敗しないDX(安川電機、ミスミ、三菱ケミカル、USMH)

そこでうまくいっている企業の実践例から学びましょう!

安川電機の場合

安川電機で取り組んでいるのは、データの一元化です。今までは人事部や経理部、営業部などの部門ごとにシステムが存在し、そのデータのつながりがありませんでした。それをコードを統一化し、一元管理することで適切な経営判断をスムーズに行うことができることを目指しています。

具体的な工夫点として2点ありました。

1点目がコードの統一化の利便性がわかるように組織を再編成したことです。営業部において、ロボットやモーターなどの事業別に営業がいた組織から、エリア別に組織を再編しました。そうするとロボットやモーターといった別事業のものをすべて売り上げる必要があり、その際に取引先や勘定科目が同じ場合に同一のコードで処理できる利便性(あるいはばらばらのコードで処理した場合の不便性)を感じることができるように強制しました。

2点目がDXを進めることの利点を対話会などで発信し続けたことです。

その際に具体例をだしわかりやすい説明を心掛けたとのことで、「A製品の工場原価は7万円、営業がそれを10万円で仕入れ、9万で販売した。一方B製品の工場原価は7万5000円、営業がそれを8万で仕入れ、8万5000円で販売した。その場合営業からみた利益はB製品のほうが高いが、製造原価ベースでみればA製品のほうが高い。これが本当の利益である」と説明し、納得感を得ていったようです。

ミスミの場合

ミスミのDXを使った活動内容はカスタム部品のリードタイム短縮です。

ミスミには2940万点の部材が載ったカタログがあります。そのなかから短納期で提供できるものは半分くらいとのことです。(それでも十分すごいことだと思いますが、、)

残りの半分は特注品で依頼があってから図面を作成し、加工業者に見積、発注、そして納品という作業に合計3週間かかっていました。

それを短縮するサービスとして3DのCADをアップロードするとAIによる自動見積もりが行われ、加工プログラムが自動生成されるというシステムを導入しました。

その際のポイントとして社外の要素技術を活用した点です。加工プログラムの自動生成は自社工場23拠点のデータから自前で生成できましたが、AIによる自動見積もりの要素技術がありませんでした。そこで社内で作るには時間がかかると判断し、インドやアメリカ、ヨーロッパなどを回り、効率的に自動見積もりの仕組みを構築することができました。

その柔軟な姿勢と、やるときは大胆に進める姿勢、この2つがミスミの新しいサービス創出の原動力になりました。

三菱ケミカルの場合

三菱ケミカルの場合は、上記の2社のように急速かつトップダウンで変革したDXとは逆の進め方をしました。

まずは徹底的に現場の御用聞きを行い、化学業界は安全性が第一であるため、トップダウンではなく、現場の理解を得られるように進めました。現場にヒアリングをしながら統計学的なシステムの導入でき、かつ安全性を担保できるぎりぎりのラインをさぐっていきました。

また現場の人のDXへの理解と導入を助けるため、2つの冊子を準備しました。

1つは「テクノロジーアウトルック」といい、中長期的な化学会社のDXの展望(AIや量子コンピュータの影響など)をまとめました。それにより、どんな変革にも心構えを前もってできるように仕向けています。

もう1つは「デジタルプレイブック」といい、職場でのDXの活動の具体的な取り入れられる活動内容をまとめたものです。ページ数にして約170ページあり、現場が活動するときの一歩目のハードル「何をしたらいいのかわからない」点を取り除きました。

ユナイテッドスーパーマーケット(USMH)の場合

USMHでは、決済で並んだり、在庫が分からないなどの不便をDXで解消を図っています。

内容は、あらかじめクレジットカードを登録した専用アプリを使用し、バーコードをスマホで読み取ると決済が完了するというものです。しかし便利になる一方スマホの使用方法を教える人が必要だったり、棚の陳列などの人の仕事がスーパーには残るとされています。

USMHは大型店舗を店舗の役目と倉庫の役目を担わせる構想を持っています。しかし、スーパーでうまくDXを推進するにはアナログ的な発想にも気を配れる人だろうと考えています。

Part3:変化を恐れていては始まらない

DXが浸透した場合、個人情報が不正利用されるリスクは上がります。

例えば空港の顔認証は便利な反面、他人に自分の情報を取られるリスクもあると感じる人もいるかもしれません。

しかし、リスクを過剰に恐れていては社会の大きな変化に対応できません。

今回の新型コロナウイルスの対応でも、マスクの在庫状況を把握するシステムを迅速に作った台湾と、転売ヤーが横行する日本では対応に差がありました。

日本でもAIやロボットでは世界的な技術があるため、それがもたらす変化への順応性を高めていく必要があります。

編集長インタビュー:味の素社長 西井孝明さん

現在構造改革を進めている味の素の社長 西井孝明さんのインタビューで最後締めくくられていました。

現在味の素でも50歳以上の管理職1割(約100人)を対象に早期退職の募集をするなど変革を進めています。西井社長はアメリカやシンガポールなどの変化の速さを感じ、日本のゆでガエルになる未来を案じていました。

現在味の素においても業務効率化のDXプロジェクトを進めているそうです。

今までの延長での成長では一兆円企業は守れない、その危機感が伝わってきました。

私の率直な感想

自分も本書を読むまでは、DX=IoTを利用した業務効率化推進だと勘違いしている一人でした。

しかし、大きな社会変革をデジタル技術を利用して課題を解決することがDXの本来の定義だとわかり、すっきりしました。私の会社では新しい価値創造までは深堀できておらず、どちらかというと「働き方改革」の一助としてのシステム化というポジションになっています。

味の素の社長西井さんの危機感に似た危機感は私の会社の社長も持っているように感じていました。しかし安川電機のようにわかりやすく具体的な内容まではかみ砕いて説明までは困難だったのかなと感じます。

DXについてのアプローチは、①デジタル技術でできることを列挙して考える方法と②社会課題(問題)から考える方法の2パターンあると感じました。

そして難易度は高いですが、②の課題から考え、浮かんだアイディアこそがDXの本当の内容であり、今後存続する企業になれる一因だと感じました。

私も日々の業務において、課題はなにかをリストアップする癖づけをしようと学びがあったので、本特集を読んでよかったなと感じます。

 

また人間の悩みは「仕事、健康、恋愛、お金」この4つがほとんどだと聞いたことがあります。この悩みに対し、私の所属する会社の技術と、デジタル技術で新しい価値を与えることができたらいいなと思いました。とくに現在仕事と健康での課題は解決しようとしているので、恋愛の悩みを解決できれば面白いかも、、、なんて考えました。笑

最後に:日経ビジネス掲載 今週の本紹介

日経ビジネスで紹介されている話題の本を私の備忘録として載せます。

気になる本があれば、感想をまたブログに載せますので、ぜひ皆さんコメントで気になる本を教えてください!